発表番号,「発表タイトル」,発表者(学校名),発表要旨
(発表者中の下線は筆頭発表者)
01,「札幌都市圏の副都心「新札幌」の現状と課題ー交通機能・再開発から分析するー」
濱野圭吾(札幌光星高等学校)
(発表要旨)新札幌地区は昭和47年(1972年)から「厚別副都心開発基本計画」において札幌市の「副都心」とされている。副都心を「巨大都市で,都心の管理中枢機能の一部を分割する地区。都心と郊外を結ぶ交通上の結節点に立地することが多い」(山川出版社 地理用語集改訂版)と定義し,「都心と郊外を結ぶ交通上の結節点に立地する」点に着目し,①札幌都心②日常生活範囲での隣接市③観光等による札幌都市圏外,と新札幌との交通関係をもとにして,交通機能の現状・課題を研究した。現状についてはJR・地下鉄・バスの本数や利用者数などから,課題については『新さっぽろ駅周辺地区まちづくり計画』(札幌市,2014)から新札幌の発展可能性について,それぞれ分析した。これらの研究から,新札幌は札幌都市圏の「副」の意味は弱いが,札幌都市圏東部の「新」の意味が強いと考えられる。つまり,新札幌は札幌都市圏東部の新しい中核としての地区であるべきと考える。
02,「サスエシチョコのすすめ」
石川 陸・多田 流彩・菅川 実空・惠藤 竜起・木内 美愛・久保 歩未・渡邉 彬人(徳島県立城西高等学校)
(発表要旨)日本の輸入カカオの原産地は偏りが著しく,「カカオ危機」下ではサスティナブルとはいえない。更に少しでも安価にチョコ生産する目的から低コストカカオ栽培を強いられ,原料生産国へのしわ寄せが大きい。先進国の消費者が生産国の実状を知り,購買のシステムを変える必要があり,これを「エシカル消費」行動と定義づけ,「サスエシチョコのすすめ」を作成した。
世界のカカオ生産量第3位に,インドネシアがアジアで唯一入っているものの,生産地スラウェシ島の知名度は低く,国内経済格差は大きい。日本から比較的近い原料産地は輸送コストが低くなり,大量に輸入することで単価を抑えられるはずだ。しかし「カカオの品質」が問題とされ,日本には統計上はほとんど輸入されていないという事実も見つかった。
日本独自のチョコレートの拡大など,サスティナブルでエシカルなチョコレートにはアジアを始めとする非アフリカ系カカオの普及を目指す必要性を感じた。
03,「鹿島半島における堀下田の研究」
石毛修斗・山口昂大(清真学園高等学校)
(発表要旨)茨城県鹿島半島に位置する神栖市には「掘下田」と呼ばれる特殊な水田がある。この地域は砂地で保水力が弱いため,水を得るために掘り下げた水田である。近年,掘下田は減少傾向にある。そこで掘下田はなぜ減少しているのか調査することにした。農家の方に聞き取り調査をし,現地調査を行い,分布を調べた。結果,市内でも柳川地区,須田地区,太田地区,矢田部地区,土合地区に多く分布していた。減少の理由としては,ピーマン,スイカなどの商品作物の栽培の普及,農業用水路の整備が進んだこと,鹿島開発に伴う区画整理などが挙げられる。休耕田となるものや,ビニール水田,畑地に転用される例もある。現在,掘下田は消滅の危機にあり,今後も転用や休耕田が増えることが予想される。独特な農業景観という点では棚田とも共通しているが,美しい景観と言えるわけでもなく保存される可能性は低い。今こそ,全体的な調査を行い記録を残すべきである。
04,「見えない水の輸入と食品廃棄量の関係」
下出彩也菜(國學院大學久我山高等学校)
(発表要旨)近年,地球規模で考えられてい水問題においてバーチャルウォーター(仮想水)が注目を浴びている。本研究ではバーチャルウォーターと食品廃棄量の関係を調べた。バーチャルウォーターとは,食料を輸入している国が自国でその食料を生産すると仮定した際に,どのくらいの量の水が必要となるかを仮想した水のことを示す。食糧自給率が低い我が国は食料を輸入に頼るため,年間仮想水層輸入量は約64兆Lと推測される。しかし,約6割を輸入に頼る一方,食品廃棄量も多い。年間食品廃棄量は約640万tである。そこで,仮想水計算式に基づき,食品別食品廃棄量の仮想水を自分で算出した。結果,食品廃棄量が一番多い野菜類は約3968億L,全体では約2兆6528億L以上もの仮想水が捨てられる計算になった。よって,私たちは他国の貴重な水を大量に捨ててしまっていることが分かった。食品廃棄をなくす取り組みは地球の水を守る上で大切だと考えた。
05,「JR常磐線牛久駅周辺におけるストリートアートの分布とその特徴」
飯島わかな(茗溪学園高等学校)
(発表要旨)本研究はJR常磐線牛久駅の駅前市街地を現地調査により,ストリートアートの分布とその特徴を明らかにしたものである。人通りの多少,建造物の種類,土地利用状況の3つの観点から駅周辺部を5つの地域に区分し,それぞれの地域別のストリートアートの分布図を作成した。また,これらの地域のストリートアート(グラフィティ,ステッカー,落書き等)の分析も行った。
その結果,牛久駅周辺に分布するストリートアートは簡易的に書くことができる種類が多く,駅に近い場所ほどその傾向が強くみられ,駅から遠い場所ほど技巧的なストリートアートが存在するという特徴が明らかになった。また,駅構内や駅前ロータリーといった駅中心部に分布が集中していることも分かった。本研究を通して,周囲に自分を誇示する目的で書かれるという一般的なストリートアートは,牛久駅周辺の地理的環境と関連が深いことが伺えた。
06,「青森県弘前市の小学生におけるラグビーの現状と課題」
小舘太進(茗溪学園高等学校)
(発表要旨)本研究は青森県弘前市において,どのように小学生のラグビーの育成・普及活動が行われているのか,その現状と課題を明らかにする。青森県弘前市では,ラグビーの普及率が低い現状がある。どのようなラグビーの活動が求められ,また活動を行う上でどのような障壁があるのかも明らかにする。本研究にあたり,弘前さくらオーバルズ(ラグビースクール)生徒とその保護者,弘前大学教育学部附属小学校の小2・小5男子児童とその保護者を対象として2つのアンケート調査を実施した。弘前さくらオーバルズに関しては,生徒,保護者ともおおむね活動に満足しているという回答が得られ,活動頻度と送迎方法が改善できる点であった。弘大教育学部附属小学校のアンケート結果から,市全体の普及に関する問題点は,身近さのなさとイメージの悪さであった。これらを解決するためには,継続した育成・普及活動を行い,更なる中学・高校生の競技者増加が必要であろう。
07,「道の駅から見る地域活性~京都府南山城村を例にして~」
小木曽 颯(飛鳥未来高等学校)
(発表要旨)今や単なる「休憩施設」の域を超える道の駅。そんな道の駅を観光商材とし,地域活性を成功させた京都府南山城村の謎をデータから調査した。
京都府観光入込客数や観光消費額を道の駅開駅前後で比較したところ,観光入込客数は前年比+330.9%。隣町である和束町の観光消費額は前年比+514.4%という驚異的な数字が出て,道の駅の開駅が南山城村含め京都府山城地域に大きな影響を及ぼしたことがわかった。
その南山城村の取り組みを元に,今後の「道の駅の可能性」について地域活性の観点から考察した。
08,「岐阜県内の自然災害伝承碑の分布と特徴」
傍島琴美・中村穂栞・野呂七海(岐阜県立加茂高等学校)
(発表要旨)東日本大震災(2011年)や西日本豪雨(2018)などの被災地では,以前に発生した災害を記録する石碑が存在していながら地域から忘れられていた例があった。これを受け,国土地理院では2019年より地形図に「自然災害伝承碑」の記載を始めたが,岐阜県内では現在わずか5ヶ所である。そこで,岐阜県内の自然災害伝承碑の分布を調査し,特徴についてまとめることを目指した。その結果,14の災害で49基の存在を確認した。これをもとに岐阜県が運営するWebページ「県域統合型GISぎふ」を利用し,分布図を作成した。岐阜県の地勢である「飛山濃水」を反映して,主に飛騨地方や美濃地方の山地では土石流,美濃地方の平野部では河川氾濫の災害碑が分布していた。災害は同じ地域で繰り返し発生する危険性があることから自然災害を伝える記念碑を見直し,伝えることが重要である。また,岐阜県には多くの活断層も分布しているため,どこでも地震災害の発生の危険性がある。
09,「岐阜県白川町における2020年7月豪雨災害とハザードマップの検証」
一柳涼太・片岡拓巳・大島壱晴(岐阜県立加茂高等学校)
(発表要旨)2020年7月は梅雨前線に伴う集中豪雨が各地で発生し,被害をもたらした。岐阜県内では飛騨・美濃山間部を中心に被害が発生した。岐阜県白川町では飛騨川と白川の水位が上昇し,床上・床下浸水の被害が発生した。この被害の分布と,ハザードマップの被害予想とを比較し,ハザードマップを検証した。その結果,浸水は飛騨川の水位上昇により,支流の白川の流れがせき止められるバックウォーター現象によるものと推定された。被害予測との比較では,浸水が予測されていない場所で床上浸水が発生している例があった。これは河岸の家屋で,わずかに河川側に傾斜する土地に建てられたものであった。ハザードマップでは標高と水位の上昇量によって被害予測を作成したと考えられるが,地形図に現れない微地形と家屋の床の高さの違いによって,床上浸水と床下浸水の被害の差が生じたと推定された。こうした災害を受け,ハザードマップは常に改訂が必要であると考える。
10,「うぐいす坂における土の乾き方に関する調査」
石川花梨・大泉 結・五十嵐めい(秋田高校)
(発表要旨)秋田高校の校門から校舎まで続く「うぐいす坂」では,特定の場所が常に湿っている。本研究はその原因を探り,防災対策を検討することにある。晴天日が続いてもその場所は湿っており,土の乾き方によるものではないと考えられた。それを検証するため,乾いた場所から採集した土(以下A,B)と,湿った場所から採集した土(以下C,D)を準備し,乾き方に違いがあるか実験①を行った。十分静置した4試料を10.00gずつ取り分け,霧吹きで水分を与え,30分毎の質量の減少量を調べた。結果,4試料の質量変化に大差はなく,土の乾き方に違いはないと考えられた。しかし,霧吹きで与える水の質量は安定しないので,与える水の質量が一定となるよう手順を改善し,再度質量の減少量を調べた(実験②)。Aのみ異なる結果であったが,B~Dの結果に大差はなく,実験①の結果とも合うため,乾き方の違いでないことが示唆される。今後は他の要因を検討していく。
11,「天井川の形成要因と過程の解明~縦断形・横断形・平面形に着目して~」
上笹なつき・近藤優太・竹山悠斗・冨田康晴・長尾陸史・野濵奈佳(兵庫県立加古川東高等学校)
(発表要旨)天井川とは,「上流からの土砂供給量が多い河川に堤防を築いた結果,堤外地に大量の土砂が堆積する。氾濫を防ぐために堤防を高くする。これらを繰り返した結果,河床が地面より高くなった河川」とされている。この形成過程の説明には河川の横断形を用いるのが一般的である。本研究の目的は,地理院地図・既存の地形分類図を用いた地形計測や文献研究によって,天井川が「どのような地形に,どのように形成されたのか」,縦断形や横断形,平面形などを分析することで明らかにすることである。その結果,①天井川では区間によって地形面との比高が異なる,②勾配の急変点(扇状地の扇端付近)は天井川形成に伴い前進する,③扇央では川幅が広く氾濫原では狭くなることが分かった。天井川の形態は,1つの天井川でも扇状地と氾濫原とでは大きく異なっており,地形面の違いが形成に大きく関わっていると判断できる。
12,「秋田県手形地区における土砂災害の危険性の調査」
佐藤 玲・横井真奈美(秋田高校)
(発表要旨)近年,異常気象による記録的短時間大雨が全国各地で多発しており,令和2年7月27日に発生した大雨では,秋田市で27日〜28日の積算降水量が120.0ミリに到達した。秋田市土砂災害ハザードマップによると,我々の通う秋田県立秋田高等学校周辺には土砂災害警戒区域に指定されているエリアがある。このエリアには通学路が含まれるとともに,直下には住宅地があり,今回の大雨による被害はなかったものの生徒や職員,住民の生命や財産を守る上で看過できない問題である。土地の状況を調査し,ハザードマップと比較した。
土砂災害警戒区域の2地点について,傾斜角,山肌の露出度,高さを算出し,優占する植物種を特定し,保水力や地盤について考察した。今回はその調査結果を報告する。
13,「防災意識を向上させる高校生の提案」
齋藤百々奈・岡田涼花・小林琴葉・矢田部名望(茨城県立水海道第一高等学校)
(発表要旨)本校は2015年関東・東北豪雨で水害の被害を受けた常総市に位置し,当時は避難所になった学校である。しかし,高校一年生は2015年関東・東北豪雨は小学5年生,2011年の東日本大震災も幼稚園児であり,水害で直接被害を受けた生徒を除くと,防災意識が低い生徒は少なくない。また,高等学校の通学範囲は広く,学校周辺の地理的な特徴や災害リスクを知らない生徒も多い。
そこで,本校生徒の防災意識を高めることを目的に,本校の防災に関わる情報を取りまとめたポスターを作成した。作成するための情報として,ハザードマップや防災訓練時のワークシート,過去災害時のヒアリング結果等を用いた。学校周辺は住宅の倒壊率が高い古い木造住宅が多い地域であり,事前に想定可能な水害よりも,突発的に発生する地震災害の方が防災訓練における優先度が高いことを明示した。作成したポスターを防災訓練時に掲示して注意を促すことで,本校生徒の防災意識の向上が期待される。
14,「世代別にみる世田谷区民の求める都市公園のあり方」
能願 結(桐蔭学園高等学校)
(発表要旨)東京には都市公園が多くあるが,活用できているのか。私は,人気のある公園とそうでない公園の違いが気になった。そこで,人々の求める理想の公園について,世田谷区内の3つの公園(桜新町にある新町公園,鶴巻三丁目公園,小泉公園)を対象に,2020年8月12日から19日に現地調査を行い,子供,子供をもつ親,独身,高齢者の4世代に分け,各20人合計80人へ「公園に行く頻度」,「公園に行く目的」,「どんな公園に行きたいか」という3観点でインタビューを行い考察した。その結果,現在の公園は管理が不十分で,利用に不安な点が多くあることがわかった。具体的には,芝生や木など緑を多く配置し,食事や休憩ができる机やベンチ,清潔なトイレなどを導入することが重要な課題である。また,少子高齢化が進む日本では,高齢者のために健康器具を設置することや,各世代が安心して公園を利用できるように公園内のゾーン分けなども有効であると考えた。
15,「生活気候区分〜海外からの観光客に向けて〜」
熊沢綾乃(千葉県立佐倉高等学校)
(発表要旨)今年日本で開催される予定のオリンピック。例年以上に海外からの観光客が訪れることだろう。目的はオリンピックだとしても,日本各地も観光することだろう。先人達の気候区分では,多くは「北海道を除く日本のほとんどが温帯湿潤気候」と区分されている。しかし,日本は南北に長く,温帯湿潤気候といっても場所により気候が異なる。したがって,海外からの観光客に,観光地によってどのような服装がよいのかを,不快指数を用いて提案する。日本地図に不快指数を記していくと,「中部地方内陸,瀬戸内,屋久島は例外的な不快指数値だ」という,ある一定の法則が見つかった。また,このような結果となった理由を推測した。今後,SNSや旅行雑誌に,服装のための気候区分が載ることによって,観光客はより快適に日本を楽しむことが出来るだろう。このような ちょっとした心遣いによって,お・も・て・な・し が素敵な日本に磨きをかけることだろう。
16,「減災マップと地域コミュニティにHUGする」
猪瀬遥大・青山怜慈・赤塚真理・岩地 優(佐野高校)
(発表要旨)私たちは,令和元年東日本台風の際の避難率の低さに着目し,水害時の避難所運営に関する研究に取り組んできた。これまで,佐野市と同様に台風による被害を受けた熊本県の水俣高校生とZoomで質疑応答,日本各地での水害支援経験の豊富な海外ボランティア支援団体へZoomインタビューを行い,地域コミュニティの繋がりが強い地域ほど復興が早いこと,繋がりが希薄化していると考えていた都市部でも,復興に対して強い共助を発揮した地域があることが分かった。そこで,地域コミュニティの強さを図る指標として,地域の祭りの存続と民話の伝承に注目し,佐野市の民話・祭りの分布を地図上に示した結果,水害の多い新興住宅地では民話・祭りの伝承が弱い傾向にあることが分かった。今後はこれらを教材化し,地元の小学生を対象に,避難所の運営を模擬体験できるゲーム「HUG」も使いながら楽しく「高校生と自分たちで作る防災マップ」活動を行う計画を進めている。
17,「豪農・在郷商人白田家の活動とその住宅の現状」
渡邉陽仁(日本大学山形高等学校)
(発表要旨)江戸期における山形県の代表的な特産物である青苧に関係する文献に記載されていた,白田弥治右衛門家の伝統的な家屋が現存していることを発見し,興味を持った。本研究では,現地調査,文献調査などから,白田家の江戸後期の活動や,住宅の現状を明らかにする。
白田家は山形県朝日町大谷に位置し,屋敷を形成する主屋や,土蔵,離れは,それらの規模などから当時の繁栄を偲ばせ,周辺地域特有の特徴を持つ。主屋の建築年代は江戸後期とみられ,現在南西側が崩壊していた。
様々な記録から,白田家が村役人や,豪農,豪商として江戸後期には,発展していることが分かった。とくに有名な活動が,庶民衣料の原料だった青苧の,集荷と北陸地方への移出であった。
白田家は,江戸後期の村役人や豪農であっただけでなく,商人として北陸地方と関わっていた。住宅は貴重な文化遺産であり,早急な保存対策が必要である。
18,「東播磨地域におけるため池の水質の実態調査」
井上絢音・竹山悠斗・真野航輔・山野莉緒(兵庫県立加古川東高等学校)
(発表要旨)現在平野部のため池を中心に水質悪化が問題となっている。その一方,ため池では非灌漑期に水質改善や設備の点検のために水を抜く「池干し」がおこなわれている。私たちは,先行研究からため池の水質に影響を与えることがわかっている集水域の土地利用と,池干しに着目し東播磨地域におけるため池の水質の実態を調査することを目的に研究をおこなった。水質調査は灌漑期の8月に30個のため池で,非灌漑期の12月に19個のため池でCOD,NH₄-N,NO₂-N,PO₄-Pの4項目についておこなった。その結果と集水域の土地利用,池干しの有無から東播磨地域では,①水田への施肥がリン・窒素の濃度上昇の大きな要因となっている可能性があること,②下水道の整備により宅地排水の流入が減少し,住宅地に位置するため池のリン・窒素の濃度が高くはないこと,③池干しをしているとリン・窒素の濃度は高くなりにくい傾向があることがわかった。
19,「シェアサイクリング事業の問題点と展望」
篠原一仁(千葉明徳高等学校)
(発表要旨)昨今,シェアサイクリング事業が世界各地で注目されている。日本においても導入する自治体が多く,私の住む千葉市にもシェアサイクリング事業が導入された。この事業で成功する都市と失敗する都市にどのような違いがあるのか,各自治体が公開されているデータを基に事業の現状を把握し,解決策を検討した。
まず,駐輪場(ポート)の問題が挙げられる。ポートには主に「駐輪場所を指定するタイプ」「乗り捨てられるタイプ」に分かれており,これらを比較することで問題点を探究する。次に,各事業の運営状況の問題だが,この事業は利用料金が安価なため運営コストの補填が課題になっている。この問題に対しては,公共交通機関の一種として認識することや行政の積極的な介入が必要といえる。
これらのことから,事業の失敗リスクは人口などに影響されず事業者側の工夫によって改善されること,利用者の行動を大規模に分析することが必要だとわかった。
20,「千葉県における台地の縁に立地する高校についての考察」
瀧口恵太(千葉県立佐倉高等学校)
(発表要旨)千葉県内の多くの伝統校が坂の上,すなわち台地の縁に立地するのを疑問に 思っていた。そこで千葉県内で台地の縁に立地する高校の実態,立地理由を明ら かにすることを目的とし,県内の県立高校を対象にした。全122校の立地を調べ ると,台地の縁にある高校は32校あった。建設年に基づいて,1900~1920年代に 建設,1960~1980年代に建設された高校の2つのグループに分けて立地理由を調 べた。前者では「師範学校中学校及高等女学校建築準則」で定めていた,校地に ふさわしい土地の条件が台地の縁に当てはまった。事例として佐倉高校を取り上 げると,建築準則の規定をベースに,各校の事情を加味して台地の縁に立地して いると考察できた。後者は船橋芝山高校を事例とした。学校設置理由は,第一次 ベビーブームでの学生の増加であり,同年に多くの高校が設置されたため,資金 面から,一般的に地価が安いと言われている台地の縁に立地したと考察した。
21,「沼田市薄根町における住民の防災意識と避難の見通しに関する考察」
中澤優希・滝沢凛香(群馬県立高崎女子高等学校)
(発表要旨)近年,台風などによる豪雨災害が日本各地で多発しており,自然災害は私たちにとって身近な脅威となってきている。それを踏まえ,身近な地域における水害リスクに注目し,沼田市薄根町を対象として調査を行った。この地域は,洪水が発生した場合,浸水予測が5~10mの区域にあたる。調査としてまず市役所を訪問し,沼田市の防災への取り組みについてお話を伺った。次に調査地域の自主防災会の会長宅を訪れ,防災会の取り組みについてお話を伺った。そして,この地域の住民宅を抽出し,そこを訪れ,防災意識や避難に関する見通しについての状況を聞き取ることができた。その結果,市の取り組みだけでなく,住民個人の防災意識が必要であることが明らかになった。この調査により,住民の防災についての意識が高まり,自然災害の被害を小さくすることにつなげられたら幸いである。
22,「#いいねみやざき♡ ~GISを用いたインスタグラムの空間分析~」
田中凜香・藤原凛華(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)
(発表要旨)情報発信のみならず,特に若者世代の観光情報の収集ツールとしても近年有用性が高まっているインスタグラム。本研究では,宮崎県の観光情報を,「映え」写真とともに積極的に発信している公式アカウント「宮崎観光情報『旬ナビ』」(宮崎県観光協会が運営・フォロワー数約1万人)を対象として,令和2年12月までに投稿された全ての写真の撮影地・名称・「いいね」数・ジャンル等を収集した。その統計情報を,GIS(地理情報システム)のArcGIS Proを用いて,宮崎県の市町村境界データと重ね合わせて地図化し,様々な空間分析を行った。その結果,「いいね」数と写真のジャンルとの関係性が読み取れた他,市町村別の投稿数に大きな偏りがあることや,未だ発信されていない観光地が多数存在することが明らかになった。また,本研究の成果を宮崎県観光協会に報告することで,アカウント運営上の参考にしていただいている。
23,「日向神話に登場する神様が祀られている神社の分布に関する考察」
三田琉聖・齋藤武志(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)
(発表要旨)令和2年は日本書紀編さん1300年の歴史的節目にあたり,記紀編さん1300年事業として,宮崎県内各地で日向神話に関わる様々な行事が実施された。そこで本研究では「宮巡~神主さんが作る宮崎県の神社紹介サイト~」(宮崎県神道青年会)を参考にして,宮崎県内に存在する全650社の神社の位置・名称・祀られている神様の情報を統計データ化した。その統計情報を,GIS(地理情報システム)のArcGIS Proを用いて宮崎県の市町村境界データと重ね合わせて地図化し,特に日向神話に登場する神様について様々な空間分析を行った。神様別に祀られている神社を分析した結果では,日向神話内でもその祀られている神社数に大きな差異があることが明らかになった他,イザナギがアマテラスやスサノオを生んだとされるみそぎ池がある宮崎市や天岩戸伝説がある高千穂町などにおいて,日向神話の神様を祀る神社が多く分布していることが明らかになった。
24,「スタジオジブリ映画『耳をすませば』に描かれた景観の地理的分析 ― 地理は楽しく学ぶべし!」
小林里央・井手瑞花・南道さくら・菅野琉花・小田垣歩那(千葉県立船橋芝山高等学校)
(発表要旨)私たちは,地理を楽しく学ぶために,スタジオジブリ映画『耳をすませば』を地理的に分析した。まず映画を視聴して,描かれた景観や事象を地理的な視点で見て項目をあげた。次に映画の舞台である多摩ニュータウンの実態の把握と映画から読み取った地理的な事象の確認・勉強のために現地調査を行った。描かれた景観と実際の景観を比較し,その景観からさらに考察を深められたものもあった。例えば,川の護岸の形が親水性のあるものであることを学んだり,坂の多い地形は特に多くの高齢者が住む街において不便であることなどを考察したりした。また,描かれた景観と実際の景観が違うものについては,実際の場所を特定して比較することもできた。この過程で,地理はさまざまなことに繋げられることに気づき,好きなものから地理に繋げれば学びやすくなり,地理も好きなものも,より好きになれることがわかった。広い視野を持ち,地理を楽しく学ぶべきだ。
25,「アメダスの気象データから考える衣替えと熱中症の危険性―私たちの制服と生活の提案―」
千葉日南音・石井美咲・久保田香帆・中尾七海・引野 遥・平泉元輝・関根 花香(千葉県立船橋芝山高等学校)
(発表要旨)私たちは,その日の気温によって制服の夏服・冬服を変えられないことに不自由を感じた。「ブラック校則」が話題になっており,生活をよりよくするためにも,気候の変化に合わせて制服の着用ルールを変えるべきだと考えた。気候が変化してきていることを明らかにするために,アメダスのデータを使用し,約40年前から10年ごとに気温の平均値を算出して比較したり,夏日日数を比較したりした。その結果,平均気温の上昇や夏日の増加,特に5・6・11月に平年値より極端に最高気温の高い日が頻出するようになったことなどが明らかになった。また,最高気温20℃以上の初終日の間が長くなっていた。さらに,環境省の熱中症指数のデータと気温上昇や初終日との関係を考察した結果,気温上昇に伴い,熱中症の危険性も上昇していることがわかった。これらの結果から,夏服・冬服の着用期間の制限をなくし,気候に応じて選べるようにするということを考案した。
26,「船橋市における商店街の利便性評価」
飯生康太(専修大学松戸高等学校)
(発表要旨)現在,日本において商店街や古くからあるお店がシャッター化していると耳にする。身近にある商店街でもシャッターが多いイメージがあり,シャッター街化の原因に関心を持った。そこで本研究では,近接性の高い船橋市の実籾商店街と大久保商店街の2つの地域を取り上げて 商店街の利便性に関する評価・基準の作成を行い,利用のしやすさを考え,シャッター化の原因を明らかにすることを目的とした。
それらを明らかにするために現在におけるそれぞれの地域の人口や年齢といった特徴を調べた。そこから,各商店街において大久保では高齢の方,実籾では主婦つまり30代位の女性が多いのではないかという仮説を立てた。そして,再び,現地調査を行い実際に利用している人の性別や年齢層が利用しているのかを確認し,それぞれの利便性から使いやすさの評価をした。
27,「医療従事者の地域偏在と働き方改革」
井手美里・森川日都美(品川女子学院)
(発表要旨)新型コロナウイルスの感染者拡大を受けて,医療従事者への負担が膨らみ続けている。そんな中,2019年4月1日施行された働き方改革関連法が,2024年からは医師にも適用されることになっている。これに対して日本医師会は「地域医療確保のために規制緩和を求める」と声明を発表するなど,医療従事者の負担軽減と地域医療確保のバランスを両立することが容易ではないと考えられる。2004年から始まった,研修医が研修先を選択できるマッチング制度が地域偏在に影響を与えていると考えられているが,現状は首都圏と地方の間でどれほど医療従事者の偏在が起きており,地域医療に歪みが生じているのかを把握する。全国的なデータを分析することによって,地域医療の地域ごとの特徴を明らかにする。
28,「宮崎県内小中学校の校歌に出現する景観用語に関する研究」
大浦伸太郎・久松 創(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)
(発表要旨)学校の校歌の歌詞には,建学の理念などの他に,学校が所在する地域の地形をはじめ,歴史や文化・風土などの,景観用語が盛り込まれることが多い。
そこで本研究では,宮崎県内に所在する小中学校・中等教育学校の校歌について,宮崎日日新聞「母校のメロディー」HPを参考にして,全てテキストデータ化し,テキストマイニングツールを用いて品詞に分解した上で,景観用語の抽出を行った。
その情報を,GIS(地理情報システム)のArcGIS Proを用いて,各学校の所在地データ・宮崎県の市町村境界データと重ね合わせ地図化し,いくつかの景観用語について空間分析を行った。
その結果,「黒潮」「日向灘」等を校歌に含む学校は,太平洋側の市町村に多かった一方で,「高千穂」を校歌に含む学校は,「高千穂町」がある県北と「高千穂峰」がある県西それぞれに存在し,「霧島」を校歌に含む学校は,霧島山から遠く離れた宮崎市においてもみられた。
29,「千葉県船橋市高根台における老人ホーム増加理由の検討」
山崎美咲子(専修大学松戸高等学校)
(発表要旨)高根台は船橋市東部に位置している。現在の高根台の人口は約14000人であり,そのうち65歳以上人口が全体の約35%を占めている。15歳未満は約11%のため,子供と比べて高齢者の割合が高い傾向がある。このことより高根台は高齢化が進んでいるのではないかと考えた。本研究では,高根台とその周辺地域における老人ホームの数や老人ホームの形態を調査し,船橋市における老人ホームを取り巻く環境,および,高根台における老人ホームの立地要因・近縁の増加要因を明らかにすることを目的とした。 調査は,主に統計や行政資料を用いて行い,高根台と周辺地域,船橋市全体での人口動向を比較,老人ホームの分布・営業開始時期について整理して考察を行った。
30,「市原市の神社の分布からみる神徳と神社の立地特性に関する調査」
串田日向美(千葉県立千葉高等学校)
(発表要旨)神道の信仰に基づく祭祀施設である神社の立地は、祀られている神の神徳と深く関係しているのではないかと考えた。そこで、本研究では実際に神社の宮司のもとを訪れて神社と土地との関係に関して聞き取り調査を行い、それをもとに市原市を範囲として信仰形態別に神社の分布図を作成した。信仰形態の分類は、八幡信仰、稲荷信仰、三島・大山祇信仰、祇園信仰、山王信仰、伊勢信仰、出雲信仰、諏訪信仰、春日信仰、白山信仰、浅間信仰、天神信仰という既存の信仰の枠組みに加え、仁徳天皇、日本武尊という市原市の神社で多く祀られている2人の人物も含めたもの。これらを神徳の関係から結びつく、地理的な条件と照らし合わせた。地理的な条件というのは、大きくわけて、①人口の分布②田地の分布③起伏図④河川流域、の大きく4つにグループ分けをして神社の分布図と重ね合わせた。これから、神社の分布と神徳の関係を地理的に分析していった。
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高校生ポスターセッションへの参加(閲覧・質問)には申し込みが必要です。下記サイトからご登録ください。後日、特設サイトの情報を通知いたします。
〔参加申し込み期間〕終了(2021年2月8日(月)~2021年2月16日(火)12:00)
〔申し込みサイト〕 https://www.ajg.or.jp/2021spring_registration/2021spring_highschool_registrationform/
〔ポスターの掲示期間〕
前半【ポスターの掲示・質問】2021年2月23日(火)~28日(日)
後半【回答の掲示】 2021年3月26日(金)~28日(日)
セッションの詳細は下記ページからご確認下さい。
https://www.ajg.or.jp/20210204/7833/
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https://www.ajg.or.jp/20190316/5238/