●――短 報
北極評議会による北極地域の拡大と北極地誌 岩田修二・247-262
●――書 評
金田章裕:地形と日本人──私たちはどこに暮らしてきたか
(春山成子)・263-265
奈良県高等学校地理教育研究会編:地理総合の授業(井田仁康)・266-267
小野映介・吉田圭一郎編:みわたす・つなげる自然地理学(小岩直人)・268-270
大田暁雄:世界を一枚の紙の上に──歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生(成瀬 厚)・271-272
鎌田真弓編:大学的オーストラリアガイド──こだわりの歩き方(松山 洋)・273-274
山下清海:横浜中華街──世界に誇るチャイナタウンの地理・歴史(小野寺 淳)・275-276
地理学関係博士論文要旨(2021年度)・277-285
学界消息・286-288
2022年春季学術大会および春季代議員会記録・289-293
会 告・表紙2 および294-299
2022年秋季学術大会のお知らせ(第3報)・表紙2, および294-295
北極評議会による北極地域の拡大と北極地誌
岩田修二
東京都立大学名誉教授
これまでの世界地誌における北極地誌は,北極地域の範囲(南限)をツンドラ地帯の南限(北方林あるいは亜寒帯針葉樹林の北側の森林限界)とする自然地誌であった.一方,人文地理学的な北極地域の範囲を明確にした北極地誌は存在しなかった.北極地域の国際的な協議・管理機構である北極評議会は,環境評価や人間活動調査のための北極地域をそれぞれ設定した.これらは環境問題や人文地理学のための北極地域として有効な区分である.しかし,これらの南限は従来の自然地理学的な北極地域の範囲から大きく南にシフトし,北極的なツンドラ環境だけではなく亜寒帯の森林地帯も広く含むことになった.人間活動を中心に考えると,北極地域は北極海を取りまく環北極海地域であり,これは機能地域である.したがって,北極地誌は,従来の等質的な各国地誌と重複する形で記述されることになる.
キーワード:
北極地誌,ツンドラ南限,北極地域認定,北極評議会,環北極海地域
(地理学評論 95-4 247-262 2022)