発表番号,発表タイトル,学校名,発表者,発表要旨
1 宮城県における水産業の変化 ~地球温暖化の影響と震災からの復興に着目して~
仙台育英学園高等学校 2年 山田菜結・斎藤瑠七・山内明仁
宮城県は全国有数の水産県である。沿岸のリアス海岸をはじめ、沖合は親潮と黒潮の潮目にあたり、多種多様な魚介類が水揚げされる生産性の高い世界三大漁場となっている。しかし昨今、これまで宮城県を代表する「サンマ」や「サケ」など、冷たい海域に生息する魚種の水揚げや養殖業の「ホヤ」が減少している。一方で、あまり見られなかった暖かい海域にすむ「チダイ」や「タチウオ」などの水揚げが増加している。近年の地球温暖化による海洋環境の変動から、宮城県で水揚げされる魚種の変化について分析した。また、2011年に発生した東日本大震災により、宮城県で営まれている漁業をはじめ、沿岸部に集積していた流通・加工に関する産業は壊滅的な被害を受けた。震災から13年が経過した宮城県の漁港と水産業の復興状況にも焦点を当て、実際に漁業関係者や宮城県職員へのアンケートやインタビュー調査を踏まえて、新たな宮城県の水産業についての展望を検討した。
2 豪雪地帯におけるコンパクトシティのまちづくりについての一考察――山形県西川町を事例に――
山形県立東桜学館高等学校 2年 鷲 洸介・佐藤光之輔
本研究では、山形県西川町のコンパクトシティをめざしたまちづくりの可能性について、町役場への聞き取り調査をもとに考察を行った。西川町の人口減少は著しく、高齢者人口割合も44.6%と山形県の中で最も高い。また、西川町は豪雪地帯であり、除雪費が町の財政を圧迫している状況である。これらの問題解決のため、除雪費と観光の観点からコンパクトシティの妥当性についての考察を行った。西川町は月山の夏スキーが最大の魅力であるため、観光の軸となる施設につながる国道・県道周辺に、T字型に居住区・公共施設の集約を行い、コンパクトシティを形成することが西川町には適しているという仮説を立てた。さらに、地区ごとの除雪距離と世帯数を町提供のデータより算出して考察を行った。その結果、除雪費の4割削減は可能だが、約3割の世帯の移住も伴うため、住民の生活に与える影響を十分に考慮した上でのまちづくりの検討が必要であることが明らかになった。
3 地方における技能実習生の生活行動の分析と検討
九里学園高等学校 3年 勝見 薫
日本に訪れる外国人や在住外国人は年々増加しており,我々との接点も少しずつ増えつつある。しかし在住外国人の偏在性は大きく,地方の外国人の割合は首都圏に比べると小さい。そのような地方における外国人が焦点を当てられる機会は少なく,その実態はなかなか明らかになっていない現状がある。対象地域である山形県米沢市においては,外国人のうち約過半数を技能実習生が占めている。このような技能実習生ももれなく可視化されにくく,何らかのコミュニティに属していない可能性があり,調査を行いその生活の実態を明らかにした。多くの実習生はさまざまな交流をもちたいと思っているが,日常生活では技能実習生以外との関わりをほとんどもっていなかった。国際交流協会のイベントに参加することもほとんどなく,地域から取り残された存在といえる。地域社会はこのような可視化されにくい外国人をも含めて共生について考え取り組まなければならない。
4 茨城県桜川市における認知症高齢者グループホームの役割
茗溪学園高校 2年 髙山悠太
現在、日本では、2000年に介護保険法制度が制定されたことをきっかけに認知症高齢者グループホームの数が増加を続けている。また、認知症の発症率・患者数も増加傾向にある。本研究では、茨城県桜川市における認知症高齢者グループホームの役割を明らかにするため、現地の5軒のグループホームへ聞き取り調査を行った。その結果、桜川市におけるグループホームは地域密着型で、市内の高齢の認知症患者を幅広い要介護度で受け入れる役割、また、患者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持に配慮し、利用者の認知症の進行を緩和する役割の2つがあることが分かった。今後、桜川市における認知機能の低下リスク該当者割合が約半数であることや、年齢層が高くなるほどリスク該当者割合が高くなっていることから、今後、桜川市内に認知症高齢者グループホームが増加していくと考えられる。
5 自転車が安全に通行できる道路とは? 〜つくば市道1017号線を例に考える〜
茗溪学園高校 2年 永山凡穂
現在、茗溪学園の自転車通学者の多くは、本校北側のつくば市道1017号線(以下1017号)の歩道を走行している。しかしこの歩道は非常に狭く、自転車が歩行者とすれ違う際には接触事故の恐れがある。現状把握のために現地調査を実施した結果、朝の通学時間帯に自転車の約96%が歩道を走行し、自転車同士でもすれ違っていることがわかった。また、本校生徒を対象としたアンケート調査を実施した結果、多くの生徒が自転車は車道を走行する法律を認識しつつも、実際には自動車への恐怖心や遠慮により歩道を走行していることがわかった。現地調査およびアンケート調査結果を基に、4つの改善策を考え、つくば市道路管理課に提案したが、全て実現不可能との回答を得た。この理由としては道路設計の段階で、自転車の走行を考慮していないことが挙げられた。そのため、次世代の都市計画では自転車の走行にも重きを置いた道路設計が重要であるとの結論に至った。
6 TX開通によるつくば市島名・下河原崎地区における土地利用の変遷と今後の交通課題
茗溪学園高校 2年 平山仁
本研究の対象地区であるつくば市島名・下河原崎地区は、つくばエクスプレス(以下、TX)の万博記念公園駅周辺に位置する。本地区は2005年TX開通以降、沿線地区として急速に開発が進められてきた。そこで本研究では、つくば市が策定した「つくば市都市計画マスタープラン2015」を用いて、本地区開発の位置づけを確認した後、本地区の発行年の異なる5枚の土地利用図を地形図やQGISを使用して作成し、TX開通前、開通後から現在までの本地区の住宅地拡大の様子を明らかにした。さらにつくば市全体の人口予測から2050年の本地区の人口構成を「若年人口の割合が低く、老年人口の割合が高くなる」と予測した。現在、この地区は端末交通手段として自家用車の分担率が高いため、今後老年人口の割合が高くなれば、車社会による弊害が起こる可能性が高いと考えた。以上のことから、本地区には、公共交通を活用した誰でも移動しやすいまちにするための政策立案が必要不可欠である。
7 千葉県野田市における近代化産業遺産の観光への活用
江戸川学園取手高等学校 2年 川田莉子
2015年に「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されたことを契機に、日本国内では近代化産業遺産に注目が集まった。千葉県野田市は江戸時代初期より醤油醸造業が盛んであり、現在でもキッコーマンの本社や工場がある企業城下町である。2007年に市内の醸造関連遺産が近代化産業遺産に認定されて以降、野田市は観光PRに努めている。しかしながら、観光客の誘致には課題が存在すると推察する。そこで本研究では、野田市の近代化産業遺産の分布と観光活用に関する課題について調査した。初めにフィールドワーク調査により、近代化産業遺産が野田市駅から江戸川河川敷にかけての徒歩圏内に分布していることが明らかになった。同時に、近代化産業遺産が企業や行政などの異なる立場の団体や個人に所有されていることも明らかになった。こうした近代化産業遺産の現状を踏まえた観光活用に向けた具体策について検討した。
8 江戸川学園取手中・高等学校における通学圏の変遷と変化予測
江戸川学園取手高等学校 1年 佐藤芽衣子・木下華綸・藤野里恵花・永井彩也香
近年の全国的な少子高齢化に伴い、日本全体で中学校や高等学校の生徒数は減少傾向にある一方、茨城県取手市にある当校の生徒数は概ね横ばいで推移している。当校は茨城県内より千葉県側の交通の利便性が高いため、生徒の半数以上が千葉県から通学している。このことから、私立学校における生徒の通学圏の形成にあたっては、交通の利便性の影響を受けると考えられる。本研究では、初めに当校の在校生・卒業生の住所録を用いて、生徒の通学圏を示した地図を作成した。その結果、当校を中心とした半径25km圏内の一都三県から大半の生徒が通学していることが明らかになった。一方、半径25kmを超えた東京都心部や千葉県成田市、さらに半径50kmを超えた茨城県水戸市からも数十名の生徒が通学していることがわかった。以上の調査に加えて、近隣地域の人口増減推計や交通網の変化を踏まえて、これからの当校における通学圏の変化や志望生徒数の増減を予測していく。
9 なぜスクールバスは遅れるのか
獨協埼玉高等学校 2年 岩井理歩・井門真唯・植田心・柏瀬優美・金澤玲弥・末吉亜子・高山剛希・油井朔哉・横山瑛大
埼玉県越谷市にある本校の多くの生徒が利用しているバスの到着が遅れることがある。本研究はその原因を探り、本校生徒がより豊かに生活を送ることができるようにすることが目的である。ここで言うバスとは厳密には路線バスであるが、最寄り駅から学校までを直通で結ぶもので、利用者は本校の生徒と教員である。便宜上、本発表ではスクールバスと記している。調査は、自動車の交通量調査、学校周辺の各駅から徒歩30分圏内の土地利用などに注目した。その結果、春日部市から越谷市に向かう車(上り)よりも越谷市方面から春日部市方面に向かう車(下り)の方が多いことが分かった。また、学校の最寄り駅から一つ先の大袋駅の西側では、土地区画整備事業が行われており、地図や航空写真を比べるとここ十数年で住宅が急激に増えていることも分かった。西大袋地区の人口増加にともなう市民の朝の移動が、本校生徒の通学時間と重なりバスが遅れるという結論に至った。
10 千葉県野田市三ツ堀地区における庚申塚の分布と地理的特性に関する一考察
昌平高等学校 2年 田中大翔
本調査の目的は、庚申信仰の対象となる石碑の分布と土地利用との関係を明らかにすることである。地域内の石碑の分布を『野田市金石資料集』を用いて確認し、周辺の土地利用を標高図、治水地形分類図、明治期の地図を用いて予備調査したうえで現地調査を行った。本調査で判明した石碑の分布を上記地図にプロットした主題図を作成した結果、その特徴として、標高12m以上の台地にあり低地には見られないこと、地区内の3つの主な集落に石碑が分散していること、周辺の土地利用は畑が殆どであり近隣に民家か神社があること、建立は多くが1718年~1809年であることなどが判明した。本調査から、江戸時代中期に当該集落で庚申信仰が広まり、台地上の集落周辺に石碑が多く建立されたことがわかる。また、低地に石碑は見られないことから、庚申待ちの記録でもある庚申塚は、必然的に生活の基盤が置かれ人が集まりやすい台地に多いことが窺える。
11 塾・予備校から見る地方都市間における教育格差 ―埼玉県川越市及び福井県小浜市を事例に―
埼玉県立浦和高等学校 2年 小川智己
本研究は、地方都市間の教育格差に焦点を当て、従来少なかった地方同士の比較を通じて地理的要因の影響を分析し、新規の解決策を模索するものである。具体的には、埼玉県川越市とその姉妹都市である福井県小浜市を研究対象とし、住所データを基に塾や予備校へのアクセシビリティを調査した。研究結果から、小中学生における地理的な格差は確認されたものの、学校教育や家庭での学習による補完が効果を示し、学力テストの成績には大きな差は観察されなかった。しかし、高校生に関しては、塾や予備校の豊富な川越市と比較して、小浜市ではそれらの施設が不足し、移動の難しさもあるため、共通テストのスコアが低く、大学進学への障害となっていることが明らかになった。この教育格差を解消するための解決策として、「学校教育の質の向上」、「メタバースの導入」、および「コンパクトシティの適用及び拡大」を提案していく。
12 高齢者の日常の移動手段としてのコミュニティバス ―埼玉県上尾市「ぐるっとくん」を事例に―
埼玉県立浦和高等学校 2年 荻原佳也
近年、自動車運転免許を返納した高齢者の移動手段として、コミュニティバスが注目されている。本研究では埼玉県上尾市を事例に、資料分析や乗車調査、バス運転手への取材から高齢者の日常の移動手段としての課題を整理する。上尾市のコミュニティバスは100円の均一運賃で市内全域をカバーしており、市民の足として重要な役割を果たしている。調査により、利用客の多くは高齢者が占めていることが分かったが、今後の物価高騰などによる収益悪化や人口減少などの理由でコミュニティバスの存続が懸念される。そこで、地域の高齢者の移動手段を守るために、コミュニティバスを地域全体で支えていく必要がある。発表者は、市民が一定金額を負担し、かつサブスクリプション制度を導入することで、運賃を値上げせずに、市内の地域交通を維持できると考える。また、民間路線バスの通らない地域のコミュニティバスを増便することで、利便性を向上させることを提案する。
13 北陸新幹線開業による観光客数の増減と増加に向けての提案 ―新潟県上越市を事例に―
埼玉県立浦和高等学校 2年 長尾一馬
2015年3月14日北陸新幹線延伸に伴い、新潟県上越市に新幹線駅、上越妙高駅が開業した。そこで、新幹線の開業前・前後・後3年ずつの上越市内の駅における乗降客数を算出し、市内の主要な観光地5か所(高田公園、春日山城跡、うみてらす名立、なおえつ・たにはま海水浴場)の観光客数の増減を、インバウンド等の影響を考慮したうえで調べ、新幹線開業による影響を調べた。結果、うみてらす名立となおえつ・たにはま海水浴場は観光客が減少傾向であるが、車での来客が多いと考えられるため、新幹線開業の影響は少ない。観光客の多くが車で訪れない高田公園と春日山城跡に関して、高田公園は駅から近いこともあり、観光客数が増加して開業の影響を受けたが、春日山城跡は駅から遠く、バスも少なく不便であり、第2次交通の課題が露呈した。今後はバス・電車の増便や、市が他県・他国の人向けのPR動画を作成し、情報を発信していくことが必要である。
14 ハザードマップの読図を助けるワークシートの作成とその評価
早稲田大学本庄高等学院 3年 栗田紬生
本研究は,ハザードマップの読み取りを助けるワークシートの内容を検証し,より分かりやすいワークシートの作成を目的とする.気象庁が公表しているワークシート『わたしの「大雨の時にどう逃げる」』を用いた.調査対象者は埼玉県本庄市に居住する10〜70歳代の計13名である.まず,既存のワークシートによる水害ハザードマップの読図実験を行い,災害リスクや避難行動を読み取る際の指示や過程で改善すべき点を明らかにした.次に,それらを踏まえたワークシートによる読図実験を行い,読み取りの効果を検証した.既存のワークシートでの読図実験では,ワークシートの内容が紙媒体のハザードマップでの読み取りに不十分であった.一方で,ワークシートでの作業が防災に対する意識の向上に一定の効果をもたらすことがわかった.改善点を踏まえたワークシートでの読図実験では,災害リスクや避難行動の把握により効果的であることが確かめられた.
15 過疎地域における自動運転バスの最適運行
千葉県立千葉高等学校 1年 松尾 泰成
現在、地方における少子高齢化とともに、地方財政の困窮化、バス業界における運転者不足によって、過疎地域のモビリティ確保が問題になっている。この解消に向けて全国各地で自動運転バスの実証実験が行われているが、依然として自動運転バスは様々な課題を抱えている。そこで、その課題を明確にするとともに、課題に対する解決策を考えることとした。実証実験を実施した全国各自治体のうちから、特に47自治体を選んで自動運転バスの「実証実験を行うにあたって直面した課題」、「実証実験を行うことで見えてきた課題」、「将来的な実用化を目指す際、直面しそうな課題」について聞き取り調査をした。その結果、外部機関との連携、住民との合意、運行方法、存在意義など10種類の課題を明確にできた。また、そこで得た課題を踏まえ、人員確保の観点から最適な自動運転バスの運行方法はどのようなものか、など、自動運転バスに関する知見を得ることができた。
16 千葉県いすみ市における太陽光発電の現状と課題
千葉県立千葉高等学校 2年 長谷川 桃花
近年、環境問題に関心が集まり、再生可能エネルギーとして、太陽光発電に注目が集まっている。それに伴い、各地で太陽光発電所の建設が行われているが、同時にあらゆる太陽光発電の負の影響も取り沙汰されている。私の住んでいるいすみ市には至る所にソーラーパネルがある。この現状を見たとき、環境に良いものとして考えられている太陽光発電が本当に環境に良いものなのかと疑問に思い、この研究を始めた。本研究では、いすみ市を調査の対象として、いすみ市の太陽光発電の現状を把握し、課題について考察することを目的とした。調査の方法としては、空中写真を用いてソーラーパネルの数え上げを行い、GISを用いて分布図とした。それと同時にフィールドワークも交えながら進めた。そこから人口密度の地図やソーラーパネルが建設される前の空中写真と重ね合わせ、考察を行った。また、聞き取り調査を行い、ソーラーパネルの実情を探ることでさらに研究を深めていった。
17 千葉県市原市における小字の名称と周辺環境の関係性について
千葉県立千葉高等学校 2年 兼久 海翔
日本全国には、小字と呼ばれる、集落内での小区画に名付けられる地名が存在し、その数は数十万とも言われている。多くは、その付近の歴史や環境を反映しており、そのため、小字の語源や頻出度を基にした環境情報の研究が多く行われてきた。しかし、小字の位置をGISデータ化し、その分布や付近の地形などとの関連性を分析した研究はほとんどなかった。そこで、千葉県市原市の一部を対象とし、小字の位置図を作成し周辺環境との関連性を考察した。小字の位置の同定に際しては、角川日本地名大辞典に収録されている小字一覧や、eMAFF農地ナビに記載されている地番情報を用いた。小字の位置図の作成の結果、小字は、周辺の地形のみならず、信仰や農耕、さらには、旧街区などといった社会的営みと密接に結びついていることが示された。一方で、一部には現代語彙からは由来が推測しにくいような小字もあり、それらの小字についても周辺環境との関連性を考察した。
18 千葉県館山市における津波到達位置と神社分布の関係性
市川高等学校 2年 服部羽衣
東日本大震災の津波は多くの建物に甚大な被害をもたらしたが、神社の多くは津波被害を免れた。このことから、神社と津波の関係性を検証する研究が行われ続けている。先行研究は東日本大震災の津波浸水域と南海トラフ地震で大きな津波被害が予想される紀伊半島や四国の地域での検証に限られている。そこで、本研究では東日本大震災の津波被害は無かったが、過去に度重なる大きな津波被害の起きた千葉県館山市を調査地域とした。まず、沿岸部を含む7つの旧町村地区毎に神社分布を調べ、建立時期や祭神を区分した地図を作り、過去の津波浸水域と比較して関係性を検証した。その結果、船形地区では先行研究と同様に神社が昔の地震の津波浸水域付近にあること、神戸地区では神社合祀によって神社が津波浸水域外から内に移設された上で、神社の代わりに寺院が津波到達位置付近に分布することなど、各地区の特徴が明らかになった。そこでこれらの詳細を発表する。
19 食生活と健康問題の関係性-沖縄県を事例として-
専修大学松戸高等学校 2年 江本彩乃
かつて平均寿命が男女共に一位であった沖縄県であるが、昨今では男性が43位、女性が16位(厚生労働省,2020)と急落しているのは大きな問題である。また、男性と女性の全国における平均寿命の順位の差が非常に大きいと言える。そこで本研究では、「沖縄県の健康問題において食生活は健康寿命を短くする要因であるのか」という仮説を現地の人への聞き取り調査により検証する。中谷(2011)は多様な空間スケールにおいて、実行可能性のある健康的な環境形成の条件を複合的に議論することが求められると述べている。現地の人への聞き取りでは、飲食店や市場など食を提供する人への聞き取りも行うことで沖縄県の健康問題を第三者の立場から客観的に分析する。その上で年齢や性別ごとに食生活や健康問題に対する考え方の相違と実際の健康問題をグラフ化し、相関をみる。これらの検証結果を踏まえて沖縄県における今後の食生活のあり方を提案する。
20 生物多様性のあふれる持続的なまちづくり実現に向けての戦略―東京都江東区砂町地区を事例にして―
専修大学松戸高等学校 2年 東山蓮太郎
東京都江東区東部に位置する砂町は、江戸中期から明治初期にかけては蔬菜農業地域、明治から昭和前期にかけては工業地域、現代は大規模住宅地域へと変化していった。本研究は、このように地域の環境が変化していく中で、失われた生物多様性を取り戻し豊かなものにしていくためのまちづくりの実現に向けて具体的な政策を提言することを目的とする。研究方法として、『南葛飾郡誌』(1923年刊行)をはじめとした文献調査、今昔マップを用いた各年代の土地利用等の比較調査、環境NPOへの聴き取り調査や江東区生物多様性フェアでの上記団体の発表内容などを通し、得られた成果から結論を見出していきたい。調査結果として、①地域環境が変化する中で元の生態系が不明となったこと、②組織間の利害の不一致、③住民の無関心、④環境NPO間の協力不足の4つの問題点が見えてきた。これを踏まえ、生物多様性を生かしたまちづくりの戦略について、当日の発表で明らかにしたい。
21 雨雲の発生・移動と地形との関連性について
早稲田高等学校 1年 木戸凛太郎
雨雲の発生する原理を授業で学び関心を持ち、実際に雨雲はどのような場所で発生しどのように動くのか調べたいと感じた。そこで、雨雲の発生場所・動きと地形との関係性について調査することにした。研究方法は、7月末~8月初めにかけての1週間、関東地方の5分ごとの雨雲レーダーの画像を保存し、パラパラ漫画のように見られるようにして、雨雲の発生と移動を確認した。地形図上に、雨雲の「発生場所」と「移動方向」をマッピングし分類した。その結果、雨雲の動きは山岳型・都市型・台風型の3つのパターンに分類することができた。山岳型の雨雲は尾根で発生し、平野へ下る。都市型の雨雲は平野部で発生しランダムに動く。台風型の雨雲は地形に関係なく一定の方向に動いた。この研究を通して、多くの事例で、雨雲の発生場所と移動方向は地形に大きく関係していることが分かったが、都市型の雨雲の動きを予測することは難しいと感じた。
22 ソウル地下鉄と比較した東京の地下鉄の安全性について
早稲田高等学校 1年 中村俊太
ソウルを旅行した際のソウル地下鉄の防火設備の多さを受け、東京の地下鉄の安全性を調査するために三つの方法で東京、ソウルの地下鉄の比較検証を行った。一つ目に安全報告書上の事故件数の比較を行った結果、最初はソウルが少なかったが、最近は東京が下回った事が分かった。この原因をホームドアの設置率だと考察した。ソウルでは早くに設置が完了していたが、東京では最近本格的に設置されたからだ。二つ目に東京の地下鉄駅構内の防災設備を確認した。消火栓が足りないホームがあり、AEDを簡単に見つけられる駅が少なかった。駅構内の地図に消火栓やAEDの位置は記載するべきだ。三つ目に初めて降りる駅で地上までの所要時間を測った。避難誘導灯に従うだけなので容易だった。検証より、どちらも避難路やホームドアの設置には配慮がされているが、東京では防火対策、両都市でAEDの周知は不十分だと言える。今後、これらの対策が望まれる。
23 川越市と所沢市の商店街における飲食店と物販店の立地
早稲田高等学校 1年 井出大飛
埼玉県川越市にクレアモールという商店街がある。人通りが多く店舗間の競争が激しいと予想されるこの商店街において、場所によって店の種類に差があるように感じていた。そこで1階によく立ち並ぶ飲食店と物販店を、クレアモールと、その比較対象として所沢プロペ商店街においても実際に街を歩き、調査した。そしてそれらを地図に落としグラフ化することによって両者を比較し、商店街における飲食店と物販店の面的・垂直的分布を明らかにした。その結果、両商店街共に、まず1階においては飲食店よりも物販店の方が多く、駅に近いほど飲食店の割合が上がる傾向にあった。次に2階以上と地下階においては飲食店の方が物販店よりも多く、また、駅に近いほど飲食店の割合が上がる傾向にあった。このことから、飲食店はより駅に近い所を、物販店は駅からの距離を問わず1階をより指向することで店舗の立地に偏りが生じたと考察した。
24 荒川における水面変動の解析と利用 -身近な自然エネルギーの提唱-
筑波大学附属高等学校 2年 三木惺三朗
本研究は荒川における水位変動を利用した発電方法の有用性を吟味し、塩水楔を解析するものである。水位変動を利用した発電量の計算では、マニングの公式を用いて水位から流速を計算し発電量を求めた。岩淵水門の水位データを用いて降水が少ない晴れの3日間、降水がある3日間、多量降水の3日間の3つのケースで計算を行った。計算結果から河川の水位変動を利用した発電は有用であることが示されたが、マニングの公式は流速が高く出てしまうことや、自然環境の変化があるため、理論上の値と実際値には差があることが見込まれた。塩水楔の解析に関しては、河口からの距離と水深の2次平面での楔の移動について考えるためにpythonを用いてシミュレーションを行い、塩水楔の動きをグラフにして可視化することができた。シミュレーションから塩水楔は塩分拡散しながら遡上し、海水と淡水の境界面を保ちつつ、水底の摩擦を受けていることが示された。
25 東京都板橋区における水環境と災害
東京都立小石川中等教育学校 5年(高校2年) 原 里駆
近年、台風による大雨により水害被害が全国各地で起きている。本研究では、対象地域を東京都板橋区に絞り、どのような対策を行えば良いのかを地理的に考察する。板橋区には荒川、新河岸川、石神井川の3つの川が流れており大雨により、度々石神井川や新河岸川が氾濫している。そこで、区が公表しているハザードマップとGISを用いたデータの分析によって、危険性がある場所を厳密に調べた。またその昔、板橋区には荒川の伏流水などによる湧水がわいており、そこを水源とする川が流れていた。今となってはほぼ暗渠化されている。フィールドワークを通じて出井川跡を辿り、確かに川が流れていると分かる場所が存在した。水害は川の氾濫で起きることがあるから、今では暗渠化されている川だが、その付近では水害の危険性があると仮説を立て検証した。その結果、それらの場所は一致した。水害の危険性がある場所には見えない川が関係していることが分かった。
26 地域による食文化の違い-東京と大阪を事例にして-
品川翔英高校 1年 水上 彩花
世界情勢への懸念とコロナ禍の収束により、国内旅行志向が高まっている今日において、旅行者の目的の一つになっている「グルメ」。食文化を、調理道具や水質、屋台に焦点を当てて地域間の差違や関係性を明らかにする。今回は、東京と大阪を例にとり、12月に4泊5日で大阪へ行き、伝統的な料理やストリートフードなどを食べ、食の多様性を探求した。さらに、千日前道具屋筋商店街に足を運び、道路の幅や建物の種類、客層についての現地調査を行った。また、東京の合羽橋道具街でも同じように現地調査を実施した。加えて、現地調査ではデータの採取が不可能であった商店街の成立背景や店舗の変移などは、それぞれの商店街振興組合のHPや学術論文で資料調査を行った。これより、大阪と東京の食文化は調理道具の形状と水質の違いによって相違がみられることが分かった。この研究を生かし、両商店街の特徴を理解して相互に寛容することで、さらに豊かな食生活を営めることを願う。
27 指定難病の患者分散と医療機関へのアクセスの良さ
品川女子学院 1年 関根 凜・小泉明日香・須佐彩那
医療分野における課題を発見し、その解決策の考案を目的にこの研究を行った。全国47都道府県を対象に、難病指定された病の中から日本での罹患患者数の上位5つをピックアップし、それらの治療を施すことができる医療機関の所在・都道府県ごとの患者の分散等をまとめた。調査にあたってはインターネットのサイトから情報を得て用いた。本研究では、都道府県ごとの地域格差が明らかとなった。総患者数の5%以上がいる都道府県の患者1人あたりの医療機関数は他県に比べて多く、その他の都道府県との差が顕著である。また、各都道府県の人口における患者数の割合には大きな変わりはないため、人口に比例して医療機関も存在する方が望ましいはずだが、それは叶っていない。医療機関の建設による根本的解決が経済面や人手不足等で即刻の実現が難しい中で、私たちは患者・医師の双方にメリットがある形でこの地域格差問題を改善する案を提示する。
28 市街化区域の割合と防災及び自然教育の意識の比較
品川女子学院 1年 德山 由莉香・小間優那
都心で学校生活を送る私たちにとって、自然に触れる機会は貴重であると言える。そこで、防災意識の高さや自然と触れる機会へのニーズは、自然と触れる機会の多さに比例するのではないかと仮説を立てた。何らかの自然災害に遭遇する確率の高い地域という観点ではなく、行政ごとに市街化区域と市街化調整区域の割合を調べ、法的な観点で自然に触れやすいかどうかを基準として、どのような違いがあるのかを調査した。その結果、例として提示した品川区は市街化区域が約10割、松戸市が約7割、印西市が約1.5割、成田市が約0.1割であり、各地域ごとに学校で防災・自然環境といった教育機会をどれだけ設けているか調査を行った。市街化区域が多ければ多いほど防災意識が高まり、市街化区域が少ないほど自然教育への意識が高くなる傾向が見られたが、本研究では具体的な分布を発表する。
29 有機農業の産地と消費地の関係について
品川女子学院 1年 小池 咲歩・芥川 凜桜・杉山 稀音
食の安全性が気にされるようになり、有機栽培や地産地消という言葉が注目を浴びるようになった。しかし、有機栽培については生産地の情報が広く公開されている一方で、消費地については収集・公開されている情報が乏しいのが現状である。そこで、食への意識が高く、有機栽培と地産地消を気にしている人が相対的に多い地域であれば、有機食品を販売している店舗は、有機栽培の産地に多いのではないかという仮説を立てた。有機農業は、特別な装置や手間などにより費用が嵩み、高額な値段で販売される傾向にある。そこで、少しでも輸送コストを削減するべく、大都市に近い地域での生産の促進につなげたいという思いから、調査の結果明らかとなった、有機食品へのニーズが高い人々が多く暮らしている地域では、有機栽培の食料品が多く生産されているとは言えない現状での課題を解決する方法を考察した。
30 鉄道会社が単独で維持するのが困難な線区に関する考察 ―羽越本線を事例として―
日本工業大学駒場高等学校 1年 梶山海翔
羽越本線は新潟県の新津駅から秋田県の秋田駅までを結ぶ日本海沿いを走る路線である。しかし、沿線の人口減少などにより利用者は激減し、中でも村上駅~鶴岡駅間はJR東日本の線区別収支のデータによると、管内で最も赤字の区間となっている。本研究では、この区間の現地調査を行い、利用者の増加や、地域の活性化に繋がる方法を考察する。現地調査の結果、この区間は、日本海と山間部に挟まれた地形を走行しているため、民家があまりないことが分かった。また、線路と並行している道路があり、車は多く走っていた。そして、この区間には景色の良いスポットが多くあり、サイクリングコースもある。そこで、観光客を呼び込み、地元の人の利便性の向上を図るため、電車に自転車ごと乗降ができるように提案する。また、自転車や公共交通機関等に関する統計資料を活用し、自転車ごと移動できるモデルケースについても考察していきたい。
31 千葉県船橋市海老川水系上流地区における都市農業の実態と課題
青山学院高等部 2年 北澤一真
本研究は、市街化調整区域である千葉県船橋市海老川水系上流地区において、都市農業の実態と課題を、農家への経営状況の聞き取りと土地利用調査から明らかにしたものである。その結果、農家への聞き取りから、都市への近接性を利用した多種多様な栽培品目、販売方法が展開されていることが分かった。また、かつての耕作地で行う不動産経営が、家計を支える収入源として大きな比重を占めている農家が多く見られ、自身の置かれている状況に応じた農業経営が行われていることが分かった。さらに、土地利用調査から交通量の多い県道に近い谷津田の多くで荒れ地や資材置き場、工業用地といった非耕作地になっていることが分かった。以上より、本地区は農家が農地を不動産の一部として捉え、東葉高速鉄道の新駅開業に伴う都市化の開発圧力が強くなっている現状と相まって、より営農環境が厳しくなっていると考えられる。
32 愛媛県松山市の路面電車の可能性
東京都立豊島高等学校 2年 西岡璃子
愛媛県松山市は四国最大の都市であり、地域経済の拠点となっているが、高齢化の進行とともに今後の人口減少が予測されている。地域を活性化させるためには、人々にとって定住しやすい街づくりをしていく必要がある。松山市内には路面電車が走っているが、活用の仕方にまだまだ可能性があるのではないかと考える。これを活用した街づくりができれば、定住しやすい街になるだけでなく、都市機能の拡散や二酸化炭素排出なども改善できるのではないかと考えた。そこで本研究では、jSTATマップ、地理院地図、行政の発表している資料、居住者へのインタビューなどを活用して、人口分布や路線図と重ね合わせて調査したところ、高齢者の居住地や主要な施設を経由していないことなどが明らかになった。居住者が住み続けやすく、観光客にとっても利用しやすい街にするために、路面電車の新しいルートを提案する。
33 世田谷区国道246号線周辺における土地の特性による浮遊粒子状物質濃度への影響
駒場東邦高等学校 1年 伊藤 正太郎・顔 律銘・安江 光平
今から15年ほど前に国道246号線沿いに住んでいた方から、「今も交通量の多い246号線だが、昔はもっと空気が汚く感じた」という話を聞いたことがあり、とても驚いた。そこで、幹線道路における大気汚染の実態について興味を持ち、比較的小さなスケールでの汚染の度合いの差異について調査することとした。主な調査対象は、世田谷区内の国道246号線沿いの複数の地域とし,その区間内において、交通量全体に対する自家用車やバス、電気自動車等の構成比や混雑度は大きな差はないと考えた。その上で、空気中に浮遊する微粒子の量は何に大きく依存するのかを考えるため、谷や尾根となっている部分、交差点等で測定し,比較を行った。その際、国土交通省の示す区間別交通量(全車両かつ上下線の合計値)を踏まえて考えた。以上のようにして、本研究では、測定結果および道路の交通量等を考慮した上で、浮遊粒子状物質の濃度の差の要因を考察した。
34 日本における鉄道貨物輸送の推進がもたらす効果
駒場東邦高等学校 1年 中村 成那
2024年問題でトラック運転手の不足が危惧されているが、それを解決するのが鉄道貨物である。鉄道貨物が全貨物輸送に占める割合(トンキロベース)は、2016年度で5.1%であった。長距離輸送になるほど、鉄道貨物の利用率は格段に増える。2018年の輸送品は、主に食料や石油、紙パルプなどの生活に必要な物資であった。国土交通省のホームページによると,二酸化炭素排出量の面で、鉄道貨物はトラックの11分の1のみで済むとされる。JR貨物は、貨物列車が走るごとに旅客会社へ線路使用料を払うため、貨物列車を増やすことは赤字路線の経営を下支えすることと言ってよい。これは、新幹線建設に伴う並行在来線問題の解決にも寄与する。では、これらのメリットにかかわらず鉄道貨物があまり浸透しないのは、なぜだろうか。そこで鉄道貨物におけるメリットとデメリットを貨物の運行路線の現状や鉄道路線に支払われる線路使用料などのデータを用い、収益性の面などから検証した
35 小田原市の人口と移住
東京学芸大学附属高等学校 2年 奥村友哉・福元悠生・野澤麻弥・前嶌遥・城田彬
私たちは、移住者が感じる市の魅力を特定し、人口が減少する他の自治体が取るべき政策を考察しようと考えた。そこで、近年人口が社会増の傾向にある神奈川県小田原市を調査対象とし、移住した8名の方にインタビューを行った。その結果移住者は、テレワークを主としつつも、出勤時には座って都内まで行けるという交通利便性の高さや、地域住民との繋がりを増やすとともに、週末等に以前の交友関係が維持すべく東京の友人を自宅に招けるといったことを評価した。また、実地調査では駅前の栄町地区において一戸建ての住宅が多く見られ、ファミリー層が移住しやすい環境だと推測された。以上から、新幹線を用いて約30分で東京に行けるという物理的近接と、移住以前の交友関係を維持したまま移住できるという心理的近接という二つの移住促進要因が考えられた。こうした魅力を活かして、市が積極的な移住向けの広報活動を行っていることが社会増の要因だと考えた。
36 ネット販売は農業の活性化につながるのか
東京学芸大学附属高校 2年 阿部理子・神戸真理子・加藤理絵
日本では現在、農業の衰退が深刻化している。そこで農業を活性化させる為に農家の収益増加に着目し、その手段として生産者と消費者が繋がれるネット販売が有効ではないかと仮説を立て、探究を始めた。スーパー等に出店できている農家は比較的に収益が多いというデータを基に、上記に該当しない野菜・果物の農家に対象を絞り、生産者である農家へのインタビューと消費者である本校の生徒の保護者へのアンケートを実施し、分類コード作成ツールを用いて分析した。その結果、生産者が考える消費者の購買動機と実際の生産者の購買動機にずれがある事、競争相手が多いため大手サイトでの販売は難しい事が明らかになった。そのため、両者のずれを解消し需要と供給を一致させる事が農家の収益増加に繋げることができると考えられた。このことから農業活性化には、大手サイトではなく自社サイトを用いたネット販売の活用が有効であると結論づけた。
37 日本の米消費における具体的な対策についての考察
東京学芸大学附属高校 2年 松井杏・冨田隆生・下上恵人
現在の米問題へのアプローチとして農家側に最適であるのは、他の米との差別化をすることで自分が作った米に付加価値を与えることができる、米のブランド化である。ふるさと納税について調べていくと、問題点は多いがふるさと納税によって米の消費が促進されているということがわかった。より米の消費を促進するためには、問題点を改善するよりも現状維持の方が、利用者が減少せず、利用者数も増えていくと予想される。米の供給量を適正化するための方策として、飼料米への作付転換政策があった。水田の利活用や家畜の飼養成績向上が期待される一方、耕種・畜産農家間の流通システムには未だ課題が残されており、この解決には農協など地域に密着した主体の介入が必要である。
38 大都市の住宅街でバイオマス発電を普及させるには~東京都世田谷区を事例として~
鴎友学園女子高等学校 1年 熊田ゆり・竹野真帆・仁位莉々彩・馬伝欣
大都市の住宅街におけるバイオマス発電の普及を検討するために、インターネット・文献の調査や専門家からの聞き取り調査を行った。その結果、発電所の規模を小さくして各地に点在させ、その土地で最適な燃料の種類、エネルギーの利用先を決定するのが理想的である。しかし、居住者が多く土地が狭い大都市の住宅街での発電所の設置は難しい。そこで、地域内でのエネルギーの地産地消に取り組む世田谷区の世田谷清掃工場に注目した。世田谷清掃工場は、ごみを焼却する際に得た熱エネルギーを熱または電力として区内で利用している。このような取り組みを、世田谷区と類似した大都市の住宅街で行うことが、バイオマス発電を普及させる方策の1つになりうると考える。
39 郷土料理の衰退とそれに抗う現状 〜郷土料理の振興を促すにはどうしたらよいか〜
鴎友学園女子高等学校 1年 番場千晶・松岡侑紀・山崎遥花
本研究は地方の衰退の現状を知るため、身近な食を対象として、農林水産省のデータを元に郷土料理について調べ、考察したものである。全国に広まっている郷土料理の共通点は、昔から似たものが食べられていること、安価かつ簡単に作れることである。一方、行政による支援、お土産での購買促進で認知されているものもある。また、郷土料理の衰退が進んでいる理由としては、少子高齢化や継承する機会の減少、食のグローバル化が挙げられる。郷土料理と地域の衰退は相互に関係するため、現在、対策として人々に認知し、食べてもらうといった対応がとられている。地域活性化は、郷土料理の振興のために必要な対策と似ており、観光に食は必要不可欠である。したがって、食と密接な関係を持つ「観光」と連携強化を進めるべきだと考えた。
40 都市部と地方の中山間部に買い物弱者の傾向と対策に違いはあるのか
鴎友学園女子高等学校 1年 小杉佐恵・玉井理子
本研究は都市部と地方中山間地域における買い物弱者の特徴と対策の効果を考えることを目的として、東京都日野市と鳥取県日野郡江府町を対象とし、日野市役所への聞き取り調査や日野市と江府町の標高図や老年人口率を表した地図の作成を行った。その結果、次の二点がわかった。一点目は、江府町では小売店の不足と中山間地域に住む高齢者が移動手段を持たないことが買い物弱者の原因となっていることだ。これに対して、移動販売は中山間地域の買い物弱者にとって効果的な対策である。二点目は、日野市には開発が進められる地域とそうでない地域があり、受けられるサービスに格差があるということだ。したがって、単身高齢者が急増する中、自治体に必要としている地域への小売店の設置の検討や、高齢者へネット通販の利用を促すことを提言する。
41 無形文化財である地域イベントの存続と意義 ~世田谷ボロ市の歴史と未来~
駒澤大学高等学校・3年・柴田桃那・松浦 舜・岩間結衣香・泉 柚衣・佐久間 葵
世田谷のボロ市とは、446年の歴史を持つ日本で最も古い「市」の枠組みであり、東京都無形民俗文化財として登録されている。現在ではフリーマーケットという形態で,世田谷に店舗を持つ商業者などが出店者となり、今なお賑わいを見せる地域イベントになっている。ボロ市は北条氏により始められた六斎市をルーツに持つ。1964年以降は、地元町会・商店会を中心に結成された「せたがやボロ市保存会」がその企画・運営を担ってきた。私たちはこのボロ市の歴史と存続の方法、そしてその意義について調査した。まず、出店者や保存会の方から資料の提供を頂き、インタビュー調査を通して出店者や来客者の変遷について明らかにした。また、ボロ市に参加する訪日外国人へのインタビューや、地元小中学生へのアンケート調査を通じて、保存する意義について考察した。これらの調査結果を通じて、今後ボロ市が存続する方法やその意義について議論する。
42 招き猫によるインバウンド需要の急増と地域社会 ~世田谷区豪徳寺を事例に~
駒澤大学高等学校 3年 加藤 昂・北島 柊・内田純平
豪徳寺は、世田谷区の台地上にある井伊家由来の曹洞宗の寺であり、世田谷城跡のすぐ隣に位置する。近年、「招き猫」をきっかけに外国人観光客の来客が増えている。特に、コロナ禍後の増加は顕著で、フィールドワーク時にも多くの観光客を見かけた。そこで観光客の急増の要因の解析、地域への影響を調査するために、Google formsによるアンケート調査と周辺の商店街の調査を行った。調査項目は、豪徳寺を知ったきっかけ、訪日の目的、観光客の属性である。調査の結果、オリンピックの広告で招き猫が出現したことをきっかけに欧米の観光客が急増したことが分かった。また、その伝達にはSNSが強く関係していた。商店街には外国人向けのお店や案内が増えていることが見かけられた。そこで、その分布を地図化し、地域の方々へインタビュー調査をすることで、地域と観光地化した豪徳寺の関わりについて考察した。
43 都市公園のオリンピックリニューアル ~人のつながりを作る馬事公苑と駒沢公園~
駒澤大学高等学校 3年 森山真人・力山直人・村椿 友・瑞慶覧花音・日和佐佳怜・山口和香葉
2021年の東京オリンピック開催に伴い、競技場の新設やリニューアル工事が数多く実施された。同様の都市の変化は1964年にも起こっており,都市計画として国道246号線の近隣に馬事公苑や駒沢オリンピック公園,代々木体育館などが整備されている。その中でも2022年に大規模な工事が行われたのがJRA馬事公苑である。オリンピック開催後、2023年にリニューアルオープンし、競技場のみでなく市民の憩いの場となっている。そこで私たちは、馬事公苑と駒沢公園において、利用客の属性調査(公園への移動距離や年齢層、家族構成、利用目的)などを行った。アンケートは平日と休日の両方で時間帯を変えずに実施した。そして、立地や公園の規模、施設内容によって、地域社会に都市公園が果たしている役割の違いについて明らかにした。さらに、リニューアルが、利用客層の変化に与えた影響、地域に与えた影響についても考察した。
44 関東平野の水害発生要因に認められる地形的特徴
成蹊高等学校 2年 小西 堅・鶴田 花梨・宮内 百合香、1年 山中 大馳・松澤 幸希・岡部 慎・菅原 亮仁・福田 悠人
近年、台風や集中豪雨による大雨で、土砂災害や河川氾濫などの水害が頻発している。今後も気候変化に伴う降水量の増加が予測されており、東京などの都市部でも大規模な水害の発生リスクがより高まると想定される。そこで関東平野を対象として、過去の水害の発生事例をリストアップし、個々の事例について、水害の発生場所と発生要因などを調べた。大雨の基準として、東京都武蔵野市にある成蹊気象観測所の1926年以降の降水量データを用いた。その結果、関東平野の土砂災害や河川氾濫の発生パターンには、降水量、地盤強度、河川の湾曲度が寄与していることが分かった。個々の事例についてそれらの寄与度の違いに基づく分類を行い、関東平野の水害を類型化した。その中で認められた、関東平野特有の地形的特徴が水害発生に及ぼす影響について発表する。今後は研究の範囲を日本全国に広げ、地域による差異について調べたい。
45 佐野らーめんから見る栃木県佐野市の観光
東京都立三鷹中等教育学校 高校2年 阿由葉洸太
栃木県佐野市は「佐野プレミアム・アウトレット(以降佐野 OL)」「佐野らーめん」といった観光資源に恵まれた都市である。しかし佐野市では市内の回遊を促す政策を行っておらず、観光客が佐野 OL に集中するものの、佐野らーめんを食べる者は少ない。そこで佐野OL に来た観光客に佐野らーめんを食べてもらうために、観光案内に特化したタクシー「佐野らーめんタクシー」や、市内のラーメン店を 1 か所に集めた観光地「佐野らーめんモール」の建設を提案する。それを佐野市役所の方々とのワークショップで議論したが、公共交通を充実させることの困難性や、佐野らーめんの各店舗の個性を重んじる考え方が明らかになった。またその後の筆者の調査で、佐野らーめんが観光客向けのグルメという面だけでなく、讃岐うどんのように市民食としての要素も強いことが分かった。今後は市民食と観光客向けグルメの両面の特徴を持ったご当地グルメの調査・比較を行いたい。
46 牛丼チェーン営業利益の立地戦略に焦点をおいた分析
東京都立三鷹中等教育学校 高校2年 三保幸輝
コロナ禍における牛丼チェーン店の営業利益は、松屋は-17億円なのに対し、すき家は+121億円と大きな差が生じた。IR情報によるとコロナ禍前後で客単価は大きく変化しないが、客数は松屋の方がすき家より減少幅が大きいものとなっていた。この営業利益の差は、客数以外にも固定費である店舗の不動産賃貸料にもあるだろうと推察した。そこでスクレイピングで店舗の住所データを収集し、QGISで全国の店舗分布と地価公示データをボロノイ分割したものを重ねて立地戦略を視覚化した。すると松屋は地価の高い駅付近などへの出店が多く、対照的にすき屋は地価の安い、駅から離れた地域やロードサイドなどが比較的多いことが明らかになった。これらのことから、松屋の営業利益の減少は、緊急事態宣言などに伴う外出自粛の動きで駅利用者の減少が客の減少につながり、さらには不動産賃貸料などすき家に比べて高い固定費が要因であろうと結論づけられた。
47 なぜ宮沢賢治は花巻市に観光客をもたらせるのか
東京都立三鷹中等教育学校 4年(高1) 石黒華
近年ニューツーリズムとして、これまで注目されてこなかった地域資源を活用した観光客増加の取り組みが注目されている。そこで成功事例の少ない、文豪を活かした観光客誘致に着目した。本研究では岩手県花巻市を事例に、宮沢賢治が多くの観光客を呼び込めている要因を検討する。花巻市・花巻市観光協会・宮沢賢治記念館・宮沢賢治イーハトーヴ館・宮沢賢治童話村への聞き取り調査、統計調査の結果、宮沢賢治関連の施設に多くの観光客が来訪する要因として次の3点が考えられた。1点目として、花巻市が宮沢賢治の故郷として積極的な広報活動を行っていること、2点目として、花巻市には宮沢賢治関連の政策をまとめて担う「賢治まちづくり課」が存在すること、3点目として、3つの文学館が市民、観光、学習向けなど様々なニーズにあわせた機能を提供していることである。以上の3つの要素が、宮沢賢治が花巻市へ多くの観光客をもたらしている要素だと推察した。
48 夜行列車が脱炭素社会構築に資する可能性について
山梨県立韮崎高等学校 2年 芦沢 駿・柴山拳太郎
本研究の目的は、ヨーロッパでの夜行列車復活の事例を参考とし、脱炭素社会構築のために、日本国内での交通体系の見直しを提案することである。現状、国内の長距離移動需要は鉄道と比べて低運賃の高速(夜行)バスや所要時間の短い航空機が多くを占めている。一方、試算によって差はあるものの、鉄道は航空機での移動と比べて排出されるCO₂が1/5程度と最も少ない乗り物である。本研究は同一経路における鉄道(夜行列車)と他の交通機関を利用した場合の所要時間、運賃、炭素排出量を比較した結果、所要時間や運賃などは航空機よりかかるものの、環境への負荷はかなり減少できることを論証した。さらに夜行列車が最終のバスや航空機より遅く出発し、始発より早く目的地に到着できる点を考慮し、アプリなどを使った早割の活用、夜行列車+新幹線のモデルの構築などの方策によって、他の交通機関以上の優位性を生み出しうるという考えに至った。
49 公立高校におけるエアコン設置の地域差の変化
山梨県立都留高等学校 2年 小林優斗・天野友翔・小林優太
2023年の夏は異常な暑さが日本列島を襲い,北海道では休校する学校も出た.この報道から,学校にはエアコン設備がなかったのかという疑問が生まれた.そこで本研究では各都道府県の公立高校のエアコン設置率の地域差の変化を明らかにすることを目的とした.研究の方法として,全国の公立高校のエアコン設置率について調査したうえで,その地域差について要因の分析を行った.具体的には,各都道府県の最高気温や教育費の支出割合と設置率の相関関係を調べた.分析の過程において,現在,北海道を除く都府県において設置率は90%を超えており,大きな差がないことが分かった.このことを踏まえエアコン設置率の推移をたどってみると,公立学校のエアコン設置率の全国調査が進められた2014年には都道府県間ではっきりとした差が見られたが,2018年の学校環境衛生基準の改定や猛暑日日数の増加により徐々に差が縮小していったのではないかという結論に至った.
50 都留高生が描く心の中の大月
山梨県立都留高等学校 2年 高井主遥・加藤貫太・小俣佳那・米山知花
共通の物理的空間で生活していても,その空間をどのように認識しているかは人によって違いがあるが,都留高生という共通の属性を持つ集団は,固有の集合的空間認識を持つと考えられる.そこで本研究は,都留高校が立地する大月市中心部における都留高生の集合的空間認識を明らかにすることを目的とした.研究の方法として,都留高校の1年生の1クラスを対象として,大月市中心部の手書き地図を描いてもらい,そこに描かれた内容について分析した.その結果,多くの生徒が利用する鉄道駅と学校を結ぶ道路を基軸とし,山や崖,線路といった物理的障害をエッジとする空間認識が明らかとなった.また,生徒が通学途中によく利用するコンビニは実際よりも学校に近い距離に描かれており,学校と結び付けてコンビニは認識されていた.これらの認識は生徒の属性によっても異なっており,集合的空間認識は生徒の属性によって変化しうる可変的性格が示唆された.
51 大月駅北側空き地の土地利用の構想と大月市の未来
山梨県立都留高等学校 2年 滝口穂乃佳・大澤 葵
大月駅北側には,広大な空き地が土地利用されずに広がっていることが大月市の大きな政治的課題になっている.そこで本研究は,この空き地のあるべき土地利用について構想することを目的とした.研究の方法として,まずこの場所の土地利用の変遷を地形図や空中写真などを用いて分析することで,この場所の歴史的性格を明らかにした.次に自治体の担当課への聞き取り調査を実施して行政当局の開発計画を把握し,その計画に関して経済性の観点から持続可能性を検討した.以上の考察を踏まえ,大月駅北側空き地のあるべき土地利用を構想した.まずSWOT分析により大月市の優位性と弱点を明確にしたうえで,この場所の周辺的性格も考慮し,あるべき土地利用を検討した。その結果得られた「緑豊かな公園」という土地利用に関して,フロー図を用いて波及効果を分析した。予測できる波及効果は大月の弱点の克服にも繋がることから,土地利用として最適であるといえる.
52 信濃川を山から海まで下って考えた「流域治水」
長野県松本県ケ丘高等学校 1年 丸山託史・滝沢 葵 ・三澤 陽 ・根橋 蒼
令和元年東日本台風を機に聞かれるようになった流域治水は、近年激しさを増す水害に対し流域全体で一体となって水害を軽減させる考え方であり、国が推進している。私達は、上流や下流といった流域間の相互関係に着目し、流域治水の現状と問題点を解き明かすため、信濃川水系の複数の治山治水施設を訪問して担当者に話を聞いた。長野市の堤防決壊の原因とされる立ヶ花狭窄部を掘削するために下流の新潟県大河津分水路で強化工事が行われているように、災害対策が離れた上流・下流の連携によって実施されている。これより、浸水被害を軽減するための河川改修は流域内で充実して進められている。一方、流域治水では、上流域の砂防事業は主な施策には含まれなかった。上流域の牛伏川において現役で機能している明治期の砂防施設を見学した私たちは砂防の重要性を改めて考えた。流域治水において、水を溢れさせない対策だけでなく、砂防や治山も重視すべきだろう。
53 松本市牛伏川を活用した防災・減災学習を含むふるさと学習の提案
長野県松本県ケ丘高等学校 2年 上 心遥、1年 柴田 優
全国の小中学校はふるさと学習や地域学習に力を入れている一方で、生徒自身の関心の低さが課題となっている。また高校地理総合には防災に関わる内容が含まれた。そこで、小中学校における防災を含んだふるさと学習のプランを計画した。対象としたのは、明治大正時代に砂防事業が行われ、美しい景観、自然、防災的側面などの要素が備わっている長野県松本市の牛伏川上流域である。実際に現地を見学した後、長野県松本建設事務所や技術者OBの方にもインタビューを行いアドバイスを得た。それらを元に歴史編、景観編、自然編、治水治山編の4つのプランを考えた。実際に実施することは時期的な都合で出来なかったが、学校教員からの評価を得た。そこでは学年別の知識に合わせたプランの作成や補助教材の開発の必要性という課題も出た。今後このプランを改善し実施したい。こうしたプランは地域の教育資源だけでなく、観光資源にもなると考えている。
54 三重県の自然災害伝承碑の分布の特徴および地理院地図未掲載の災害伝承碑の紹介
三重県立松阪高等学校 2年 山中琴羽・中西柚名、1年 清水綾乃
地理院地図で三重県全域の自然災害伝承碑の分布を確認し、災害別に分類した。また、自然災害伝承碑が空白になっている宮川流域の災害の歴史を文献で調べ、フィールドワークによる調査を行った。その結果、三重県の自然災害伝承碑の災害名と災害種別を調べると、南部の熊野灘沿岸および志摩半島沿岸は地震による津波、北部伊勢湾岸は伊勢湾台風による高潮、内陸部の伊賀地方は台風または豪雨による土砂災害・洪水、地震による地盤沈下が多くみられた。三重県中部は災害伝承碑の空白域となっているが、そのうち宮川流域は、古来より洪水などの災害が多い地域であり、堤防建設の際に人柱となった「松井孫右衛門の碑」も知られている。災害史調査により洪水による人的被害の確認できた地域のフィールドワークを行い、地理院地図に未掲載の災害伝承碑(慰霊碑)を確認し、その伝承碑に関わる災害の概要を報告する。
55 松阪市における伊勢志摩の立ち寄り観光の可能性 ―松阪市中心商店街の再活性化の道筋として―
三重県立松阪高等学校 2年 藤田葵子
松阪市は三重県中南勢地域の、中心都市の一つである。松阪駅前の商店街は、かつては松阪市と周辺郡部の中心商店街として機能していたが、モータリゼーションの進展、ライフスタイルの変化、郊外の大型商業施設の出現などにより、集客力が低下している。また商店街経営者層の高齢化や後継者難により、特に昼間はシャッター街の様相を呈している。この状況から「観光」をキーとする再活性化の可能性を探った。RESASの資料を使った観光需要の確認や、自治体への聞き取り調査などを基に、隣接する全国的観光地である「伊勢志摩」と公共交通機関や自家用車による移動が容易である利点を生かし、伊勢志摩地域をメインとした「立ち寄り観光需要」を基とした再活性化の道筋を検討した。
56 三重県南部の救急医療の実態と課題
三重県立松阪高等学校2年 藤田俐子
三重県では、名古屋大都市圏に包摂され交通網が発達している北部地域と、交通網が未発達な南部地域で、平均所得など経済的な格差が存在し、加えて医療格差も広がっていることが課題となっている。特に人口減少と高齢化の進行が顕著な東紀州地域や南勢志摩地域の郡部は、医療面での課題が深刻である。本研究では、三重県が県内を4区分している二次医療圏のうち、南部の「南勢志摩」「東紀州」の2地域を対象として実態を調査する。三重県内で、二次医療機関に当たる一定以上の病床を持つ総合病院は37あるが、北勢、中勢伊賀、南勢志摩の都市部に集中しており、広大な面積を持つ南勢志摩地域の郡部と東紀州地域に立地する医療機関は2か所のみである。研究手法として、対象地域の消防署、二次医療機関、自治体等への聞き取り調査を行い、特に、救急医療に関わる様々な格差の実態と課題を解明していく。
57 地図から読み解く地価高騰のナゾ~なぜ京都の地価は上がり続けるのか?~
京都府立桂高等学校 2年 山越大地・仙波康佑・小山亮太
京都市の地価は2012年~2022年の10年で66%上昇、全国平均の38%を大きく上回る。人口規模の近い他都市と比べても上昇率は際立ち、住宅購入を断念して市外に転出する人も出ている。観光地周辺のホテル建設ラッシュに加え、日本人のみならず外国人の富裕層による投資といった京都ならではの事情も浮かび上がる。この値上がり率と、身近な地域の景況感とが一致していないというのが市民の生活実感である。地価高騰のナゾを探るための研究方法として、京都市内の地価変動を階級区分図で作成した。バス停や鉄道駅からの距離、ハザードマップ、ホテル・旅館・簡易宿所の進出地図、 無電柱化の計画地図、高さ制限を表した地図など様々な地図を用いて、京都ならではの要因を考察してみた。また、これら地価の高騰が及ぼす地元住民への影響についても考察した。
58 都市をアグレッシブにデザインする~オーバーツーリズム解消とオールドタウン再生のために~
京都府立桂高等学校 2年 松尾 和・小川翔也・石川 尊・渋谷采玖
学校がある京都市南西部は、太古より桂川の作る湿地帯が広がり、神社・仏閣等の観光資源が少ない。そのため、祇園四条や嵐山まで15分圏内という好立地にもかかわらず、他の市内各地域と比べ旅館・ホテルが希薄な地域となっている。この地域の中核となる洛西ニュータウンは、今では高齢化率が40%を超えている。スーパーマーケットも徒歩圏内にほとんどなく今後フードデザートという新たな問題も起こると推測される。オールドタウンの再生と、京都他地域のオーバーツーリズム解消に向けた方策を地元の問題として考えたい。研究方法としては、洛西ニュータウンの現状と課題の考察や他のニュータウンとの比較、地域のフィールドワークを行った。芸大跡地へ現在の文化庁を移転させ、歴史都市京都の時間軸の中で、新しいものと古いものの融合させた都市をデザインしてみた。さらに、基礎研究に強い京大桂キャンパスと京都発信のグローバル企業を巻き込んだ大胆な未来都市を構想した。
59 防災気象情報に対する中高生の認識と課題 -洛南高等学校・附属中学校での調査を事例として-
洛南高等学校 1年 田代 俊介
本研究では、気象庁が災害から国民を守るために様々な媒体で提供している防災気象情報の認識および入手手段を分析することで、現状の情報の活用状況を明らかにすることを目的とする。調査は、本校の中学1年生、および高校1年生を対象にGoogleフォームを用いて、7種類の防災気象情報の認知度と理解度、および情報の入手手段についてアンケート形式で実施した。その結果、中高生ともにテレビを情報源として活用している人が多く、特に速報として報道される情報は認知度が高い傾向がみられた。また、内容の理解度については、速報として報道される情報とそれ以外の情報との間に明確な差はみられなかったが、全般的には高校生の方が高い傾向にあった。以上より、報道機会の拡充により認知度を高めつつ、学校現場における防災教育の更なる充実により理解度を高めることで、情報の防災への有効活用に繋がるのではないかと考える。
60 中学生・高校生が解き明かす大学の「学生街」 ―京都大学吉田キャンパス・大阪大学豊中キャンパスを事例に―
洛南高等学校 1年 宮崎 聖也
本研究では、学生街に対するイメージを確立していない中高生の視点から、大学の学生街に密集する飲食店と施設や、中高生が学生街にどのような飲食店・施設を求めているか明らかにし、中高生がもつ学生街のイメージの輪郭を捉えることを目的とする。京都大学・大阪大学の学生街について、洛南高校・附属中学校のそれぞれ1年生を対象に、グーグルマップによる視覚的な情報を元にアンケート調査を実施した。結果、大学間での違いはあまりみられなかった。実際に学生街を構成する飲食店には比較的滞在時間の短いものが多く、比較的滞在時間が長い居酒屋などは他の飲食店ほどは需要がないことが明らかになった。中高生が学生街に求める施設・飲食店と、実際の構成要素としての施設・飲食店には違いがあった。ここから中高生と大学生の価値観の違いが見出せた。この調査から、大学をみる1つの観点としての「学生街」の可能性を感じることができた。
61 花火大会を後世につなぐために~「水都くらわんか花火大会」から考える持続可能性~
京都教育大学附属高等学校 2年 古波蔵 理紗
日本の夏の風物詩とも言える花火大会だが、コロナ禍以降、全国的に資金灘や後継者不足等を理由に途絶えてしまう事例が増えている。大阪府枚方市では、20年前に花火大会が途絶えたにも関わらず、近年「水都くらわんか花火大会」として実行委員会の方々の8年間の活動により復活し、多くの人が訪れる夏の終わりの一大イベントとなっている。全国的に見ても一度途絶えた花火大会が復活することは稀であり、枚方市の花火大会に後世へと花火大会を受け継いでいくための秘訣が隠されているのではないかと考え研究に取り組んだ。本研究では文献調査やフィールドワーク、花火大会関係者への聞き取り調査を行った。また、他の花火大会での例を調べて比較した。その結果、花火大会の運営にあたり、安全確保のために管理や警備を徹底したり、市民からの声を取り入れ、信頼関係を築くことでコミュニティからの理解を得ることなどが重要であると分かった。
62 堺浜における環境再生活動とゴミ問題
ヴィアトール学園洛星高等学校 1年 山田 裕斗・竹川 想太朗
大阪府堺市沿岸部の「堺浜」と呼ばれる地域では、かつての工業用地を利用した環境再生活動が行われている。このような取り組みは全国でも多くないが、非常に先進的な取り組みである。今回、堺浜の現状を調べるため、資料調査・役所への聞き取り、およびフィールドワークによる調査を行った。調査をした結果、堺浜では人工干潟や砂浜などの環境再生施設の建設や、行政・市民団体による清掃・環境調査といった管理活動が活発に行われていることが分かった。その一方で、大和川という大河川の河口付近という地形的な原因もあり、多くのゴミが漂着していることも明らかとなった。また、一部利用者によるポイ捨てと思われるものも散見された。堺浜の環境を守るためには、堺浜での管理活動の活性化はもちろん、大和川流域地域におけるゴミの管理も必要である。また、今後来訪者の増加が予想される堺浜では、ポイ捨てへの取り締まりの強化も必要であると考える。
63 苔の環境と発生について~光で文化遺産は守られるのか~
追手門学院大手前高等学校 2年 安部結奈・小野 茜
秋芳洞を訪れた際、苔の生育に関心を持った。そして苔の生育しやすい環境を追及し、有効活用を目的に研究を開始した。国内外の苔を研究対象とし、苔庭で有名な唐招提寺での「苔の魅せ方」の調査や、インターネットでのデータを駆使し苔の有効活用の実態を調べた。苔の生育できる環境を分析したうえで気候要素ごとに区分けした。その結果、世界では北半球の冷温帯に多く分布しており、日本では全国に広く分布していることが判明した。日本における理由の一つとして、温暖湿潤気候における湿度が関連していると考察した。そのようなデータから、苔の特徴によって幅広い分野で苔の有効活用が提案できるのではと考えている。一つ例を挙げるのならば、苔は少ない光の量で生育できるため、隣接している建物によって光を遮られたビルなど日当たりが少ない場所でも育てることが可能になる。このように苔の生育を工夫することにより、環境保全の面で有益性が想定される。
64 未来首都開拓
追手門学院大手前高等学校 2年 林 楓真・根岸龍一
本研究は、日本の首都移転の理由と未来都市予想図を考察することを目的とする。政治・経済の中心が東京である本国では、首都の負担が重く、防災の観点からもその役割を二分させることは必須の課題といえる。東京への一極集中を回避させることが、我々の研究の出発点となった。過去の首都の調査から、標高20m前後、降水量1300mm、気温15℃、盆地・平地が多いことが特徴として挙げられる。未来首都候補地として、一つ目は従来の条件を満たす茨城県つくば市、二つ目は地球温暖化・海面上昇対策を考慮した宮城県仙台市、三つ目としてあえて都市を設定せず未来社会に対応する仮想現実を考えた。首都移転は、日本の未来を大きく左右する重要な課題である。今回の研究を通して、首都移転には様々な視点から議論が必要であることが認識できた。今後、各候補地の詳細な調査と議論を重ね、未来の日本にとって最適な首都像を研究していく必要がある。
65 六甲山地の土砂災害の歴史と砂防事業の発達の研究 〜30年ごとに繰り返された災害に立ち向かう〜
大阪教育大学附属高等学校池田校舎 1年 平栗 花
兵庫県の六甲山地では、地元で「ほぼ30年周期で大規模な土砂災害が起きる」と伝えられ、神戸市、芦屋市などの小学校でもそのように教えられる。しかし1967年に起きた7月土砂災害から今に至る56年間は目立った被害は見られない。これは高度に発達した六甲山砂防事業の成果であると推測し、土砂災害がどのように減っていったかを被害規模を示しながら明らかにする。六甲山の土砂災害の歴史を1000年以上遡り、言い伝えは正しいのかどうか検証する。六甲山で採取した花崗岩に水を染み込ませその崩れやすさを実証し、六甲砂防事務所での聞き取り、砂防えん堤や土石流発生監視装置(ワイヤーセンサー)設置現場での観察を通じその仕組みを発信する。六甲山の麓に住む多くの人々にとって、砂防えん堤やサイレンに繋がるワイヤーセンサーは、まさに「命を守る技術」と言える。地理、歴史、技術を知ることにより正しい防災知識が得られることを伝えたい。
66 大阪の運河の消滅要因と現在の状況について
履正社高等学校 2年 平山寛朗
大阪市内はかつて江戸〜明治時代にかけて、現在のアムステルダムと同じように運河と人が共存する街並みが広がっていた。しかし、その殆どは現在道路となり、運河が存在した影も無い。この研究ではその理由と現在の状況を調査すべく、地理院地図に記録されている年代別の写真の分析と、博物館での資料収集、実地調査を行った。その結果、戦前から高度経済成長期にかけての公害問題や、護岸のコンクリート工事により、人々は運河を主体とした交通を必要としなくなり、車の普及に伴い道路の整備を急いだため、次々に埋め立てられたことがわかった。また、現在残る運河の利用状況についても、道頓堀では観光用の水上バスが運用されている他、大川を経由し大阪湾に注ぐ流域には僅かながら砂利、土砂運搬船を運行する会社が存在することもあり、細々ではあるが現在残った運河についても活用されていることがわかった。
67 日本周辺のマイクロプレートの境界決定
神戸大学附属中等教育学校 5年(高2) 瀬戸 碧
日本周辺には4つの大きなプレートがあると考えられているが、そのプレートを細かく分けることで地殻変動の説明がうまく出来ると考えられている。この研究は日本周辺に存在しているであろうマイクロプレートの境界を決定することを目的としている。プレート境界の決定には主に地殻変動データと地形、震源の位置を考慮することが多く、この研究ではマイクロプレートの境界を決定するにあたって、地殻変動の観測データや震央のデータを用いた。これらのデータについて,GISを用いて一つの地図に表すことで境界を決定した。また、マイクロプレートの存在の有意性を調べるにあたって、自ら設定したプレートの運動をオイラーの定理を用いて確認した。これらの調査により、日本周辺には10枚以上のマイクロプレートが存在していると考えられる。
68 地質と土砂災害の関係性
神戸大学附属中等教育学校 4年(高1) 木川晴道
私の今回の研究テーマは、地質と土砂災害の関係である。過去数年分のデータを国土地理院の報道発表資料から取り、起こった場所を特定し、その場所の地質を地質図Naviを使うことで特定するというものである。そもそも、この研究を始めたきっかけは昨年度調べた、学校の土砂災害の避難所としての適性を調べた際に、学校付近の地層を構成する、花崗岩が脆く割れやすく、花崗岩は土砂災害を起こしやすいのか気になったためである。今のところ、崩れた地層は砂岩泥岩から凝灰岩まで幅広く、思ったような規則性がみられていない。もう少し詳細な分析が必要だと考えられる。さらに、土砂災害の発生場所も住宅地の事例が多いが、山奥の国道もある。このようにあまり規則性が見られなかった部分が多い。しかし、岩石の傾向等については一定数の規則性があるように見える。来年は地質だけでなく、その他の視点からも原因を考えていければと思う。
69 官民共同減災インフラとしての自動販売機の可能性 ―神戸市東灘区における実態調査を通じて―
神戸大学附属中等教育学校 5年(高2) 坂本泰惺
本研究では、世界的に見て独特な発展を遂げた日本の自動販売機を、官民共同の「減災インフラ」として活用できる可能性を明らかにした。大震災の経験をもつ神戸市東灘区を分析対象として、同区内の全自動販売機の分布と一時避難先である避難場所の立地との関係をGoogle MapとArcGISを用いて確認した。分析の結果、確認された924台の自動販売機のうち、約3分の2が全40か所の避難所から徒歩5分圏内に設置されていることがわかった。これらの自動販売機を災害直後に利用できるようにすると、各避難所に備蓄されている飲料水の約3倍の飲料水を確保できることが判明した。したがって、民間で運営されている自動販売機を一種の水資源とみなして、災害直後に自治体による費用負担のもとで利用可能にすると、エコノミークラス症候群に代表される災害関連死を抑制するなど、官民共同の「減災インフラ」の役割を果たす可能性が期待される。
70 内水氾濫の浸水深予測に基づいて最適な避難経路を表示するGISを作ることはできるか
青翔開智高等学校 2年 勢登拓海
本研究では、Esri社の「ArcGIS Pro」を用いて鳥取市中心部の内水氾濫に焦点を当てたハザードマップを作成することで、最適な避難経路を表示することが可能か考察した。まずはプロトタイプとして、内水氾濫の発生時に0.5メートル以上の浸水が予測されている地域を通過不可区域に割り当て、任意の地点から最寄りの避難所までの安全と考えられる避難経路を出力できるハザードマップを作成した。このプロトタイプについて、鳥取市役所危機管理課の職員の方を対象としたインタビューを実施し、一部に鳥取市の避難計画との矛盾があるものの、避難の際の一つの指標になるとのフィードバックをいただいた。併せて、避難経路の距離や避難場所の階数の表示といった改善点についても指摘をいただいた。今後は内水氾濫だけでなく、土砂災害など関連する災害についても対応できるように改良していこうと考えている。
71 因美線(智頭-東津山間)存続の課題に対応する公共交通の利便性向上の可能性
鳥取県立鳥取西高等学校 2年 縄田清太・津﨑龍星
JRローカル線は深刻な赤字となっており,鉄道の運行量、駅までのアクセスといった理由により利用者への利便性も欠けている。本研究では,JR因美線(智頭ー東津山間)を対象に,財政と需要の観点から,廃止・BRT転換・現状維持等の存続案を検討した。財政や利用状況の評価は,地域公共交通を議論する上で,JR・地方自治体・住民にとって重要である。人口統計資料や自治体へのインタビュー調査から,当区間は津山市街地に通学する中高生の利用はあるものの,智頭・津山の2地点の移動は殆どないことが分かった。需要のある区間のみ存続させ,県境付近の区間を廃止し,代わりにデマンドバスを運行することが妥当策と考えられる。存続する区間には駅を核とする短距離移動のバスを充実させ,JRとの乗り継ぎの接続を図ることで二次交通の問題を改善できると考えた。
72 交通弱者の生活支援の視点に立った交通サービスの現状と課題-「玉原地区助け合い友の会」を事例として-
岡山県立玉野高等学校 2年 田中沙和・佐藤千明
地域のコミュニティ協議会が生活支援事業の一環として行う通院や買い物への付添サービスが、交通弱者の移動手段の確保につながっている岡山県玉野市玉原地区の事例を取り上げ、交通弱者の生活支援の視点に立った交通サービスの現状と課題について考える。玉原地区は1960年代に山の斜面を造成して開発された工業団地と公営住宅などの住宅が多く立ち並ぶ地区である。国勢調査(2020年)結果によると、不詳を除き玉原地区の老年人口の割合は44.5%を占める。生活支援事業は埼玉県上尾市尾山台団地自治会の「助け合い友の会」をモデルとして、2013年、玉原地区コミュニティ協議会の下部組織として「玉原地区助け合い友の会」が発足し、開始された。利用者も増え、活動は順調に推移したが、コロナ禍により2020年以降、活動が中断された。利用者からは再開を望む声がある一方、運営側の高齢化による人員不足が影響し、再開できずにいる。
73 ArcGISを用いた海洋ごみ問題解決への実践 -アプリによる市民協働への挑戦-
山陽学園高等学校 2年 小橋愛美・福原瑠奈・原帆希・栗原夏歩・酒匂瑛葉・森本綾・山本真鈴・湯浅亜子・大本真・岡崎華・西村菜々心
瀬戸内海の海洋ごみの約8割は陸域起源の生活ごみであり、生活圏でのごみの発生抑制は有効な解決手段である。しかし、回収・啓発活動は一部の熱量ある市民の参加に限定される。課題解決に向け、ArcGISを用いた自作アプリを作成し、市民へ使用してもらった。アプリはごみの種類・個数、位置情報や写真の送信が可能であり、ごみの見える化を可能とする。アプリの使用による解決方法は、参加への入口のハードルを下げ、裾野を広げることで多くの市民の参加を促し、市民が収集したごみデータは解決への根拠となる。このデータは行政や企業が持つデータと併せることで、有効な解決策を生み出す。具体的には、水門本来の治水機能だけではなく、ごみの海洋流出の防止機能として有効である。市民協働による生活圏でのごみデータが課題解決に役立つことで、解決への貢献意識の醸成と行動変容に繋がり、市民を廃棄者から解決者への自覚を促し、ごみの発生抑制を達成できた。
74 『デジタル』×『リアル』で命を守る ~観測地震学と防災心理学の観点から捉える宮崎の防災~
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 高校2年 工藤日花里、高校1年 上埜五喜
宮崎県内で将来発生することが想定されている地震・津波災害から,1人でも多くの命を救うことを目的として,「先端技術(デジタル)」と「フィールドワークによる現地調査(リアル)」を組み合わせた文理融合型の研究を行っている。「観測地震学」の観点からは,京都大学防災研究所山下助教との協働により,学校内に高精度地震計を設置して,日向灘等で発生する地震の観測活動を日常的に実施している。「防災心理学」の観点からは,九州大学人間環境学研究院杉山准教授との協働により,宮崎市青島地区において,津波避難訓練アプリ「逃げトレ」を活用した実践的避難訓練を実施し,避難誘導看板の問題点や,新たな避難場所になり得る微高地の存在を確認した。また「逃げトレView」の実証実験にも参加し,人々の避難時の行動特性分析を行うことで,ハザードマップからは読み取ることができない地域の隠れたリスクを見出し,新たな避難ルートの検討を行った。
75 地域の防災力を向上させる ~宮崎県五ヶ瀬町におけるフィールド調査と地域防災活動~
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 高校2年 川内馨・伊藤陽希
本研究の目的は,中山間地域に位置する宮崎県五ヶ瀬町において,フィールド調査を実施し,様々な地域防災活動を企画・運営することを通じて町民の防災意識を高めることである。まず,五ヶ瀬町の防災訓練の現場においてフィールド調査を実施したところ,年齢層によって防災訓練の参加率に大きな差異があることが明らかとなった。高齢者の参加率が高く若年・青年・壮年層が少ないのは,仕事等のやむを得ない事情もある一方で,防災への関心の低さが主要因であると分析した。そこで,町の防災担当課とも連携して,気軽にいつでも防災情報を取得できるような,青年・壮年層向けの「防災サイト」を作成した他,若年層に重点を置いた防災活動として,町内の小学校において防災に関する出前授業を実施した。出前授業の事後アンケートでは100%の児童が「防災について理解できた」と答えており,「町民の防災意識を高める」という目的に着実に近づきつつある。
76 3Dデータで知る放置林 〜ドローン空撮とGISを活用した学校林の分析〜
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 高校2年 中村栄太
適切に手入れがなされていない人工林が全国的に増加する中,少子高齢化や人口流出による林業の担い手不足から,そうした「放置林」における土砂災害リスクの増大や生態系の破壊が深刻化している。本研究では,ドローンや3Dモデルの活用により森林管理が効率化され,林業の労働生産性が向上することを目的に,約30年間ほとんど手入れがなされていない本校の学校林を対象として様々な分析を行った。写真測量ソフトを用いて,ドローン空撮画像を基に作成した点群データから3Dモデルを生成し,それを3Dプリンタで出力することにより,学校林の地形の全体像を把握し,植生調査に活用した。また,GISを活用して,作成した点群データと衛星写真とを重ね合わせることで,過去と現在における植生分布について比較を行った他,樹冠の中心位置データを基に樹木の密度の計算を行い,適切に間伐等が実施されている森林かどうかを簡便に把握できるようにした。