会長のあいさつ - 日本地理学会
井田仁康
第40代会長として、2024年6月22日に開催された公益社団法人日本地理学会の総会において就任しました井田仁康です。
日本地理学会は2025年に設立100周年を迎えます。その際に会長として100周年を迎えられることを大変光栄に、そして重責を感じております。100周年を迎えるにあたっては、数年前から当時の会長、理事長をはじめとして準備のための委員会が立ち上がり、着々と記念すべき日の準備が進められています。日本地理学会は、約3000人の会員の皆様に加入していただいており、大学や研究所の研究者、大学院生、小学校から高等学校の教員、自治体や教育関係をはじめとする民間企業の方々など多くの方に支えられ、研究交流を図ってきています。国内の地理学研究の推進力となり地理教育にも貢献してきただけでなく、国際地理学連合(IGU)と密接な関係をもち、国際的にも地理学普及のための一翼を担ってきました。
地理学は純粋な学問としての向上だけでなく、持続可能な地球や人類の平和に大きく貢献できる学問です。さらに、これらの課題を身のまわりの狭い地域の規模から地球的規模まで、様々なスケールで分析・考察し、解決に向けて提言していける学問でもあります。地球温暖化による様々な異常気象、グローバル化とともに文化の継承や融合、各地での戦禍など持続可能な社会を築くために解決すべき課題は山積みですが、地理学の研究成果は、こうした課題の解決に道筋を見出すことができる学問です。
こうした持続可能な社会(地球)のために地理学が必要不可欠であることをアピールしていくことも重要です。地理教育の推進やアウトリーチといった社会活動も日本地理学会の重要な活動となってきました。2022年度の高等学校の入学者から「地理総合」が必履修科目となりました。小学校から高等学校まで、すべての児童・生徒が地理を学ぶことになります。ESDといった未来志向の地理の授業を通して、地理的な観点(地理的な見方・考え方)からpowerful knowledge(応用のきく概念的知識)を習得し、Agency(変革する力)を育成し、人類にとっても個人にとってもWell-being(人間の幸福)を達成できる人間を育成し、自らもそのような人間をめざすことも地理学の大きな役割なのではないでしょうか。
こうした地理学に関心をもつ多くの人々の力なしには地理学は発展しません。多くの方々に当会に関心をもっていただき、是非とも入会して活動に加わっていただければ幸いです。地球、人類のために一緒に研究および活動をしていただける場として、日本地理学会を活用していただけるように尽力させていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
公益社団法人日本地理学会
会長 井田仁康