●――短 報
秩父市荒川白久地区の天狗祭りの再生における住民の反応 貝沼良風・301-316
●――書 評
漆原和子・藤塚吉弘・松山 洋・大西宏治編: 世界の地域問題100(田林 明)・317‒318
池 俊介編著: 地理教育フィールドワーク実践論(秋本弘章)・319‒320
小田切徳美編: 新しい地域をつくる――持続的農村発展論(梶田 真)・321‒322
山田 誠: 戦時改描図論考――偽装された地形図(松山 洋)・323‒324
2022 年秋季学術大会プログラム・325‒339
学会消息・340‒341
2022 年度公益社団法人日本地理学会定時総会記事・342‒347
会 告・表紙2 および348‒350
2023 年春季学術大会のお知らせ(第1 報)・表紙2
秩父市荒川白久地区の天狗祭りの再生における住民の反応
貝沼良風
新潟大学大学院生
本稿では埼玉県秩父市荒川白久地区の天狗祭りを事例に,今日における祭りの再生の動きと住民の反応を分析した.天狗祭りは同地区の各集落にて山の麓や河原で小・中学生の男子が行う農耕儀礼だったが,1960年代に次々と中断された.その後も一つの集落では続けられたが,その祭りも2011年に中断された.そうした中,2015年に複数の集落の一部の住民により,開催スケールを広域化して祭りが再生された.しかし,主役が高齢者となり,祭事が省略され,住宅地付近で行われた祭りのいくつかの要素に対して,かつての祭りを知る住民から違和感が示された.そして,住民間の分断につながると主催者にとらえられ,再生された祭りは中断された.このことは,祭りの要素のうち許容されないものが変更・省略されたことと,祭りの再生は住民交流の手段であったことが積み重なり,祭りを支える意義を参加者や経験者などの住民が見出せなかったことが要因であったと考えられる.
キーワード:地域文化,祭りの再生,住民交流,天狗祭り,秩父市
(地理学評論 95-5 301-316 2022)