1998年度における研究・作業グループの活動報告





 前年度より継続して活動中の研究・作業グループと,地理学評論第71巻(Ser.A)

第1号掲載の公募に応募し,2月14日(土)の常任委員会で承認された1998年度研

究・作業グループは,下記の通りです.



作業グループ



1.リゾート開発と地域整備作業グループ(継続)

 代表者 石原照敏

2.政治地理学作業グループ(継続)

 代表者 斎藤 毅

3.空間と社会作業グループ(移行)

 代表者 水内 俊雄





研究グループ



1.地理情報システム研究グループ(継続)

 代表者 高阪宏行

2.地籍図類による景観復原研究グループ(継続)

 代表者 滝沢由美子

3.土地利用・環境研究グループ(継続)

 代表者 土居晴洋

4.都市災害研究グループ(継続)

 代表者 松田磐余

5.地理思想の伝統と革新研究グループ(継続)

 代表者 栗原尚子

6.海岸・沿岸域の環境動態研究グループ(継続)

 代表者 海津正倫

7.地生態学研究グループ(継続)

 代表者 横山秀司

8.応用都市地理学研究グループ(新設)

 代表者 谷内 達

9.農村地理研究グループ(新設)

 代表者 田林 明

10.山岳永久凍土研究グループ(新設)

 代表者 松岡憲知

1998年度研究・作業グループ報告







作業グループ



リゾート開発と地域整備作業グループ

              代表者 石原照敏

 〔研究例会〕3月29日,13時〜15時,於 国士舘大学,出席者12名.

 石原照敏(阪南大):「グリーン・ツーリズムの比較研究」

 〔大会一般発表〕1999年3月27日,於 専修大学.

石原照敏(阪南大):「社会的観光と地域社会−−フランス・アルプスの一事例

」,池永正人(九州女子学園高):「オーストリア・フィス村の山岳観光と山地農民

の対応」,笠木秀樹(岡山県立津山東高):「グリーン・ツーリズムの展開と農山

村の活性化−−バイエルン州における事例」,中山昭則(千葉大・院):「自然休

養村事業の展開と農村地域整備−−千葉県佐倉市飯野台自然休養村を事例として」

,山村順次(千葉大)・権 純(草堂大):「韓国済州島中文観光団地の開発と地

域住民意識」

 なお,本作業グループは1999年度春季学術大会でのグループ発表をもって,解散

する.





政治地理学作業グループ

              代表者 斎藤 毅

 〔第3回研究集会〕9月27日,於 北海道大学,出席者14名.

高木彰彦(茨城大):「IGU世界政治地図委員会の研究集会出席雑感」

1998年8月17日〜23日に,アイルランドの Maynooth (The National University of

Ireland, Maynooth)および北アイルランドのBelfast(Queen's University,

Belfast)で,「グローバル化する世界におけるナショナリズムとアイデンティティ

」をテーマに開催された,IGUのコミッション,World Political Mapの研究集会

の概要と出席して得た印象についての報告がなされ,質疑応答があった.また,ビ

ジネスミーティングでは,シンポジウム開催をめぐって意見交換がなされた.

〔第4回研究集会〕11月13日〜14日,於 京都府立ゼミナールハウス,「空間と社

会」作業グループとの合同で開催.出席者21名.

 「政治地理学」作業グループから,次の2報告がなされた.

 新井祥穂(東京大・院):「離島における小規模独立町村の存在−−福岡県宗像

郡大島村を例に」,杉浦真一郎(広島大・院):「諸規模自治体における高齢者福

祉施設の未整備に関する問題と都道府県老人保健福祉計画の役割」

 「空間と社会」作業グループから2報告があった(「空間と社会」作業グループ

の報告参照).

  若手研究者の参加が多く,いずれの報告も活発な意見交換がなされ盛況であった

.ビジネスミーティングでは,1999年1月に韓国慶州で開催予定の国際会議(EARCAG,

East Asian Regional Conference for Alternative Geography),アジア太平洋地

域を対象とする,Alternative Geography の理論・コンセプトを踏まえたインター

ネットベースの教育プログラム開発プロジェクト,などについて説明および意見交

換がなされた.





空間と社会作業グループ

              代表者 水内俊雄

  本年度は以下のような活動を行った.

1.研究集会を2回,研究合宿を1回開催した.

 〔第7回研究集会〕3月29日,於 国士舘大学,出席者81名.

 アラン・J・スコット(カリフォルニア大・ロサンゼルス校):「産業・経済地

理学のグローバルな新潮流」,竹内淳彦(日本工業大):「東京における工業地域

の変動」,斎藤日出治(大阪産業大):「レギュラシオン理論における経済地理学

の意義について−−レギュラシオン概念による空間編成」

〔第8回研究集会(東京・大阪)〕

東京 1月28日,於 一橋大学佐野書院,出席者19名.

大阪 1月29日,於 大阪市立大学文化交流センター,人文地理学会地理思想研究

部会と共催,出席者45名.

ネイール・スミス(ラトガース大):「空間スケールの構造転換とグローバルな

不均等発展」

〔研究合宿〕11月13日〜14日,於 京都府立ゼミナールハウス,「政治地理学」作

業グループとの合同で開催,参加者20名.

「空間と社会」作業グループからは,次の2報告がなされた. 

 北島誓子(弘前大):「企業主義的介入と空間の再編」,加藤政洋(大阪市立大

・院):「1980年代後半の人文地理学における都市思想−−ハーヴェイの『都市的経

験』を起点として」

「政治地理学」作業グループから2報告があった(「政治地理学」作業グループ

の報告参照).

 2.ホームページ上で,活動状況を紹介した(WWWURL:http://econgeog.misc.hit-u.ac

ジ上で,活動状況を紹介した(WWWURL:http://econgeog.misc.hit-u.ac.jp/s_and_s/).

を紹介した(WWWURL:http://econgeog.misc.hit-u.ac.jp/s_and_s/).

3.メイリングリストを開設した(space-l@econgeog.misc.hit-u.ac.jp).







研究グループ



地理情報システム研究グループ

              代表者 高阪宏行

本研究グループは,2年ごとにシンポジウムを企画してきた.1996年度,1998年

度の春季学術大会にシンポジウムを行ってきたので,現在2000年度に向けてどのよ

うなシンポジウムを行うかを検討している.また,地理情報システム学会など関連

学会との協賛事業にも積極的に取り組むことを計画している.





土地利用・環境研究グループ

             代表者 土居晴洋

 本年度は,春秋の学術大会時に例会を2回開催した.

 〔第1回例会〕3月29日,於 国士舘大学.

 南埜 猛(兵庫教育大):「インドにおける土地台帳と地籍図」

 その後,最近のLUCC研究に関する情報提供と意見交換が行われた.

〔第2回例会〕9月27日,於 北海道大学.

 氷見山幸夫(北海道教育大)より,IGU土地利用被覆・変化研究グループを中

心とする,国内外のLUCC研究の最新の進展状況が報告された. 

また,1997年10月に開催したシンポジウム「中国の土地利用変化と食糧問題」の

発表内容を論文としてまとめ,地理学評論に特集号として投稿した.原稿は,現在

編集委員会で審査中である.





都市災害研究グループ

             代表者 松田磐余

 本年度は以下の集会を行った.

3月29日,於 国士舘大学,参加者7名.

 検討事項「今後の研究グループ活動について」,今後の活動を通じての研究のま

とめ方について議論した.

 藤岡達也(大阪府立大・院):「都市化地域における治水と河川環境の連続性」

1998年度春季学術大会の際に行った研究グループの集会で,研究成果をどのよう

にまとめていくかが議論された.しかし,都市災害研究は地域安全学会をはじめと

して,他の学会では非常に活発に行われている一方で,地理学会の中では関心が薄

く,研究会への参加者も少ない.また,国際会議の開催や参加実績は,圧倒的に他

の学会の方が進んでいる.地理学会会員でも他の学会やIGC以外の国際会議で発

表する機会が多い.地理学からの独自のアプローチ法を,今後の課題としたい.





地理思想の伝統と革新研究グループ

             代表者 栗原尚子

 本年度は以下の集会を行った.

 〔第10回研究集会〕7月18日,於 お茶の水女子大学,出席者15名.

 共通テーマ「地理思想史」

 杉浦芳夫(東京都立大):「Edward Ullman によるアメリカ地理学の変革−−空

間の科学の探求」  





海岸・沿岸域の環境動態研究グループ

  代表者 海津正倫

 本年度は以下の研究集会を開催した.

 3月29日,於 国士舘大学.

 宮城豊彦(東北学院大):「マングローブ研究と地球環境変動」

 上記の研究報告および「海岸・沿岸域の環境動態」研究グループの今後の活動計

画について検討.

5月9日,於 駒澤大学.

 長谷川 均(国士舘大):「開発行為に伴うサンゴ礁環境の変化−−石垣島アン

パル干潟と白保サンゴ礁を例に」,久保純子(中央学院大):「東京低地の歴史時

代における海岸線の変化」,小池一之(駒澤大):「タイ Phang Na Bay にみられ

る沈水カルスト」

7月11日,於 駒澤大学.

 市川清士(駒澤大・非):「琉球のサンゴ礁形成と海水準変動」,山野博哉(東

京大・院):「海面安定後のサンゴ礁地形の発達と将来の海面上昇に対する応答」

また,11月2日には,名古屋大学年代測定資料研究センターを会場として,海岸

・沿岸域の環境動態研究グループ1998年度第4回研究集会を兼ねた,「地球規模の

環境変動にかかわる海水準変動とマングローブの立地に関する国際シンポジウム」

が開催された.参加者は,オーストラリア,タイ,マレーシアからの外国人参加者

を含む約40名で,オーストラリアの C. Woodroffe

博士の基調講演をはじめとする12の講演があり,活発な質疑が行われた.

 なお,本研究グループは IGBP-LOICZ,IGCP など国際プロジェクトへの対応を考慮

して発足したものであり,これらの国際プロジェクトに関する情報をメンバーに提

供している.また,2000年4月には本研究グループの活動を踏まえたシンポジウム

を開催したいと考えている.





地生態学研究グループ

 代表者 横山秀司

 本年度は以下の活動を行った.

 〔第2回研究集会〕3月31日,於 明治大学,出席者50名.

 以下の講演とコメントがあり,活発な討論が行われた.

 講演 小泉武栄(東京学芸大):「私の地生態学的研究」,コメント1:横山秀司

(九州産業大):「小泉の『山の自然学』とドイツ地生態学」,コメント2:渡辺

悌二(北海道大):「小泉の『山の自然学』とアメリカ地生態学」

〔合同調査〕

以下の3地域で合同調査を実施した.

 大雪山:7月25日〜31日,参加者10名.北アルプス立山:8月21日〜23日,参加

者5名.北アルプス常念岳:8月7日〜10日,参加者10名.8月21日〜25日,参加

者15名.10月13日〜18日,参加者6名.

〔地生態学研究グループ通信〕

vol.3-1・3-2 を発行し,関係会員112名に郵送した.





応用都市地理学研究グループ

   代表者 谷内 達

本年度の活動は,前年度までの大都市圏研究グループの活動を継承して,IGU

の都市発展・都市生活研究委員会の国内対応組織を念頭に置いた情報交換と自由討

議が中心であった.春季学術大会での第1回研究集会では,代表者による当研究グ

ループの趣旨説明および原 真志会員(香川大)による地域政策と地理学との関わ

りに関する話題提供を中心に,現実の都市・地域の社会経済的課題と都市地理学研

究との関わりについて活発な討議が行われた.

 また,秋季学術大会での第2回研究集会では,村山祐司会員(筑波大)によるI

GU都市発展・都市生活研究委員会研究集会(8月にブカレストで開催)の報告を

中心に,最近の国際的な都市地理学研究の動向について討議が行われた.さらにこ

の研究委員会の中心的研究者の1人であるL. S. Bourne教授(トロント大)の来日

(11月6日〜19日)に際して,西原 純,阿部 隆,村山祐司の各会員および代表

者が中心となって当研究グループが積極的に対応し,宮城学院女子大(11月10日)

,筑波大(11月13日),東京大(11月17日)において講演と討議が行われた.





農村地理学研究グループ

   代表者 田林 明

1.研究集会を3回実施した.

〔第1回研究集会〕3月29日,於 国士舘大学,出席者37名.

 菊地俊夫(東京都立大):「シドニー大都市圏における農業的土地利用変化」,

田林 明(筑波大):「今後の活動方針」

 〔第2回研究集会〕6月27日,於 東

京農業大学,出席者15名.

 矢部賢一(東京都立大・院):「大山北麓地域における農村の持続性とその維持

システム−−中山間地域の一事例として」,高柳長直(東京農業大)・助重雄久(

立正大・非):「石垣島における離島農業の振興課題」

 〔第3回研究集会〕9月27日,於 北海道大学,出席者28名.

 荒木一視(山口大):「インド農村・農業とフードシステム」,西野寿章(高崎

経済大):「21世紀における日本の山村をめぐって」,菊地俊夫(東京都立大):

「IGU持続的農村システム研究委員会シンポジウム・リスボン大会に出席して」

 2.ニューズレター1・2号を発行した.

 3.農業・農村地理学関係者の名簿を作成し配布した.

 4.ホームページおよびメーリングリストを開設し,インターネットで随時情報

交換したり,討論するようにした.

 5.国際地理学連合持続的農村システム研究委員会と連携をとりながら活動し,

さらにその情報を日本の関係者に広く伝えた.





山岳永久凍土研究グループ

 代表者 松岡憲知

 本年度は以下の活動を行った.

 〔第1回研究発表・技術講習会〕7月4日,於 国立極地研究所,寒冷地形談話会

と共催,出席者17名.

 午前中は永久凍土探査技術に関する実習と討論,午後は以下の研究発表・報告が

行われた.

 石川 守(北海道大・院):「大雪山における周氷河現象と広域BTS測定結果

について−−山岳永久凍土分布モデルにむけて」,福井幸太郎(東京都立大・院)

:「飛騨山脈立山の永久凍土環境」,青山雅史(東京都立大・院):「化石岩石氷

河の認定についての問題点」,池田 敦(筑波大・院):「岩石氷河の化石化に伴う

形態変化−−スイスアルプスの事例」,渡辺悌二(北海道大):「ヒマラヤの岩石

氷河」,三浦英樹(極地研):「南極の岩石氷河」,松岡憲知(筑波大):「第7

回国際永久凍土学会報告」

 総合討論では,これまでの観測結果と化石岩石氷河の形態を中心に活発な議論が

行われ,今後の研究課題が浮彫りにされた.

 〔巡検・共同調査〕 

南アルプス間ノ岳:8月23日〜25日,参加者11名.北アルプス立山:9月16日

〜18日,参加者4名.大雪山:9月28日〜30日,参加者5名.

 〔国際永久凍土学会への対応〕 

カナダで7月に開催された第7回国際永久凍土学会の山岳永久凍土委員会におい

て,世界の山岳永久凍土分布図・分布モデルの統合が企画された.この計画への対

応として,本研究グループでは,日本を含めたアジア地域の山岳永久凍土調査と分

布図作成を推進することになった.