2025年春季学術大会 高校生ポスターセッション発表タイトルおよび要旨

発表番号,発表タイトル,発表者(学校名),発表要旨

01 授業で使ってほしい!Googleストリートビューを用いた地理教育ゲームの開発

  足立 智哉・飯島 健太・小路 悠真・塩野 颯斗・玉利 弥(千葉県立柏の葉高等学校)

情報理数科の授業で、地理の授業などで活用できるGIS技術を用いたゲームを3つ開発した。これらのゲームは、Googleストリートビューで表示された世界の任意の座標点を当てるGeoGuessrを応用したものである。GeoGuessrを地理の授業用に応用することで、授業のさまざまな場面で活用できるのではないかと考えた。開発の過程で、ゲームのテーマを合計108個考えた。出たアイデアを分類して考察し、今回は国当て首都ゲーム・ハザードマップ避難ゲーム・気候区分当てゲームの3つを開発した。国当て首都ゲーム・気候区分当てゲームは、特定の国の首都やケッペンの気候区分を当てるゲームであり、ハザードマップ避難ゲームは、ある場所から特定の目的地に向かって、適切なルートで避難できるかどうかをシュミレーションするゲームである。ゲームの実証実験結果を考察するとともに、地理総合などで活用してもらうための活用例を提案する。

 

02 津山地域における地すべり調査とモデル化の検討

  井上幸菜・井上結寿・奥山純・桑守孝明・兒玉悠里・佐古亮裕(岡山県立津山高等学校)

はじめに,土地の一部が地下水等に起因してすべる現象又はこれに伴って移動する現象を「地すべり現象」と定義する。本研究の目的は,津山地域における地すべり現象が起こる条件を明らかにし,その条件を基にモデル化をすることである。研究ではまず,地層を構成する土と地層の傾きの条件を揃えて作成した地層モデルを作成した。そしてそのモデルにじょうろを使って地すべり現象の再現を試みた。その結果,作成した地層モデルで地すべり現象が観測された。また,高倉層と日本原層の境目に水が入り込むことによって地すべり現象が起こること,フィールドワークで実際に計測した地すべりが起きたとされる斜面の傾斜と,地層モデルで地すべりが起きた滑落崖の傾斜とがある程度一致すること,が明らかになった。

 

03 宝塚市の土砂災害リスクエリアの居住人口から避難計画を考える

  木川晴道(神戸大学附属中等教育学校)

私は宝塚市の土砂災害リスクエリア居住内人口を小地域ごとの面積から概算し、その結果から宝塚市の避難計画について考察した。災害リスクエリア内居住人口は避難所として受け入れなければならない人数だったり、備蓄するものの数を決めるのに役立つ。地方自治体は中長期的な国土全体の構造・地域づくりや、防災・街づくりなどに災害リスクエリア内人口のデータを役立てている。私は地域の実情を知るためには数値を出すだけでは不十分と考え、その地域の問題点を見つけ、その解決策を自分なりに考えることを目標に、対象地域を絞ったフィールドワークを行った。小地域人口や土砂災害警戒区域、高齢化率はWebGISサイト「ひなたGIS」を参考にした。結論として宝塚市内には避難所からは遠いものの、土砂災害リスクエリア内居住人口が多い地域が多く存在することだ。このような地域の中には、自分たちで避難所を設置しているところもあった。

 

04 魔界都市 京都を守るバリアとは?

  太田和輝・吉村蘭輝(京都府立桂高校)

古代華やかな貴族文化の裏には怨霊や鬼、疫病の流行など人間と「魔」が同居する精神世界が広がっていた。平安京に遷都した桓武天皇は京都の基盤を造るにあたり、縁起の悪い方角に神社仏閣を設けるなど、陰陽道や神道、密教によって結界を張るように構成した。近世には秀吉が外敵に備える防塁と,氾濫から市街を守る堤防として御土居(土塁)を築いた。平安の都造りから始まる「京(みやこ)を守る」取り組みは現在でも様々な形で受け継がれている。研究方法は、平安京の「怖れ」に対する様々な対策について考察し、結界を地図化。また現在でも残されている鬼門の痕跡についてフィールドワークを行った。次に近世の御土居と明治~大正の市街地図を重ね合わせることにより、長い間都が御土居で守られていたことを確認。近代の街並みや文化遺産を守るバリアも地図化し可視化することにより、京(みやこ)の都市構造を時間軸と空間軸から多面的にとらえてみたい。

 

05 土砂災害発生のリスクがある地域の同定―広島県坂町を事例として―

  小西 葵(ノートルダム清心高等学校)

2018年7月の西日本豪雨で、広島県坂町は大きな被害を受け、特に砂防ダムの決壊と倒木が原因で河川が氾濫し、被害が拡大した。災害が大きくなった要因を明らかにするため、坂町の地形の立体模型を用いた空気の流れ方や土砂の崩れ方に関するシミュレートや、データを用いてリスクの高い場所を特定した。実験や調査の結果、坂町は扇状地に位置しており、特に扇頂部や扇端部では空気の流動が少なく湿度が高くなり、また、扇状地より上流側の谷壁斜面では、主にマサ土でできた地盤が風化しやすくなることがわかった。こうした地形では急斜面が多く、豪雨や地震で土砂崩れのリスクが高まる。よって、今後の防災対策として、急傾斜地の補強や砂防ダムの改修が不可欠であり、適切な管理と対策が取られることで、防災面での住民の安心が実現されると結論づけた。

 

06 農村における講集団の現状~千葉県大網白里市山辺地区を例に~

  戸田 武瑠(千葉県立長生高等学校)

本研究は、伝統的な農村コミュニティである講集団の現状を、住民への聞き取りによって明らかにしたものである。調査対象地である大網白里市山辺地区は千葉県中部に位置し、谷津田などの農村の景観が残る一方で、近年では都市化に伴う集落の少子高齢化が進んでいる。このような山辺地区における講集団の文献資料は乏しく、その詳細や現状について文献資料から窺うことはできなかった。そのため、講集団の現状を明らかにするべく聞き取りを行った。 結果として、山辺地区では民間信仰によって結ばれた講集団が現在も11集落で活動していることが分かった。しかし、これらの講集団は民間信仰によって結ばれた本来の目的は既に失われ、住民同士の交流や飲食の場として存続されていた。この変化の背景の一つには農村の少子高齢化があり、講集団は講員の減少や高齢化に伴い、実施方法や形態を柔軟に変化させ、今日まで存続するに至ったと考えられる。

 

07 GISで読み解くクマの行動経路~人間とクマの共存のために〜

  小齊平華子・友廣ゆいの・江川怜来(お茶の水女子大学附属高等学校)

クマによる人身被害が増加している。都道府県別にみると2023年現在秋田県の人身被害件数が最も多い。そこで秋田県鷹巣盆地を対象にどのようにクマが出没し人身被害に至るか、行動経路を明らかにすることでクマと人間の共生を目指した。先行研究よりクマは本来臆病でありまた嗅覚が鋭いという特徴があることが分かった。地理院地図にクマの出没・人身被害の場所をプロットしたところ、鉄道・道路の周辺で人身被害が多く、また河岸段丘の段丘崖で出没が多いことが分かった。これよりクマの行動経路について「鉄道・道路や段丘崖の茂みを伝い、人気がないが匂いのする道を辿って市街地までやってくるのではないか」という仮説を立てた。主な餌である広葉樹林、ごみ集積場などクマを誘引しうる要因やクマが身を隠せる空き家を地図上に重ねたところ、鉄道・道路や段丘崖の茂みを伝い、ごみの臭いなどに誘引されて市街地に出てくることが検証された。

 

08 避難所配置設計における課題とその最適化への提案 ―アクセス性と公平な避難機会確保の観点から―

  森井美月(神戸大学附属中等教育学校)

本研究では、2024年に災害を意識する機会が多かったことを受け、住民の早期避難を促す環境整備が二次災害による死傷者の減少に直結すると考え、アクセス性と、多様な住民が公平に避難所を利用できる配置の観点で調査・提案を行った。早期避難は命を守るだけでなく、救助活動の負担軽減にもつながり、社会的意義が大きい。 南海トラフ巨大地震の知識や全国の避難所の偏在性の先行研究をふまえ、神戸市東灘区と大阪市北区を比較調査対象とした。WebGISを用いて現時点の避難所の可視化・リスク調査・ODコストマトリックス解析・避難限界距離を用いたバッファー解析・バッファー内人口の計算を行い、避難施設の増設が必要な地域を仮説として設定し、調査の進行に伴い見直した。結果的に具体的な地域を提案したが、神戸市東灘区ではアクセス面で避難施設の増設が必要と考えられる。今後はより具体的な適切な立地や増設の形態の検討が課題となる。

 

09 地域の公共交通を支える最後の砦 ―BRTの可能性―

  梶山海翔(日本工業大学駒場高等学校)

近年、人口減少による利用者の低迷により、鉄道路線を廃線にせざるを得ない状況が続いている。鉄道の廃線は地域を孤立させ衰退をもたらす。そこで、地域の公共交通を支える最終手段の一つがBRTであると考える。BRTは別名、バス高速輸送システムと呼ばれ、元々鉄道が走っていた場所を専用道として整備し、バス車両を使って速達性などを図る。本研究ではBRTの現状と課題を探究し、地域の公共交通のあり方について考察する。JR東日本では約34路線が赤字となっていて、その他のJRも多くの赤字路線を抱えている。しかし、現在BRTが導入されている路線はJR東日本の大船渡線、気仙沼線、JR九州の日田彦山線の3路線だけである。私は大船渡線の現地調査を行った。その結果、停留所の周辺には点々と民家があったものの、ほとんどの停留所を通過したため、乗客は観光客が多いように感じた。今後、BRTに将来性はあるのか、考えていく必要がある。

 

10 生物多様性のあふれるまちづくり実現に向けての戦略―東京都江東区を事例にして―

  東山蓮太郎(専修大学松戸高校)

昆明・モントリオール第15回生物多様性条約締約国会議を受け、東京都江東区では「みどりの基本計画」の後期改訂が始まり、江東区生物多様性地域戦略策定に向けて住民を対象にヒアリングが開始された。これまで同地において「生物多様性を意識したまちづくり」が進まなかった理由として、①近代以降の大規模開発による自然環境の改変②利権関係者間の協力不足③住民の生物多様性への関心の低さという3つの点を挙げることができる。本研究ではこれら3つの点について明らかにするべく、『南葛飾郡誌』(1923年刊行)をはじめとした文献調査、今昔マップを用いた各年代の土地利用等の比較調査、江東区生物多様性フェアでの発表団体を対象にした質問紙調査を行った。これらの結果を踏まえ、本発表では「生物多様性実現に向けたまちづくり」の実現にあたっての具体的な政策について提言するとともに、その実現へ向けての方向性について明らかにしていきたい。

 

11 緑地と店舗の分布からみた鳥取市中心市街地における過ごしやすさの検証

  葉狩 和夏・坂口 結香・山本 健太朗・森山 優羽・會見 奏平・津田 瑠璃(鳥取県立鳥取西高等学校)

鳥取市中心市街地は衰退が続いており、市は市街地の再整備に取り組んでいるが、現状は多方面で市街地の再生に成功しているとは言い難い。「居心地が良く歩きたくなるまちなか」(青木・福山:2024)を参考に、本研究では「過ごしやすさ」に焦点を当て、重要な要素となる緑地と店舗について、緑地と店舗の分布を調査した他、市街地の利用についてのアンケートを実施した。 緑地の分布・緑量は、鳥取駅や鳥取城跡周辺、公園・寺社などに偏り、店舗密度も鳥取駅付近以外は高くなかった。また市街地の利用頻度について「利用しない」と答えた人が4割近く、「通勤・通学」のみの目的で利用する人が3割に上った。 以上から、「過ごしやすさ」という点において整備が進んでいる地域と不十分な地域の差が大きく、市街地全体の活性化につながっておらず、全体の「過ごしやすさ」の向上には整備が不十分な地域も含めた全体的な整備が必要であると結論付けた。

 

12 定点カメラとRAI分析を用いた神奈川県青根区及び緑区におけるシカの生息実態の比較

  平戸華凜・山田ひとみ(東京学芸大学附属高校)

本研究では近年獣害が増加している神奈川県相模原におけるシカの生息の実態と生態系管理への応用手法について探求することを目的に、定点カメラを用いた観察とRAI(撮影頻度指数)を用いてシカの活動傾向の分析を行った。神奈川県青根地区の浄水場の柵の手前と奥、畑、緑地区の長福寺に1台ずつの計4台のカメラを設置し、春季・夏季・秋季のデータを比較した。この結果、畑では浄水場周辺の2倍以上が記録された。また浄水場の柵の手前と奥で撮影数に差が生じ、人工の柵によってシカの移動が制限されていることが示唆された。一方で畑ではシカの出産シーズンと被る夏季にRAIが減少しており、安全な場所を求めて山側へ移動していると考えられる。2020〜2024年にかけてデータを集めた長福寺では経年的に頭数が増加していたことに加え、春から夏に増加していたため今後出産場所になる可能性があり定着を防ぐような対策が必要であると考える。

 

13 常陸国土浦城下町に関する歴史地理学的研究

  関楓太(茨城県立竹園高校)

土浦城は霞ケ浦に注ぐ桜川の氾濫原にある微高地上に築かれた。江戸時代には、水戸街道の宿場町として栄えた城下や街道を押さえる防御拠点でもあった。本研究では、土浦城下町の江戸時代から現代に至るまでの土地利用や道路網の変遷、地形に残る当時の痕跡を歴史地理学的な視点から明らかにすることを目的とした。調査方法として博物館や大学所蔵の古地図、地理院地図の色別標高図、行政の地図情報サービスを用いて各観点について年代別に地図を作成・比較し、文献の内容を踏まえた分析を行い、現地調査で補強した。その結果、道路網の変化から昭和以降、城下町の防御機能は低下し、利便性を重視した開発が進んだことが分かった。また土地利用について、城域内の個人商店に衰退の傾向が見られ、背景として1960年代以降の郊外型商業施設の発展が影響したと考えられる。本研究では、城下町の変遷を調査するとともに、今後の都市計画の課題と方向性を提言する。

 

14 都心における小規模小売店の立地展開-薬局・コンビニエンスストアを事例に-

  堤汎愛・三木夢叶(品川女子学院)

1980年代以降、東京では多核心型の都市構造の考え方により、副都心や郊外の開発が進んだ。駅近くには多くの商業施設が集まり、とりわけ薬局・薬店は多角化経営が進み、2000年代にはドラッグストアブームを背景に大型化が進んだ。結果として、手軽に多様な商品を買えることが利点のコンビニエンスストアにとって、大きなライバルになっていると考えられる。そこで本研究では、薬局の立地の変化を分析し、薬局とコンビニエンスストアがどのようなライバル関係にあり、どのように差別化を図っているのかを調査した。コンビニエンスストアは2018年をピークに店舗数の減少が進んでおり、競争の激化により特色が薄れる現象が起きていると言える。一方で薬局は、1つの商店街の中で分散していた30年前と比較すると、駅周辺へ集積する傾向が進んでいることがわかった。

 

15 新大久保駅周辺でセグリゲーションは起こっているのか〜ネパール人街の様相と形成理由の考察〜

  小林梨乃(麴町学園女子高等学校)

東京都では外国からの移住者が年々増加しており、特に多く見られるのは韓国人や中国人、ネパール人などのアジア人だ。新宿区の新成人の外国人割合が約50%であることを学び、新宿区の外国人人口を調べたところ、他区と比べてネパール人が多く在住しており、その中でも新大久保駅周辺に集住していることが分かった。本研究では、新大久保駅周辺の住宅地や、小売店・飲食店などの傾向を調べ、セグリゲーションが起きているか検討した。研究方法は統計・文献調査、実地調査を行った。結果として、新大久保駅の西側にはネパール料理屋やネパール食品を扱うスーパー、ネパール語の公共ポスターが多く見られた。また、杉並区のネパール人学校に通うために中央線へのアクセスが良いことからネパール人街が形成されていると考えた。東側には韓国料理屋や韓国雑貨屋が多くあり、韓国語の公共ポスターが掲載されていることから韓国人街が形成されていると考察した。

 

16 仙台市太白区秋保町境野地区における社会環境の変化と酪農

  柴田倫花・伊賀心咲・黒木汐那(宮城県仙台西高等学校)

仙台市太白区秋保町境野地区には、江戸時代初期に作られた大堰堀があり、地形とは逆の勾配を流れる水路になっているため、境野地区全体で稲作を行うことができた。現在の境野地区では、産業として稲作を中心に行っているが、その中で稲作と並行して、酪農を営んでいる農家がいる。今回は、その農家に焦点を当て、酪農を選択した背景と地域の主な産業について調査した。調査方法は、主にインタビューである。インタビューによれば、酪農を始めたのが昭和29年。当時の秋保地域では稲作と葉タバコ産業が主で、それに加え、家畜の飼育もあった。だが、昭和40年代頃から社会情勢の変化に伴い、会社勤めをする人が増え、農家の兼業化が進んだ。現在では、生産者の高齢化と担い手不足が問題となっている。以上のことから、この農家は、専業農家として存続し続けるために、新たな部門を取り入れて経営し、地域の活性化に取り組んでいると考えた。

 

17 三重県の水制遺構の現状と活用 ―服部川、雲出川を事例としてー

  坂本亘平・清水綾乃・余谷莉瑚・前田真希(三重県立松阪高等学校)

この研究の目的は、三重県内の河川に残る明治期以前の水制遺構(霞提など)について、現状を調査し、今後、これらの水制遺構を、防災を学ぶ歴史遺産としてどのように活用していけるのかを考察し提案することです。研究手法として、霞提などが確認されている服部川と雲出川を現地調査しました。また、三重県・県土整備部への聞き取り調査、国土交通省木津川河川事務所等への電子メールを使用した調査を行いました。さらに、地理院地図やグーグルアースを使用し、河川周辺の衛星写真から水制遺構の現状を確認しました。近年、日本では水害が多発し、水害の被害を少しでも減らすために河川の堤防の改修・強化などが行われています。その結果、霞堤が築かれた当時の状態で残っている場所は少なくなっていることから、霞堤の仕組みや効果など、水制遺構に関する情報を、防災教育の教材として発信していくことを提案します。

 

18 三重県の地域区分―三重県は何地方に属するかー

  前田真希(三重県立松阪高等学校)

研究目的:三重県の地方区分は中部地方、近畿地方のいずれか定まっていない。その状況を調査・考察した。考察:ほとんどの河川は伊勢湾~熊野灘に流入するが、伊賀の河川は大阪湾に流入する。歴史的に、伊勢、伊賀、志摩、紀伊の一部が合併し三重県になった。伊賀は津藩領であったので三重県に編入された。国の省庁の所管は中部・東海地方が多いが、一部は近畿地方である。電力は主に中部電力管轄で、熊野地域のみ関西電力管轄である。三重県のJRの管轄は主にJR東海だが、亀山市~伊賀市はJR西日本である。住民移動は、伊勢平野の多くの市町は名古屋市と関係が強いが、伊賀地域や熊野地域では関西地方と関係が強い。方言は、三重県の全域に共通して近畿方言の特徴がある。住民意識について三重県内5校の高校生にアンケート調査を行った。これらを総合的に考察し、三重県の地域区分として、伊賀地域の特異性が大きいと考えられる。

 

19 県庁所在地・津市はなぜプライメイトシティになれなかったのか ―プライメイトシティのない三重県の都市群―

  清水綾乃・余谷莉瑚(三重県立松阪高等学校)

目的:県庁所在地である津市が、他の多くの県庁所在地と異なり、県内のプライメイトシティ(人口首位都市)に発展しなかった理由を探る。考察:平成の大合併以前の国勢調査などの統計資料を使い、津市と県内他市の、県人口占める比率の推移などを調査し、津市と他市の発展度を比較した。三重県以外に県庁所在地がプライメイトシティでない県の状況も同様に調査し比較検討した。県庁所在地がプライメイトシティとなっていない県は三重県以外にもあるが、それぞれ異なった原因があり、共通要因の特定は難しかった。三重県の場合、津市は県中央部に位置するが、第二次産業があまり発達せず、名古屋都市圏であり工業の発達した四日市市や鈴鹿市などで人口増が著しかったことが原因と考えられる。また、三重県の特徴として人口10万人規模の中規模都市が多数あり、人口が分散しているため、プライメイトシティが発達しなかったとも考えられる。

 

20 広島県大竹市における災害時の物資運搬に関する考察

  福田 悠(ノートルダム清心高校)

本研究は、広島県大竹市を事例に、南海トラフ地震発生時の津波や土砂崩れの被害想定のもと、救援物資の滞りない輸送の可能性について考察した。研究方法として、大竹市役所危機管理課への聞き取り調査、広島県や大竹市が定める災害対策計画等の文献調査、大竹市内の道路の現地調査を行った。大竹市では各避難所に概ね分散して救援物資が備蓄されており、災害時には大竹市給食センターを拠点とした物資の輸送が想定されている。一方で、大竹市は山地と埋立地が大部分で、地震発生時、第一次緊急輸送道路である国道2号線は津波による浸水や液状化現象、大竹市給食センターから市街地への道路は土砂災害が発生するリスクがあり、物資の輸送が滞る可能性が高いと考えられる。大竹市では船舶やドローンなどを用いた輸送方法も検討しており、多角的な輸送方法で災害時を想定した物資運搬の訓練を推進していく必要がある。

 

21 防災教育を身近に!防災討論型ゲーム『防災Q』で楽しい防災教育を!

  福元結衣・玉田千尋・古川壮一郎・落合遥希(宮崎南高等学校)

自然災害が多い宮崎に住んでおり,自分の身を守る自助の意識を持ち防災活動を行うことが大切であると感じる。現在、防災教育を行う時間を十分に取れていないことが調べて明らかになった。そのため、日常的に防災教育を行う必要があると考えた。ゲーミフィケーションの考え方に基づき、楽しみながら気軽に防災教育を行えるように防災討論型ゲーム『防災Q』を作成し、宮崎南高校フロンティア科2年生と江南小学校5年生1クラスに試行してもらった。多くの人に楽しかった・初めて知ったことがあったと感想をもらえた反面、ルールの難しさや解説の不十分さ、知識の定着確認などが不十分であるという課題が見えた。探究活動を通して『防災Q』を使用し、防災に関する知識をつけ、理想の防災教育をすることができると考えられる。さらにゲームの改良を重ね新要素を取り入れ、より知識が定着し、災害発生時に自分の命を守れる行動ができるようにしていきたい。

 

22 地域に根差した文化的遺産の存立構造―広島市の雁木を事例に―

  岡野未怜(ノートルダム清心高校)

広島市には江戸時代から舟運として栄え、船着場として荷物の上げ下げをするための護岸である雁木が現在でも多くみられる。現在、NPO法人(雁木組)による雁木の保存活動や活用がみられるものの、広く文化的・歴史的価値があるものとして認識されていない。本研究の目的は、雁木の活用や保存をめぐって国土交通省、広島県、広島市、NPO法人が、雁木に対してどのように文化的・歴史的価値を認識しており、またそれぞれの主体がどのように連携して利活用に取り組んでいるかの一端を、聞き取り調査や現地調査を通じて明らかにすることである。調査の結果、それぞれの主体で雁木に対する認識が異なり、また雁木の修繕は国土交通省や広島県が管理している一方で、保存に関する取り組みは広島市とNPO法人がイベントなどを行っていることが分かった。それぞれの主体どうしが連携を深めることで雁木に対する価値を高め、地域の活性化にもつながると考えられる。

 

23 埼玉県における若年層の熱中症リスク軽減に向けた地域性分析

  鬼澤伶奈(川越女子高校)

本研究は、高校生を含む若年層の熱中症リスク軽減のための普及啓発資料作りに向けて、埼玉県内の熱中症リスクの地域差について明らかにすることを目的とした。県内を北部・中央部・南東部・南西部の4地域に区分し、暑さ指数・気温と救急搬送者数の日変化を分析した。これまでの研究で、北部が最もリスクが高く、特に若年層においては休日の屋外活動増加に伴いリスクも増加し、初夏でもリスクが高いことが判明した。また、8時~16時(北部は8時~17時)の時間帯が特に注意すべきと考察された。今回の調査では、北部と南東部の搬送者数の差が多い日と少ない日を比較した。多い日では両地域の気温差が大きく夕方まで持続していた。全年齢の搬送者数の日変化(午前多い日・午後多い日)と気温は、同じような日変化傾向が確認され、気温と搬送者数の関係が見られた一方で、若年層単独では搬送者数が多くないため、若年層との関係は十分に解明できなかった。

 

24 アクセスの悪い観光地が持つ魅力について

  内田涼太・中山堅心・松井奏太・高橋光(さいたま市立大宮北高等学校)

アクセスの悪い観光地には、独自の魅力があることが地理的視点から考察される。本研究では「公共交通機関の最寄駅から徒歩で60分以上かかる」ことをアクセスの悪さの基準とし、観光地の価値との関係を検討した。アクセスの悪さにより訪問者が限られ、静寂で落ち着いて環境が保たれやすいほか、到着すること自体が達成感を伴う体験となる。また、秘境感を演出し、特別な観光地としての魅力を高める要素にもなり得る。具体例としてユーシン渓谷のように最寄り駅から遠いことが逆に秘境的な魅力を生んでいる。また、実際に訪れている観光客への聞き込み調査を行った結果、訪問者はアクセスの悪さを「不便」と感じる一方で、「その不便さが特別な体験を生む」と肯定的に捉えている人も多かった。これらの要素が観光地の価値をどのように高めるかを分析する。今後はこの基準をさらに精査し、観光地の魅力発信に生かす方法を探る必要がある。

 

25 さいたま市北区宮原町がアニメの聖地になったら~宮原が受ける経済効果~

  鈴木友里・高橋夕杏(さいたま市立大宮北高校)

アニメ聖地化による経済効果は、地理的観点から地域の空間構造や資源活用の新たな可能性として注目される。宮原は埼玉県さいたま市北区に位置し、新幹線や在来線が利用できる交通の要所であり、住宅地と商業施設が混在する都市型地域である。また、私たちが通う大宮北高校もあり、学生が多く集まるエリアでもある。この特性を活かしたアニメの舞台設定がなされれば、駅周辺を中心に観光動線が形成され、商店街や飲食店、宿泊施設への経済波及が期待できる。類似の成功例として、鷲宮(久喜市)の『らき☆すた』聖地巡礼が挙げられる。鷲宮では、神社を中心とした巡礼ルートが確立され、地域イベントとの連携により観光客の定着を促した。宮原も、駅前広場や地元施設、さらには大宮北高周辺を活用することで独自の巡礼モデルを構築できる可能性がある。しかし、オーバーツーリズムや地域住民との共存といった課題も想定されるため、持続可能な観光戦略が不可欠である。宮原の地理的特性を活かし、長期的な地域振興を目指すことが重要となる。(文字数超過)

 

26 欠番

 

27 地図記号から考える医療体制の歴史 ~今と昔の矢板市の比較~

  山寺紗耶・大島心緒(栃木県立矢板東高等学校)

私たちの通学路に、地理院地図の地形図において地図記号で表示されていない病院があるのに気づき、病院の地図記号の基準を調べたところ、救急病院または救急診療所だと分かった。その調査の中で地図記号で表示されている市内の三つの病院の沿革に触れ、そのうちの一つ・地域の中心的な役割を担う総合病院の場所が現在と異なることを知った。現地調査・文献調査を通してその病院の歩みを調べるとともに、「今昔マップ on the web」で矢板市内の地図記号で表示される病院の変遷を追った。すると昭和7年発行の地形図データにおいて、当時の市街地のはずれに伝染病患者の隔離をして収容・治療する「避病院及隔離病舎」の地図記号があるのを発見し、当時の感染症に関わる社会情勢についても探った。以上、「病院」の地図記号を皮切りに行ったこの調査を通して、矢板という一つの地方都市における医療の変遷・普及の様相を明らかにすることができた。

 

28 外来野菜がつなぐ多文化共生 ―「えどがわメティ」を事例に―

  北澤一真(青山学院高等部)

本研究は、インド人のエスニックコミュニティが形成されている東京都江戸川区において、日本人によって外来野菜であるメティがインド人向けに生産されていることに着目し、外来野菜が多文化共生に寄与する可能性を論じたものである。メティの生産農家、メティの流通と普及活動を担う団体、メティを販売する食料品店に聞き取り調査を行い、生産から消費までの流れを詳細に把握し、それぞれのつながりを整理した。その結果、この地域で生産が盛んなコマツナとメティの栽培周期や環境が類似していることがメティの生産を可能し、流通と普及活動を担う団体を中核に、主に生産・流通の面で多文化交流が行われる仕組みとなっていた。以上より、エスニックコミュニティが形成される地域で外来野菜を生産することは、そのコミュニティ特有の食文化に対応する役割にとどまらず、国籍を超えた地域の人々の繋がりを生み、多文化共生の実現に寄与することが示唆される。

 

29 四万十川の砂防ダムが中流域の漁業に与える影響

  山田裕斗(学校法人ヴィアトール学園洛星高等学校)

四万十川では、アユを代表とした水産資源が豊富であり、独自の漁業が発展してきた。しかし近年、各種水産資源の漁獲量が減少傾向にある。その原因を探るため、私たちは四万十川中流域にある高知県四万十町を訪問し、川漁師の方にお話を伺った。その結果、四万十川上流にある砂防ダムが礫の運搬を止め、川底が泥に覆われることでアユなどの魚のすみかが減少していることが、近年の漁獲高の減少の要因の一つであると判明した。魚が住みやすい川底を再生するには、礫を下流に流すか川底の泥を取り除く必要があるが、それらを人力で行うのは現実的ではない。一方、人力に加え水の流れる力を利用して川底の環境改善を図る事業が下流のアユ産卵地域で行われており、一定の成果を得ている。このように自然の力を活用して川底の環境を整えていけば、砂防ダムによる防災と両立した永続的な河川環境の保全、そして伝統漁業の維持も可能になるのではないか。

 

30 都留市の労働生産性における課題と発展可能性

  中込怜巳・志村斗羽・酒井泰生・安留雅人・髙部律(山梨県立都留高等学校)

市内で従業者数の占有率が最も大きい都留市の製造業は付加価値額と従業者数の特化係数が高い一方で、労働生産性のそれは極めて低い。そこで本研究は都留市の労働生産性の低さが何に起因するのか、また都留市の労働生産性の向上のためにはどんな取り組みが必要かを明らかにし、労働生産性の向上に寄与する施策の提言を目的とした。都留市役所および都留市商工会へのインタビューを行うとともに、統計資料や他市や企業の取り組みを分析した。これらを通じ労働生産性の低さが投資への資金不足や大量生産に困難を抱える生産環境、DX化等の効率化の遅れに起因している現状が明らかとなった。また労働生産性を向上には独自技術を活かした製品の開発とDX化による効率化及び競争力の向上が必要であると結論付けた。この結論から、私たちは「工場の独自製品の販売」と「市役所と商工会それぞれの人員から構成されたDX化推進室の設置」という二つの提言に至った。

 

31 稲戸井調節池におけるインフラツーリズムの提案

  木下華綸・佐藤芽衣子・笹原裕美子・田中彩音(江戸川学園取手高等学校)

近年、増加する水害対策として遊水池の整備が進められている。本校に隣接する稲戸井調節池もこの一例である。一方、こうしたハード面だけでなく、ハード・ソフト一体型の「流域治水」の実践が全国的に進められている。本発表では稲戸井調節池を類似する遊水地などと比較し、ダムカードなどの「公共配布カード」の配布や見学ツアーの実施状況を調査した。この結果、稲戸井調節池では公共配布カードの配布や見学ツアーが行われていないことが明らかになった。したがって、稲戸井調節池を活用したインフラツーリズムの取り組みは限定的な状況であることが明らかになった。この結果を踏まえ、既存の公共配布カードを分析して、稲戸井調節池や利根川に関するカードを作成した。また、親子を対象とした稲戸井調節池や利根川の見学ツアーを提案する。このような取り組みにより市民の防災意識を向上させることを目指す。

 

32 小菅村における企業・行政・住民のつながり   -高齢化が進む地域の振興に向けて-

  原田樹奈・雨宮有里奈・小宮山和花 (山梨県立都留高等学校)

山梨県の小菅村では、人口700人未満という小規模かつ、高齢化率47%の超高齢化社会でありながらも、新規参入の企業活動が活発であり、地域の魅力を活かした観光が盛んである。そこで本研究は、他地域と比較した上で、小菅村の地域と企業、住民とのつながりを基軸に、小菅村の地域振興における固有性を明らかにすることを目的とした。研究方法としては、特化係数を用いて県内他地域と比較した上で顕著な経済的特徴を分析し、さらに小菅村内の企業にインタビューを行い比較と考察を行った。さらに他市町村へのメール調査をもとに、小菅村の強みを分析した。結論として、小菅村には、村の課題に応じた企業誘致と、村政と住民との強い関わりがあり、東京都との近さという立地を活かした経済活動を行えるという特徴が明らかになった。以上から、過疎化・高齢化が進む地域における振興への視点として、企業誘致と住民との関係づくりの重要性を示唆として得た。

 

33 郡内織を広めるには~機織り技術の継承と西桂地域との関連から~

  朝田優奈・小林朋笑(山梨県立都留高等学校)

山梨県の西桂町を含む郡内地域では、郡内織という固有の織物産業が栄えたが、担い手不足や知名度の低下から、現在生産量は減少の一途を辿っている。そこで本研究では、西桂町を中心とする郡内織の調査と交流を踏まえ、再び郡内織を活性化させるための提言を行うことを目的とする。研究方法として、郡内織の特徴に関する文献調査を行い、統計から特に単価が上昇した製品カテゴリーを明らかにした。また、西桂町内の郡内織の事業所と、西桂町役場へインタビューを行い、需要や知名度の現状、担い手不足などの課題が示された。また、全国的に人気な今治タオルと比較し、ブランド化を見据え、独自のロゴマークとパンフレットを作成した。これらを踏まえ、西桂町役場を訪問し、ロゴマーク、郡内織の生地をバスやローカル線の座席に使用するなどの提言を行い、パンフレットの町内の観光施設への設置許可を得るなど、行政と協働して郡内織の活性化への提言を行った。

 

34 2011年以降の自然災害や疫病の対応に用賀駅周辺の地域コミュニティが果たした役割

  田後樹里・阿部風雅・岩上奏汰・ 松原優希(駒澤大学高等学校)

世田谷区用賀駅周辺の地区の特徴として、商店街組合や街づくり協議会が災害への対策や街づくりに強く関わっている点が挙げられる。町会が発行する防災マップも存在する。そこで私たちは、用賀商店街組合や、実際にコロナ禍に商店街と連携して活動を行った住民にヒアリング調査を行い、社会混乱時に自治体、地域コミュニティが果たした役割を考察した。東日本大震災の時には、商店街が姉妹地区として陸前高田市と連携していたことをきっかけとして、商店街が主体となり救援物資が運ばれ、被災地訪問も行われた。コロナ禍では、自粛要請が出されていた際、商店街内のテイクアウトを可能にした店を、用賀地域に在住している女性がSNS等で広める活動を商店街組合と連携して行っていた。またこの女性は地域のゆるキャラとコラボしたPRも行った。どちらの活動も、地域の自治組織がしっかりしていることが、活動の実現に寄与していることが明らかになった。

 

35 東京都近郊の駅の地価に住みやすさが及ぼす影響の考察

  渡邊優輝・吉野僚真・濱田康平(駒澤大学高等学校)

私たちは住民のもつ「住みやすさ」の意識と地価の関係について考察するために、世田谷区三軒茶屋駅周辺と三鷹市吉祥寺駅周辺の2地域の住民に対してアンケート調査を行った。これらの駅は、新宿駅や東京駅と言った主要な都内の駅へのアクセスの時間がほぼ一緒であり、停車する路線数も同じであり、交通の要所であるという共通点がある。一方で、吉祥寺は住みやすさランキングで一位なのに対して、三軒茶屋はランキング外となっている(大東建設, 2024年5月15日発行)。一方、2024年時点で、吉祥寺の地価は190万6047円/m2であるのに対して、三軒茶屋駅に地価は118万5916円/m2であった。私たちはこの地価の違いを生み出している要因として「住みやすさ」という要素があると仮説を立てた。そして、その仮説を検証するために、それぞれの地域で、「住みやすさ」と感じている要素の違いについてと、「利便性」についての意識調査について、住民100人を対象に行った。(文字数超過)

 

36 利用者の違いが映しだす都市公園の役割の違い〜駒沢公園と砧公園を事例に〜

  原悠輔・上村悠・小林倖也・市村大地(駒澤大学高等学校)

私たちは、都市公園が果たす役割の違いを考察するために、駒沢オリンピック公園と砧公園の利用者や機能の違いを調査した。まず、公園管理者に対するヒアリングと、利用者に対するアンケートを行った。管理者へのヒアリングから、イベントの種類やその頻度、災害時における活用方法を知った。利用者へのアンケートでは、年齢層や住まい、利用目的、利用頻度、さらには公園でのイベントへの参加の有無を調査した。さらに、地元住民を対象としてインタビューを行い、その公園のイベントへの参加や災害時の活用方法についての認知度を調査した。駒沢公園周辺に住む方々の7割が避難所としての機能を持つこと、その防災施設を認知していた。一方、砧公園周辺の方々はこれらの認知度が低かった。同じ世田谷区に立地し、規模が大きく同様なスポーツ設備や防災設備を持つ二つの公園だが、駅からの距離やイベント頻度などによってその認知度や利用のされ方は異なった。

 

37 赤坂4丁目における水害対策に関する考察~行政・住民・商業施設を調査対象として~

  秋吉佑南・三国耀・宮城沙瑛・八木橋杏夏(山脇学園高等学校)

本研究は、東京都港区赤坂4丁目周辺の地域住民と行政の水害対策の乖離を無くし、相互のコミュニケーションを向上させる改善策の検討を目的としている。まず、水害対策の意識について、対象地域に立地する店舗を対象に調査を行った。当地区は黒鍬谷の谷底に住宅が密集しており、谷筋を流れる大刀洗川付近で浸水の可能性が高い。調査の結果、ヒアリングを実施した住民や店舗から①災害時に取るべき行動が不明、②行政からの情報がない、との回答があった。これを踏まえ、港区赤坂地区総合支所を訪問し、現在実施している水害対策をヒアリングした。その結果、水害対策の土嚢の準備や防災マップの配布、ホームページを活用した情報発信等を実施しているが、周囲に十分に伝わっておらず、意思疎通に課題があることが明らかとなった。今後は、水害対策情報をより普及させ、水害時に地域利用者が自ら行動できるような環境作りとその方策を打ち出すことが必要である。

 

38 世田谷線100周年、鉄道でつながる想い、広がる未来

  藤田悠太・森田愛蓮・細山暖乃・遠藤愛佳・米崎遼生・藤岡帆乃梨(駒澤大学高等学校)

東急世田谷線は、世田谷区内の三軒茶屋駅〜下高井戸駅間を走る、今年で100周年の歴史ある路面電車である。現在では世田谷を唯一南北につなぐ旅客鉄道となっている。1日の利用客数は5万~6万人程度となっており、通勤・通学の足としても地元民に使われている。私たちは、路線を経営する東急電鉄、NPO法人まちこらぼにインタビュー調査を行った。現在、東京オリンピックをきっかけとして増えた豪徳寺への外国人観光客をターゲットとして、東急電鉄は世田谷線を観光電車化する経営戦略を立てている。一方、インタビューの結果、閑静な住宅街を走る伝統ある電車の変貌を、必ずしも住民が歓迎していない現状が見えてきた。そこで、私たちは世田谷線を利用する地域住民80人程度に、最近の世田谷線の変化についての意識調査を行った。発表ではこの調査結果をもとに、世田谷線がこの先、50年、100年と続いていくための、未来像について議論する。

 

39 八丈島における観光の現状と課題

  長野美月(東京都立三鷹中等教育学校)

近年の離島の観光客数は減少傾向にあり、八丈島も例外ではない。2022年の八丈島の観光客数は、ピーク時である1973年に比べて半減している。本研究は、八丈島の観光の現状を分析し、課題を考察することを目的とする。研究方法として、八丈島誌や八丈町発刊の広報誌等の資料収集、八丈空港内での来島者を対象とした聞き取り調査、島民である空港勤務者と漁業従事者へのインタビューを行った。文献調査および資料分析からは、時代の変遷により観光客のニーズの変化が窺えたほか、来島者の聞き取り調査からは、島内の交通手段や商店などの生活インフラの制約が課題として聞かれた。一方で、島民からは、高齢化が進む中での人手不足の懸念、島の自然を愛する声が聞かれた。島民が島の姿を変えることを望まない中において、観光客のニーズも叶えるために何ができるのか、他の離島の先行事例を参考に、構想することが重要である。

 

40 稼がない観光を通じた地域振興に関する提案 ~つくば霞ケ浦りんりんロード周辺地域を事例として~

  阿瀨遥陽・阿部蓮・牧祐惺(江戸川学園取手高等学校)

茨城県は観光振興基本計画で2025年の観光消費額4000億円を目標にしているが、その根底にあるのは稼ぐ観光の考え方である。都道府県魅力度ランキング最下位を2009年から11度獲得している茨城県だが、だからこそ観光産業で稼ぐという考え方に頼るのではなく観光資源の価値を別の視点で捉えて、活用していくことが必要だと考える。本研究では、茨城県南部に位置するサイクリングロードであるつくば霞ケ浦りんりんロードが稼ぐ観光からの脱却を図る起爆剤となることを目指し、現在日本では6か所あるNCR(ナショナルサイクルルート)の訪れやすさ・宿泊施設の数などを設定した基準により点数化し、比較することによってりんりんロードが持つ価値について整理する。そして、りんりんロードを地域ブランドとして開発していくことがシビックプライドの向上や観光客や移住者を呼び込み、長期的な周辺地域の活性化に繋がることを目指す。

 

41 埼玉県の「氷川神社」の分布に見る防災

  鈴木直二郎(埼玉県立浦和高等学校)

日本は自然災害が多く、特に気象災害は地球温暖化に伴い激甚化・頻発化が予測されている。本研究では、洪水の危険性が高い地域といえる埼玉県をフィールドに、県内に多く鎮座する氷川神社の分布と洪水被害の関連を調べた。調査では県内の他の神社と洪水の指定避難所を比較対象とした。氷川神社はほとんどが県南の荒川流域に分布し、洪水予報河川から比較的遠い場所に位置している。調査の結果、氷川神社は県内の他の神社に比べ洪水浸水想定区域外に多く分布し、浸水深ランクにおいても分布に有意な違いが見られた。また治水地形分類図上で、洪水被害に強いといわれる段丘面や微高地に多く分布していることがわかった。これらの結果から、氷川神社は県内の他の神社に比べて洪水被害に強い場所に多く鎮座していることが確認できた。氷川神社への防災倉庫の設置などで、氷川神社を地域コミュニティの防災拠点として活用できるのではないかと考える。

 

42 大都市圏郊外のフードデザート問題 ―群馬県太田市と埼玉県上尾市を事例に―

  小田島右京(埼玉県立浦和高等学校)

私の祖父母が住む群馬県太田市はいわゆる車社会であり、祖父母はそれぞれが自分の車を所有している。しかし今日では、地球環境保護の観点や高齢ドライバー等の問題から、自家用車を持たずとも生活できるまちづくりが求められている。そこで本研究では公共交通機関の充実度と、居住に必要不可欠だと考えられるスーパーマーケットの分布を調べ、郊外のフードデザート問題について埼玉県上尾市と群馬県太田市を事例に考察した。調査の結果、太田市は路線バスの充実度が上尾市に比べて非常に低く、スーパーマーケットへのアクセシビリティが低いこと、市内の人口分布にばらつきがあることが明らかになった。以上のことから、まずは居住者は多いが公共交通機関やスーパーマーケットの充実度が低い地域に公営のバスを運行し、長期的には人口を集約してコンパクトシティを目指すことで住みやすいまちの形成につなげることができると考える。

 

43 小松市における公共施設の老朽化対策の検証

  松本 直己・安中 梨里子・阿部 希咲・井須 綾音・中川 優奈・宮崎 碧(石川県立小松高等学校)

昭和40~50年代の人口増加期に建設された多くの施設は、地方の厳しい財政下では修復・保全が困難であり、民間活力や統廃合による効率的な管理が必要とされている。小松高校が位置する石川県小松市においても、公共施設の約50%が築30年以上経過しており、人口減少や少子高齢化が進むなか、持続可能な施設運営が課題となっている。本研究では、小松市役所行政経営室の公共施設担当の方への聞き取り調査や実際に施設を訪問して実態把握を行い、利用者ニーズの把握、民間譲渡や統廃合の可能性を検討した。また、旧小松市立西尾小学校を交流施設へ転用したケース、小松市に近い能美郡川北町の住宅地造成・医療助成策などを参考に、民間との連携を軸とした公共施設の老朽化対策について考察した。結果、施設の譲渡後支援や統廃合の推進が有効であるとする立場の小松市の方針を踏まえつつ、民間活力を活かした新しい公共施設の運営モデルについて提案した。

 

44 生き物との共存方法〜絶滅と都市~

  北野暖奈・小村咲和(追手門学院大手前中高等学校)

本研究は人間と他の生き物との共存について「絶滅」と「都市」の二つの観点を研究対象とし、過去と現状を調べ共存する方法についての考察を目的とする。絶滅には自然現象と人間活動によるものがあると知った。調べていくと、人間の活動による絶滅は「無意味な絶滅」であるという結論に至ったことが研究の出発点となった。①外来種②自然保護③検疫の視点で絶滅を食い止めることを考えたが、生き物の絶滅が食い止められたとしても環境が変わらなければ共存する事は難しい。よって共存を実現化させるために、「都市」に着目した。その一つとして大阪市の緑被率と8月の気温変化を調べ、緑被率の減少に伴い気温は上昇傾向にあると気づいた。よって都市の緑化を進めることで気温上昇を食い止められると考察した。この上で緑被率を増やすには、空き地を有効活用したミニ森林づくりを提案する。さらにSDGsの15番に貢献が出来れば良いと考えた。

 

45 中山間地域での農業における課題および解決策

  青木 悠夏・内田 有美・山下 暖(鷗友学園女子高等学校)

本研究は中山間地域での農業が抱える問題点に対する解決策を提案することを目的に、山梨県を対象とし、公的機関のHPでの情報収集及び山梨県のブドウ農家への聞き取り調査を行った。現在日本の農家の約4割が中山間地域で就農しており、斜面等の特有の地形を生かし、山梨県のように特産品を産出している地域は数多くある。しかし、特殊地形故に大型機械の導入などによる省力化が難しく新規就農者を獲得しにくい傾向にある。今回、私たちが解決方法として提案するのは一部の作業において遠隔操作できる機械を導入する事だ。これにより、畑に行く回数を減らす事が可能となり、かつ従来のように人が機械に乗る必要がなくなるため小型化も期待できる。しかし、実際にこの方法を導入するとどのような課題が生じ、どんな対策が望まれるのか。ブドウ農家の方への取材を通して学んだ現場の声を軸に考察した。

 

46 多摩川中流域の水生生物と工事の影響

  可瀬光(東京農業大学第一高等学校)

2024 年 7 月ごろ多摩河原橋周辺でトンボや抽水植物が繁茂しているワンドを見つけたが、その後工事によってそのワンドはなくなってしまっていた。それにより多摩川にどのような水生生物が分布しているのか工事にどのような影響があるのか気になり、現地に実際に赴き多摩川の状況や生息する水生生物の種類や数を調査した。調査の結果として多摩川の岸の護岸の範囲や工事がどのように行われていたのか、多摩川の建造物における生物への配慮、多摩川でどのような水生生物が分布しているのか、多摩川のほかのワンドはそれぞれ全く違った環境があることが分かった。また、護岸工事や外来種の繁茂により抽水植物などによる岸の植生が貧弱になったことによってトンボなどの水生生物の減少が起きているのではないかと考えた。洪水などの被害を減らすためにも植生が大切だと考えた。以上のことより、環境に配慮しつつ災害の対策をすることが重要だと感じた。

 

47 渋谷のまちの個性とは?~没個性化した渋谷を個性にするには~

  高田梨央・成田怜・寺川友紀乃・長塚咲幸(鷗友学園女子高等学校)

本研究は、渋谷のまちの個性を明らかにすることを目的として、渋谷のスクランブル交差点前を訪れた外国人への聞き取り調査を通して考えた。その結果、外国人から見た渋谷の魅力はスクランブル交差点を中心としたキラキラした雰囲気にあることがわかった。一方で、文化的な魅力を伝えるものやコミュニティが欠けているという指摘もあった。渋谷は若者のまちからオフィス街へと移行していく中で、ターゲット層があいまいになり、まちとしての個性が失われ、没個性化しつつあると考えられる。私たちは、渋谷を個性あるまちに変えることが必要であると考え、渋谷駅周辺をエリアに分けて、エリアごとに個性を出すことを提案する。

 

48 越谷市大袋地域の元荒川蛇行の歴史からせんげん台の冠水被害を視る

  浅田晴輝(埼玉県立春日部工業高等学校)

 埼玉県東部には多くの河川が流れており、古くから水害常襲地帯として数々の水災を受けてきた。現在では、首都圏外郭放水路などの水害対策のおかげで、大規模な堤防決壊は起こっていない。その一方で、いまだ水害に悩まされているのが越谷市せんげん台周辺である。ここは豪雨のたびに内水氾濫が発生し、街一帯が浸水する冠水被害が発生している。この原因は蛇行していた元荒川旧流路の自然堤防が水を集めているということにある。 本研究は、旧流路の歴史から現在の冠水被害への変遷を集約し、今後の水災対策について言及したものだ。巡検や資料館等の調査の過程で、東京東部の上水道整備計画が大袋地域の水害の誘因となったことや、他地域の蛇行が解消されなかった事例などの多くの発見があった。大袋地域では、現在も住宅分譲や道路開発が進んでおり、対策は急務である。私は、敢えてこの忌み嫌われることの多い蛇行跡を活用した冠水対策を提案したい。

 

49 原発被災地の復興と同地への移住に対する意識について 〜福島県浪江町の事例〜

  森 悠生(洛南高等学校)

原発事故の被災地の浪江町では多方面で移住者を増やすためのまちづくりが進んでおり、また都市部の人の約30%が地方への移住を希望しているというデータもあった。しかし被災地の人口が震災前の水準に回復していない事実もあり、その理由について疑問を持った。そこで本研究では、京阪神の中高生414人を対象に被災地や地方移住への考えを明らかにするべくアンケートを実施した。その結果浪江町への移住を希望する人数は単に地方としたときの半分以下になったことから、事故の影響に対し不安を抱いていると考えられる。一方で浪江町の未来については肯定的な意見も多く、浪江町の移住政策が評価されているとうかがえた。この研究によって、人々が浪江町への移住を手放しに拒否しているのではなく、魅力を感じる点もある上で移住しないとしている人が多いと考察できた。今後は、浪江町への移住を諦めている理由が何かをより明らかにしていきたい。

 

50 東京と大阪の都市計画と地形の影響

  吉村綾乃(東京農業大学第一高等学校)

東京都と⼤阪府は、それぞれ異なる地形的特徴が都市計画に影響を与えている。東京都は平坦な地形に多くの川や湿地が広がり、⼤阪府は平野部に豊富な河川を有する。どちらも⽔辺と密接に関わりながら発展してきた歴史があり、災害リスクへの対応が都市計画に組み込まれている。災害対策として両都市は、埋⽴地の強化や耐震基準の向上を行っている。さらには、津波や洪⽔対策として整備してきた。また、両都市は急速な都市化による⼈⼝密度の増加、交通渋滞、過密住宅地といった共通の課題にも直⾯している。両都市の地形図や過去の災害事例、防災インフラ資料を分析し、災害リスクと都市計画の関係を⽐較し両都市の違いと共通点を把握することで、他都市にも応⽤可能な知⾒を得ることができた。地形を理解した都市計画は、災害への備えや持続可能な都市づくりに貢献し、防災と開発の両⽴が都市発展の鍵となると考えた。

 

51 地理からみるアメリカ〜新大統領が目指す世界を考える〜

  秋山達彦(東京農業大学第一高等学校)

Donald J Trump氏はパナマ運河、台湾、グリーンランドを巡って力による現状変更も辞さないような発言を繰り返している。2025年1月に同氏は第47代アメリカ大統領として就任し、これらの地域の不安定化は進んでいる。本稿では、アメリカの領土拡大、海洋進出および安全保障にとってこれらの地域において如何に重要であるかを文献調査をもとに分析した。こうした地理的状況から国同士の関係を考察したのが地政学と呼ばれる学問である。地政学の始祖として挙げられるマッキンダーは「ハートランド理論」、シーパワー・ランドパワー理論を提唱した。シーパワー・ランドパワー理論からアメリカは中国やロシアといったランドパワーの覇権国家成立を抑え、太平洋などの海洋進出することを妨げ、ウクライナにおいては西側と東側の緩衝地帯を作るという目的があらわになった。以上からアメリカは地政学に忠実に基づいて行動していることがわかった。

 

52 日本と中国のファッションインフルエンサーによる情報発信の特徴及び戦略に関する研究

  葛知萌(東京学芸大学附属国際中等教育学校)

中国は、経済発展による地域差が大きく、オンライン市場の拡大により、消費者層が多様化している。本研究では、インフルエンサー・マーケティング戦略に注目し、日本と中国のインフルエンサーによる動画投稿をテキストマイニングし、さらに企業やインフルエンサーへのインタビュー調査を通じて、効果的な言語表現の構造や販売戦略、消費文化を比較・解明した。その結果、両国のインフルエンサーはいずれも商品の詳細情報を提示し、消費者視点から自身の体験を共有していることがわかった。日本のインフルエンサーは、特定の商品名や視覚的要素を用いて主観的に情報を伝え、「可愛い」という形容詞を頻繁に使用している。一方、中国では、商品名の使用が少なく、日常的な言葉遣いや視覚的にイメージしやすい表現を取り入れる傾向があった。本研究は、日系企業の中国進出とマーケティング戦略の構築に一助となる。

 

53 Google Earth Engineを用いた冬季オリンピック開催の最適地の提案

  塩谷瑠唯(東京学芸大学附属国際中等教育学校)

本研究では、冬季オリンピックの最適な開催地をGoogle Earth Engineを用いて考察した。オリンピック憲章に基づき、地理的・社会的・経済的の3つの観点から条件が最も当てはまる場所を分析した。競技場や選手村の建設、天候の影響、集客性などの様々な条件を考え、文献調査も踏まえて適切な数値設定をし、条件が全て当てはまる場所を抽出した。データはGEEにある積雪深、標高、傾斜度、降水量、人口に加え、Open Airの国際空港とIMFのGDPを用いて検証した。結果として、スイスのシュヴィーツ、フランスのオートサヴォア県、イタリアのトリノ、カザフスタンのアルマトゥイ、日本の札幌が最適な地域であるということがわかった。過去の冬季オリンピック選定地と比較した結果、今回最適な開催地として割り出した地域の多くはこれまでの選定地や立候補地の半径50km圏内に入っているため妥当性が高いと評価した。

 

54 Google Earth Engineを用いた日本における最適のキャンプ地の選定ー降水量・標高・夜間光・アクセシビリティを考慮した分析ー

  北見愛(東京学芸大学附属国際中等教育学校)

本研究は、近年のキャンプ人気の上昇に伴い、国内の星空が見えるキャンプに適した地域を客観的に評価することが目的である。研究にはGoogle Earth Engine内の、降水量・標高・夜間光・都市化度のデータを使用した。星空が見えるキャンプに適した場所を、降水量が少なく、標高1600m以上、夜間光が少ない、かつ都市部から遠すぎない地域とし、これに当てはまる地域を示すレイヤーを作成した。結果、福島市浄土平天文台・県立ぐんま天文台・野辺山宇宙電波観測所の他に、天体観測スポットである美ヶ原高原・高峰高原・蔵王坊平高原がレイヤー内に含まれていたことから、条件設定は適切であることが確認された。加えてレイヤー内の岩手県釜石市甲子町・福島県南会津郡下郷町・長野県木曽郡上松町は、周辺にキャンプ場が少ないため、新たなキャンプ場の建設地として提案する。

 

55 千葉県我孫子市におけるまちおこしの現状と課題ー白樺派カレーを切り口にしてー

  カトラプス万梨花・今井咲空・玉澤心晴(専修大学松戸高校)

カレーは日本ではなじみの深い料理の一つだが、地域によって使われている食材や味が異なる。発表者らは、そのような地域ごとの違いを活かしたご当地カレーがあることを知った。そこで、発表者らは、我孫子市のご当地カレーである白樺派カレーに着目し、それを切り口に同市のまちおこしの現状と課題について調査を行った。同市は千葉県北西部に位置し、利根川と手賀沼に面した自然豊かな地域である。その特性を活かし、野菜の生産や鰻漁が盛んである。だが、近年は人口が減少傾向にあり、それに伴い少子高齢化が顕著である。同市はこのような課題を解決するため、様々なイベントを行っているものの、概して認知度が低い状況にある。聞き取り調査の結果においても、同様の傾向が見られた。本研究では、同市のまちおこしの現状と課題について明らかにするとともに、注目度の向上という観点から課題の解決策について具体的な提案を試みることとする。

 

56 地下鉄直通運転開始における駅周辺部の住宅地の変化 〜東武スカイツリーライン 南栗橋駅と獨協大学前駅(旧松原団地駅)と東武東上線 森林公園駅と上福岡駅周辺を事例に〜

  平野賢吾・中村優伽・舩津由衣・吉岡陽葵(獨協埼玉高等学校)

本研究は、地下鉄直通運転開始における駅周辺の住宅地の変化を考察することである。対象地域としては、東武スカイツリーライン、東武東上線で二駅ずつ計四駅取り上げる。南栗橋駅は、東京メトロ半蔵門線と日比谷線の終着駅となることが多く,森林公園駅は東京メトロ有楽町線と副都心線の終着駅の一つであり、それぞれ車両基地があることから類似性の高い駅であると判断した。獨協大学前駅と上福岡駅は駅周辺に団地が形成されている。調査方法は、地理院地図や今昔マップ、東武鉄道100年史、各自治体のHPを用いて、地下鉄直通運転開始前後の住宅地の広がりの変化を地図化し、人口・乗降者数も考慮した。各駅周辺の人口の大きな変化はなく、住宅地は駅周辺に広がっているが、人口や乗降者数が著しく増加するなどといった変化は見られなかった。地下鉄の直通運転の開始は、駅周辺の人口増加にあまり影響を及ぼさないということが分かった。

 

57 エネルギー政策の今後 〜福島県浪江町の再エネ推進政策を事例に〜

  佐藤光希(洛南高等学校)

原発事故が起きた浪江町では水素や太陽光を用いた再生可能エネルギー事業が盛んに行われている。浪江町の再エネ事業について調べることで、今後導入が進む再エネの可能性や課題について明らかになるのではないかと考えた。まず本研究では、浪江町の事例に関するアンケートを関西に住んでいる中高生を対象に実施することで、世間での認識を明らかにする糸口が掴めるのではないかと考えた。結果として、再エネそのものの認知度が低かったが、原発への懸念を含め現状のエネルギー政策に課題を感じている人も多く、7割弱が再エネについて今後も供給割合を増やすべきだと答えた。一方で再エネに対して不安定な発電量などの懐疑的な意見も多数見られたことから、再エネ導入が進まないことに違和感を覚えている人は少なくなかった。今後多くの都市でエネルギー政策の見直しが進められるはずであり、浪江町の事例を効果と課題の両面から検証する必要があると感じた。

 

58 東京都新島村式根島における移住者の実態と移住促進に向けた提案

  久我佳乃子(東京都立三鷹中等教育学校)

新島村式根島は東京諸島の中で10年以上前から居住している人の割合が最も大きく、移住者が相対的に少ないという現状がある。そこで、式根島への移住者に関する課題を明らかにし、その解決策を考察することを目的として本研究を行った。研究方法として、文献調査、観光協会などへの聞き取り及び移住者を対象としたアンケート調査を行った。調査では、人手不足となっている商店や民宿が多く、繁忙期に短期のアルバイトを募集している商店もあるということが分かった。また、移住した要因の多くは結婚で、回答者の全員が結婚相手の実家を居住地としていることが分かった。他にIターン者、Uターン者、転勤で移住してきた人もいたが、多くが知り合いの島民を頼りに居住地を決定していたことが明らかとなった。そこで、移住したくても住居が見つからないといった理由で実現が難しい人に対して、空き家を活用するといった支援を強化するべきだと考察した。

 

59 災害下における宗教や思想、身体的要因から配慮を要する訪日・在日外国人への対応のあり方

  白須悠華・木村結衣・杉田光優・平原くるみ(京都教育大学附属高校)

本研究では、各種統計の調査(法務省出入国在留管理庁による在留外国人数について,自治体が行っている外国人住民に向けたアンケート調査報告書など), 自治体や外国人に対する災害支援を行っているNPOでの聞き取り調査から,災害時における訪日・在日外国人への対応を評価し,改善策を提案する。今日,日本国内において災害発生時の訪日・在日外国人への対応は公的機関が行っているが,言語の壁や文化圏の違いから災害情報の周知や避難所運営などで課題が生じていることがわかった。特に宗教や思想,身体的要因から配慮を要する訪日・在日外国人への対応については,出来ているとは言い難い。災害発生時に避難やその後の対応に困窮する外国人の援助を行うNPOも存在するが,自治体との連携など課題も存在する。そこで,訪日・在日外国人に向けて,平常時から危機意識の向上に働きかけることをねらいとして,災害発生時の対応を解説する動画を制作した。

 

60 「快適」な自転車ルートを作成する方法

  河野伊吹(東京都三鷹中等教育学校)

近年、自転車の活用が盛んになっている。しかし、自転車に対応するナビゲーションシステム(Google Maps等)の整備は不十分である。本研究では、「快適」を「高低差が小さい」、「右左折回数が少なく迷わない」、「安全な自転車レーンや広い歩道がある」と定義し、GISを用いたより「快適」な自転車ルートの作成方法とGoogle Mapsの課題点を明らかにすることを目的とした。「地理院地図」や「自転車大好きマップ」、「グローバルヒートマップ」を用いて道路の高低差やサイクリニストからの評価を取得し、道路の種類や地理的特性を把握することで「快適」なルートを作成した。そのルートとGoogle Mapsが作成したルートを比較した結果、Google Mapsのほうが高低差の多いルートを走っている点や自転車通行が可能な橋等の情報が不十分で迂回の多いルートを示しているという問題点が浮き彫りとなった。

 

61 千葉市緑区における買い物難民減少に向けた調査と方策の提案 ~アンケートやGIS、時間地理学からの分析に基づいて~

  鳴海ジロー(千葉県立千葉高校)

近年、高齢者が満足に買い物に行けず、日々の食材確保に苦労する「買い物難民」問題が深刻化している。本研究では、千葉市における買い物難民の実態を調査し、その解決策を提案することを目的とした。まず、高齢者を対象としたアンケート調査を実施し、地域ごとの課題を分析した。その結果、地理的要因の影響が大きく、特に千葉市緑区において問題が深刻であることが明らかとなった。GISを用いた分析では、高齢者人口が多い一方で交通インフラが不十分であり、スーパーから遠い地域が存在することが確認された。この地域を対象とし、買い物難民の支援策を検討した。具体的な方策として、現状の施策を調査し、フィールドワークを行った結果、「買い物バス」の運行が有効であると判断した。さらに、採算性や持続可能性を考慮し、時間地理学の視点を取り入れた分析を実施し、より多くの買い物難民を支援できる持続的な運行形態を提案した。

 

62 自治体の自動運転バス運行における費用面の考察と課題改善 ー非集計モデルを用いたプログラム開発を通してー

  松尾泰成(千葉県立千葉高校)

昨年度全国の自治体への聞き取り調査を行い、非常に多くの自治体が自動運転バスの運行に関する予算の確保や、高額なイニシャルコスト、車両の更新費用を問題点と見ていることが分かった。実際、多くの自動運転バスの運行は補助金の支給を受けて成り立っており、その将来的な採算性や持続可能性は不明瞭である。そこで新しい交通施設が導入された場合の需要予測に対応可能な非集計モデルのもとで、現実の行動結果であるRPデータと自動運転バスが走った状態でどの選択肢が望ましいかを調査したSPデータを組み合わせ、個人ごとの特性も考慮して自動運転バスの利用状況を推定するプログラムの作成を行った。これらのデータを様々に変更することで自動運転バスが走るルートごとの利用状況の変化や、サービスのレベルによる選択交通手段の違い、自動運転バスに対する受容性が利用状況に与える影響などの考察を通して、理想的な自動運転バスの運行について考えた。

 

63 アイヌ語由来の地名の拡散における日本海交易の影響の有無に関する考察

  戸田遥人(千葉県立千葉高校)

地名は、地方によって様々な特色を持ち、固有の風土や環境について考える際に有用性の高い手段となる。アイヌ語由来の可能性がある地名の多くは北海道に分布するが、東北地方など全国に点在する。本研究では、北海道・東北地方と本州の間で行われた日本海交易の地名の拡散への関与について調べるため、地理院地図を用いて、東北地方に特有の地名「ヤチ」の分布を調査した。また、アイヌと和人の交流に関する文献調査を行い、東北地方の地名が日本海交易によって拡散したと考察した。「ヤチ」の分布の南限であることと、アイヌ語で「川」を意味する「ナイ」という語が含まれる地名が点在することから、高知県内の遺跡の発掘調査の資料を参照し、日本海交易の影響の存在の裏付けを試みた。その結果、高知県内の当時の遺跡からは東海地方の産物は出土していたものの日本海側の産物は出土しておらず、日本海交易の影響が高知県域まで及ぶことはなかったと考察した。

 

64 感染症の患者数の推移と地域差-新型コロナウイルスとスペイン風邪の比較-

  石戸谷咲帆(品川女子学院)・池田凜羽(國學院大學久我山高校)

2019年に発例した新型コロナウイルスが,わずか数ヶ月で世界的なパンデミックとなったことと同様,スペイン風邪は1918年に発例しわずか数ヶ月で世界的なパンデミックとなった。主な感染経路が明らかとなり,今となっては対症療法も確立された感染症だが,国境を超える感染経路ではなく,国内での感染経路や感染の地域差については明らかにされていない。そこで本研究では,2つの感染症について,都道府県ごとの罹患率からその前月比を用いて比較した。新型コロナウイルスは首都圏に感染者が急増し地方へと伝播している一方,スペイン風邪は西日本で爆発的な感染が進み東進していた。これは,海外と国内との人の移動の違いによると考えられる。また,感染のピーク前後を比較すると,どちらの感染症も西日本で早期に収束していることが明らかとなった。地域ごとでの習慣によるものであるのか,もしくは医師の西高東低問題に起因しているのかを考察した。

 

65 デジタル×リアルで解き明かす世界農業遺産 高千穂郷・椎葉山地域の「山腹用水路」の特異性

  上埜五喜・椎葉梅嘉・坂本朋佳(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)

世界農業遺産(GIAHS)に認定されている「高千穂郷・椎葉山地域」(宮崎県北5町村)において,その構成要素として重要な棚田の景観を支える長大な「山腹用水路」を対象として,GIS活用とフィールドワーク,文献調査等を組み合わせた様々な分析により,その「山腹用水路」の特異性を明らかにする。宮崎大学農学部竹下准教授との協働により,山奥の水源から数十kmにわたって延びている「山腹用水路」が,どの程度曲がりくねっているかを示す「水路迂回度」の計算を行うことで,平野部の用水路との設計思想の明白な違いを明らかにした。また,現地調査と文献調査により,明治~昭和初期にかけて建設に携わった先人の知恵や努力の存在が浮き彫りになった他,GISを活用して地質図と重ね合わせることで,阿蘇山の火砕流台地と「山腹用水路」の間には密接な関係性があり,それが地域内における農業景観の違いを生み出していることを明らかにした。

 

66 現地調査に基づく伊豆諸島三宅島大路池の水質

  児嶋悠斗(市川高校)

大路池は伊豆諸島三宅島南部に位置する約2500年前の噴火口にできた淡水の湖沼である. 本研究ではマールへの水の供給システムを解明し,地質構造を明らかにすることを目的として,2024年1月17日と7月31日に調査を行った.調査は大路池の池畔6か所で気温,水温,pH,電気伝導度,Na⁺濃度の5項目を測定し,気温と水温の定点観測を複数地点で行った. 結果,1月17日の調査では池の北西部の1地点で他の5地点に比べどの時間帯も約1~2℃水温が高く,pH,電気伝導度,Na⁺濃度の値が低くなった.しかし7月31日の調査では6地点全てにおいて水温などで同じような数値の分布となった. このような結果となった仮説として,1) 9世紀に三宅島中央部に位置する雄山から大路池まで流れ出た溶岩流のクリンカー部を地下水が通り大路池に流入した,2) 風が大路池の湖面で吹いていて水の循環が発生した,が考えられる.

 

67 武蔵野市における食品ロスとフードバンク活動

  福田 悠人・菅原 亮仁・本橋 優斗・園田 武俊・内山 こころ・加藤 詩織・清水 莉穂・今城 翔悟・山形 菜々美・黒川 璃子 (成蹊中学高等学校)

武蔵野市におけるフードロス問題について、武蔵野市ゴミ総合対策課と市民による有志団体「フードバンクむさしの」を調査した。武蔵野市におけるフードロスの現状と市として行っている対策及びその効果について対策課に尋ねたところ、市は食をテーマとしたイベントや出前授業など包括的活動を行っているが、他地域より食品ロスの量が多いとの見解。武蔵野市は高所得層が多いゆえに食品廃棄に対する意識が低いと推測した。食品廃棄油回収等、企業活動のPR推進を提案したが、一企業を優遇する活動は難しいとのこと。フードバンクむさしのには、寄付目的で購入した食品を持ち寄る人もいて、フードバンクに持ち込まれた食品= 食品ロス削減ではないことが判明した。食品ロス削減には「使われずに余った食品」の寄付量を増やしていく必要性がある。ポスターでは、食品ロス削減に向け、特に高所得者層が多いという武蔵野市の地域的特性を踏まえた対策を提案したい。

 

68 地図アプリケーションサービスのストリートビューを用いたブロック塀防災研究の可能性

  畑尻佳澄(市川学園市川高等学校)

大阪北部地震で話題となったブロック塀の倒壊は対応が今もなお不十分な現状である。そこで現在のブロック塀の分布状況を把握する方法を模索した。先行研究では実際に道を歩いてブロック塀を探す実地調査を行っているが長時間の調査が必要となる。そこで本研究ではGoogle mapのストリートビューを活用する方法を提案する。実際に特定範囲のブロック塀調査を行い、その際に明らかになったメリット・デメリット及び作成されたマップの有用性を検証した。また、作成したマップ範囲の一部において実地調査を行い比較した。その結果、本研究の手法は実地調査と同様のレベルでブロック塀の抽出が行えるとの結論を得た。なお、防災においてどのような塀までをブロック塀と定義するのかという問題がある。多くの先行研究においても扱いは統一されていない。そこで化粧塀や万年塀を含む塀の抽出結果も報告し、ブロック塀災害の新たなハザードマップを提案する。

 

69 多摩川流域の砂利穴について

  大石和幹・外山椋太・伊藤沙羅・辻澤朋弘 (都立立川高校)

多摩川では昔から河原で砂利が採取され、産業や震災の復興に使用されて砂利が減少した結果、昭和39年に採取が禁止された。そこで沖積低地などの「陸砂利」に目が向けられ砂利穴と呼ばれる砂利採取地が数多く形成された。私達はそのような埋立地の地盤が地震の際、危険ではないかと考え調べたところ、東日本大震災の際に茨城県の砂利採取跡地で液状化が発生した例など、複数の被害がわかった。また、航空写真や古地図から多摩川流域の砂利採取地を複数個所見つけ、ごみや廃棄物が埋められたりしたこと、跡地に学校や住宅等が建てられたことが判明した。フィールドワークでは地形的には判断しにくいところが多かった。地盤強度を示すN値が顕著に低い場所も発見したが、ハザードマップや地理院の土地条件図等には記載されていないことがわかった。多摩川流域に砂利穴跡地がたくさんあり、地震時に液状化する可能性があることはもっと知られるべきである。

 

70 岡山県玉野市におけるサイクルツーリズムの現状と課題

  神志那世有乃・工藤柑奈・山本佳弥・大野仁子(岡山県立玉野高等学校)

本研究の目的は、岡山県玉野市におけるサイクルツーリズムの現状と課題について明らかにすることを目的とする。本研究では、玉野市が発行するサイクリングマップに掲載されたモデルルートの走行調査を行うとともに、玉野市観光協会、玉野市商工観光課、デスティネーションせとうちに対して聞き取り調査を行った。山がちな地形を巡るモデルルートをレンタサイクルで実際に走行してみたものの、想定された時間内で進むことができなかった。玉野市観光協会のレンタサイクルの利用数を年別で見ると、瀬戸内国際芸術祭の開催年には増加し、令和4年度には過去最大の562台を記録した。このことから瀬戸内国際芸術祭や大阪万博などの国際的イベントに目を向けたSNS連動型サイクリングイベントの開催や、観光スポットを自転車で巡るクイズラリーを企画するなど、観光客の誘致方法についてもさらなる工夫・改善の余地があるのではないかと考える。

 

 

*高校生ポスターセッションの運営に関し、一部の受付処理に誤りがあったことが判明しました。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。今後の運営においては適切な対応を行い、より円滑なセッションの実施に努めてまいります。