2024年度日本地理学会賞受賞者 - 日本地理学会

2024年度日本地理学会賞受賞者

優秀論文部門

滕 媛媛会員・埴淵知哉会員・中谷友樹会員

「在日外国人の集住は統合を阻害するか─近隣ネットワークの媒介効果に着目した分析─」
地理学評論、第96巻第5号

本研究は,在日外国人のホスト社会への統合に対して,近隣ネットワークがもたらす媒介効果を,統計
的手法から検証したものである.丁寧な既存研究のレビューと優れたデータの取得・分析をもとに,在
日外国人の集住が総合的統合にもたらす効果を解明している点が,学術的に高く評価できる.また,多
文化共生が地域社会の重要な課題となるなかで,本研究は社会的貢献に資するものであると評される.

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若手奨励部門

岩月健吾 会員

「「加治木のくも合戦」参加者が持つ民俗知の体系」地理学評論,第97巻第4号

本研究は,鹿児島県姶良市旧加治木町地域のクモ相撲行事を事例に,参加者の持つ民俗知とクモの持続
的利用の関係を考察している.参加者の民俗知は,コガネグモの生態のみならず,生存を支える他の動
植物に関するものにまで広く及んでいる.また,環境変化に伴う制約の中で,民俗知はクモの利用を継
続するためのものへと変化している.こうしたことを詳らかにした点で,本研究は高く評価できる.さ
らに,写真等を活用して当地の状況を生き生きと描きだしている点も特筆に値する.

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論文発信部門

久保田尚之 会員・平野淳平 会員・松本 淳 会員・財城真寿美 会員・三上岳彦 会員

「外国船の航海日誌に記録された気象測器データによる江戸時代末期に日本に接近した台風の解析」
GEO 第18巻第2号

近代的な気象観測方法を持たない江戸以前における気象記録を,外国船気象データの掘り起こしと丹念
な解析から明らかにしようとするユニークな研究である.本研究は,地理学研究の独創性の高さ,地理
学における学術研究の面白さを端的に示している.特に,ペリー艦隊の事例は,黒船来航として知られ
る航海でもあることから,分野外の多くの人に興味関心を抱かせる研究事例であり,地理学の学術的価
値を広くアピールするものとして高く評価できる.

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優秀著作部門

北川眞也 会員

『アンチ・ジオポリティクス―資本と国家に抗う移動の地理学―』(青土社,2024年)

本書は,さまざまな移動の軌跡を捉え,地理と政治が交差するプロセスに目を向けて,既存の支配と権
力の地政学とは別種の反地政学的な視座を探究したものである.こうした観点はイタリアと日本におけ
る具体的な事例から説得的に提示されており,地理学ばかりでなく関連領域に対しても重要な知見をも
たらすものになっている.上記の事由から,本書は,優秀著作部門の書籍として高く評価でき,本学会
賞にふさわしいと考えられる.

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著作発信部門

福井一喜 会員

『「無理しない」観光―価値と多様性の再発見―』(ミネルヴァ書房,2022年)

コロナ禍以後に特に注目を集めるようになったオーバーツーリズム問題に,地理学からいち早く切り込
んだ先見性はもちろん,それを地域問題に収束させようとする論点は地理学者ならではのものであり,
他分野にも影響を与え得る好著といえる.こうした観点から著作発信部門の書籍として高く評価でき,
本学会賞にふさわしいと考えられる.

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地理教育部門

該当なし

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学術貢献部門

林  上 会員

数多くの著作発信による地理学の学術的な地位向上および多くの自治体における社会貢献

林氏はこれまで180を越える学術論文を公表するとともに,1986年刊行の『中心地理論研究』を皮切り
に,多くの学術図書(単著24冊)を世に出してきた.この大著は世界的にみても独創的な研究で,理論
地理学の発展に大きな影響を与えた.『都市経済地理学』『現代都市地理学』『現代社会の経済地理
学』などはテキストとして都市・経済地理学を学ぶ学生の支持を得てきた.具体的事例を示しながら,
空間的思考や俯瞰的考察の重要性を強調する論述は,隣接学問分野(社会学や経済学,都市工学,地球
科学など)からも注目を集め,地理学の学術的な地位向上に貢献した.『名古屋圏の都市を読み解く』
『焼き物世界の地理学』『歴史と地理で読み解く日本の都市と川』などは,学術界だけでなく一般読者
や地域社会からも関心を呼び,読者層を拡げた点で高く評価できる.さらに,林氏は学術的活動に留ま
らず,多くの自治体で市史の編集委員会や街づくり審議会の委員などを務め,社会貢献でも大きな役割
を果たした.

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社会貢献部門

地理教材共有化の会

地理教材の共有化 地理総合オンラインセミナー実施等の地理教育に対する多大な貢献

「地理教材共有化の会」は2019年4月ごろから活動を開始した,高校教員有志による団体である.この
会では,当時の地理A,地理Bの教材を単元ごとに自由に利用でき改変も可能な形で作成し,全てサイト
にアップして誰でも無料でダウンロードして使えるように整備した.2022年4月からは高校で地理総合
が必修化されるに伴い,地理総合の教材を作成した.同時に,地理教育フォーラム,日本地理学会,日
本地理教育学会が共同で運営している地理総合オンラインセミナーの高校教員としての講師と教材をこ
の会が全面的に引き受け,2022年度には全10回のセミナーにおいて,毎回3名の教員が講師を担当し,
そのセミナーの動画と教材を全てサイトで公開している.2023年度は年間6回開催し,2024年度も年間
6回の予定でこれまですでに4回を終えている.このような有志の活動を現在も継続して行っており,
実質的な高校地理教育を牽引している存在として大変貴重であり,表彰に値すると考える.

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