地理学評論 Vol. 97, No. 5 2024年 9月 - 日本地理学会

●――総 説
地域レジリエンスと経路創造の進化経済地理学──立地調整論の拡張へ向けて── 

 外枦保大介・283-308

 

●――書 評
三上岳彦: 日本の気候──現在と過去(平野淳平)・309‒310

三木理史: 満鉄輸送史の研究(柴田卓巳)・311‒312

丸山浩明: アマゾン五〇〇年──植民と開発をめぐる相剋(松山 洋)・313‒314

 

2024 年日本地理学会秋季学術大会プログラム・315-333

学界消息・334-335

2024 年度公益社団法人日本地理学会定時総会記事・336-339

会  告・表紙2 および340-342

 2025 年日本地理学会春季学術大会のお知らせ(第1 報)・表紙2

 

総説

地域レジリエンスと経路創造の進化経済地理学──立地調整論の拡張へ向けて──

外枦保大介
九州大学

本稿は,地域レジリエンスや経路創造に関する進化経済地理学の動向を検討し,立地調整論の拡張を図るものである.地域レジリエンス論は,一時的なショックと持続的で緩やかに影響するスローバーンとの関係,および適応と適応力との関係を統合的にとらえている.経路創造論は,経路創造を変化エージェンシーと再生産エージェンシーの相互作用とみなし,非連続的な経路変化のモデルを提示している.また,経路創造の正統化を促進させる期待へ着目することで,進化経済地理学の射程は未来にまで拡張しつつある.進化経済地理学を導入した立地調整論は,非線形的な変化を強調するとともに,構造的要因だけではなくエージェンシーにも着目して考察することが特徴である.主に大企業の立地や組織上の位置づけ・規模の連続性をみる従来の立地調整論に,これら地域レジリエンス論や経路創造論を組み合わせることで,立地調整の理解を深めることができる.

キーワード:進化経済地理学, 地域レジリエンス, 経路創造, 立地調整

(地理学評論 97-5 283-308 2024)