2022年春季学術大会 高校生ポスターセッション(オンライン)発表タイトルおよび要旨

  参加申込に関する情報:https://www.ajg.or.jp/20220228/12169/

発表番号,「発表タイトル」,発表者(学校名),発表要旨
(発表者中の下線は筆頭発表者)

01,「100%プラスチック袋を環境に配慮した袋に―消費者が求める性能より―」
   梅田恭圭(神戸大学附属中等教育学校)
(発表要旨)
 最近、レジ袋有料化が施行され、環境に配慮することを各企業に義務づけたが、100均などで購入できるプラスチック袋はまだ100%ポリエチレンから製造されている。このプラスチック袋の売り上げがレジ袋有料化後に伸びた、という矛盾を解決するために、プラスチック袋を環境に配慮した袋に変える、ことが本研究の目的である。また、ただ環境に配慮した袋を提案するのではなく、消費者により受け入れてもらえるように、本校で保護者に対してアンケートを行い、プラスチック袋を購入する理由で一番多く挙げられた「ゴミをまとめる」袋に、どのような性質を求めるのかを調査した。これに加え、用意した16種類の袋に対して耐久性・防水性・撥水性・価格・重量の観点で実験を行い、消費者が求める性質に沿った袋を提案する。また、実際に市が指定しているゴミ袋を販売する際に、環境に配慮した袋を同封してみてはどうか、神戸市環境局に提案を行った。

02,「「地震の時には竹やぶに逃げ込め」は本当か?」
   竹村日麻里・矢野いのり・山内陽斗(京都府立桂高校)
(発表要旨)
 阪神・淡路大震災は、マグニチュード7.2の地震で京都付近でも震度5を記録した。中でも私たちの住む西京区は、住宅損壊の被害が京都府内で一番多く、特に学校近くの樫原断層周辺の被害は大きかった。また、この断層を含む京都の西山周辺には竹やぶが多いこともあり、伝承としての「地震が来たら竹やぶに逃げ込め」は本当か?という問いを立て、自然災害と竹やぶの関係を調べようと考えた。調査方法としては、震災被害の大きかったところや桂川沿いの浸水被害の大きなところを歩き、ハザードマップと竹との関係を調べ、文献調査による探究も行った。結論として、手入れ無しの放置竹林では、地表を網のように覆うことが多いため涵養能力がなく、地下茎が腐食・枯死し土砂災害の原因ともなってしまうこと、手入れ有りの竹林は泥の洪水が荒々しく流れる川の護岸を支えるとともに、山崩れ発生時に崩落を免れるなど、自然災害時に強さを発揮することがわかった。私たちは、昔の人の知恵を信じ現在の防災に生かしていきたい。

03,「海洋プラスチック問題を解決するために~学校のペットボトルをゼロにする試行実験を通して~」
   北川菜穂(神戸大学附属中等教育学校)
(発表要旨)
 海洋プラスチック問題を解決するために、不必要な使い捨てプラスチックを削減することが有効な方法だと考えた。その中でも高校生にとって最も身近だと考えたペットボトルに着目し、それを削減して水平リサイクル率が高い缶に入れ替えることを提案した。そしてその取り組みを試行実験として所属する学校で全校生徒を対象に行った。実験の事前アンケートでは90%以上の生徒が問題の存在を知っており、生物や人体への被害を危惧し解決の必要性を述べる意見が多くあったものの、事後では実験後に環境を守るために不便を受け入れたくないと考える人が全体の約25%を占める結果となった。本実験を通して、多くの人が環境問題の解決が必要だと考えているものの、そのために自分が行動することには消極的な人が一定数いるとわかった。よって人々が環境問題を自分事として考えられるようにする方法を今後検討していくべきだと考える。

04,「京都西圏街おこし計画」
   瀧石祐斗・岩脇誠・篠嵜晴斗・髙橋 渚(京都府立桂高校)
(発表要旨)
 京都市の地図にかつての平安京の中心線を書き入れると、東に偏った街づくりが伺える。神社・仏閣や宿泊施設の数で比較しても、私たちの住む西圏にはその数が圧倒的に少ないことがわかる。西を流れる桂川は氾濫を起こしやすく、太古よりたびたび流路変更を繰り返し、河川の付け替え工事が行われてきた。一方、東を流れる鴨川流域は河岸段丘となり高燥で水害が少なかったことも東圏が発展してきた一因となっている。
 私たちは、RESAS(地域経済分析システム)を活用し、京都観光の新たなターゲットである家族連れや男性客を意識し、また伏見稲荷や清水寺と並んでツイッター検索件数が多い「イオンモール京都桂川」をヒントに、西圏を活性化し人を呼び込むための方策を考えた。

05,「「コンビニがコンビニを呼ぶ」は本当か?」
   岡﨑光陽・塚本倖平・藤田翔輝(京都府立桂高校)
(発表要旨)
 桂高校からほぼ等距離(250m)の同じ側に、セブンイレブンが2つある。なぜ同じコンビニがこんなに近くで競合しているのか?このことから私たちは「コンビニがコンビニを呼ぶ」のではないかと仮説を立てた。そこで学校のある阪急桂駅(特急停車駅)と近鉄伏見駅(伏見区は京都市で人口・コンビニ数とも最大)から半径2km圏内のコンビニを調べ、出店要因を考察した。中でもセブンイレブンはドミナント方式による戦略的な店舗の配置で効率の良い配送の仕組みを作り、地域に浸透しよく見かけるからこその安心感を築いている様子がうかがえる。47都道府県最後の出店となった沖縄県では、この中核となる工場や配送センターの整備の遅れがあり競合他社の出店に先を越される形となった。もしも仮想都市にセブンイレブンを出店するなら?ドミナント方式の出店モデルを作成してみた。

06,「高齢者にとって住みやすい地域づくりを考える-高齢化率日本一の村を訪ねて-」
   後藤果純(群馬県立高崎女子高等学校)
(発表要旨)
 日本では現在、高齢化が叫ばれており、それはとどまることを知らない。私は、総人口に占める高齢者率が増加することで、地域づくりに高齢者の方の意見を今まで以上に反映させていく必要があるのではないかと考え、高齢化率が64.65%(令和3年1月1日現在)と日本一の村である南牧村を訪問し、村役場で高齢者支援についてお話を伺った。そこで、南牧村で行っている高齢者支援のうち、安否緊急通報システムと乗合バス・乗合タクシーの無料乗車券についての認知度と利用率が大きく異なることを知り、その背景を考察するため、南牧村雨沢地区を対象として、その居住者に調査を行った。その結果、両者のサービスの需要の違いとその背景を明らかにすることができた。本研究のデータは、南牧村と似たような地理的条件をもつ市町村で応用することにより、高齢化社会の地域づくりにおいて住民のニーズを知る手がかりになることが期待される。

07,「地方農村地域における人口増加要因の探究-三重県度会郡玉城町を事例として-」
   本橋 昂・石田佳奈美・百田幸太郎(三重県立松阪高等学校)
(発表要旨)
 ①研究目的:人口減少地域の中で例外的に人口増の見られる自治体の人口増加要因の探究 ②研究対象地域:三重県度会郡玉城町 ③データ・研究手法等:国勢調査、関係自治体地区別人口動態、関係自治体役場聞き取り調査等により取得したデータを、メッシュマップで可視化し検討を行う。 ④結果・考察等:南北に長い三重県では、名古屋市や四日市市の通勤圏に含まれる一部の北勢地域自治体では人口増が見られるが、他の自治体は人口減となっている。その中で例外的に南勢地域に位置する玉城町は、2005年から10年間人口増となっている。その状況を、町内地区単位の人口増減、世帯人数変化、年齢別人口動態等の指標を通じて確認し増加要因を考察した。町内でも地区により人口増減が異なり、地区ごとの交通アクセスや社会資本等の集積等の諸要因を、聞き取り調査を交えて分析した。また中心部の旧市街地では世帯人数の顕著な減少がみられ、高齢化の進展が考えられる。

08,「三角点から考える地目の謎 ~栃木県さくら市の小中学校と鉄道用地の関連性~」
   佐々木良真・加藤 湊(栃木県立矢板東高等学校)
(発表要旨)
 国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」において、栃木県さくら市内の学校の敷地内にある三角点「氏家中学」・「長久保」・「勝山」の現況地目が「学校用地」ではなく「鉄道用地」となっていることを疑問に思い、フィールドワーク・文献調査・聞き取り調査を通してその理由を探った。
 各三角点を訪問すると、いずれも学校の敷地内に三角点があったが、新旧地形図の比較では各三角点が異なる場所から移転された可能性が読み取れた。国土地理院の方への聞き取りの結果、「長久保」「勝山」については移転の事実が確認できた。文献調査では、「氏家中学」は旧喜連川人車鐵道、「長久保」は東北本線旧線のそれぞれ近くに位置し、「勝山」は近くに東北本線の停車場を誘致する動きがあったことがわかった。
 以上のことから、三角点移転前の地目が「鉄道用地」であったと推察され、それが現在の表記に繋がっているのではないかと考えた。

09,「地理院地図を用いた防災教育」
   越前舞子・佐々木怜美(宮城県仙台二華高等学校)
(発表要旨)
 東日本大震災から10年以上が経過し、当時の記憶がない子供たちが増えた現在、防災学習がより重要になっている。本研究では、小学校の6年生83名を対象に地理院地図を活用して授業を実施し、授業の前後における防災意識の変化についてアンケートを用いて調査した。この小学校の学区内に2本の活断層が通っており、断層を境に土地成因や標高が大きく異なる。授業では家の近い児童どうしで班を作り、自分たちの住む土地の特徴を調べ、被害に遭う可能性の高い災害について避難プランを作るという活動を行った。アンケートから、地理院地図は児童の興味を引く手段として、また土地の特徴を知る手段として有効だった一方で、実際に授業後に家庭で使用したり避難プランを作ったりしたと答えた児童は少なかった。他の学校での授業でより効果をあげるためには、このデータをもとに、十分で簡潔かつ家庭でもう一度実践できる内容に改善する必要がある。

10,「秋田県大潟村の農業による人口減少抑制」
   橋田 凜香(東京都立三鷹中等教育学校)
(発表要旨)
 本研究では、農村における人口減少を抑制する方法を考察する。そこで、人口減少の著しい秋田県において大きな減少に転じていない大潟村を事例に取り上げた。農業と人口の関係性について、文献調査、秋田県県勢要覧などを用いた統計分析及び大潟村役場職員への聞き取り調査を行った。
 開村当時の主業農家による大規模な米の単作は、現在においても維持されていることが経営規模、経営体制、農業産出額に占める米の割合における秋田県との比較で読み取れる。その結果、他地域に比べて効率的で高収益な農業を実現している。また、近年では現代のニーズに合わせた生産をしている。
 このように、大潟村では農業に魅力をもたせ、新規就農者のUターンを促進し、人口減少抑制の要因になっていると考える。農村を維持していくためには、「若者が戻りやすい村」として受け入れ体制を整え、働きやすい環境づくりをすることが大切だと考える。

11,「埼玉県越谷市せんげん台駅西口周辺における空き店舗の活用」
   大島一平太・大山椋也・櫻井海英・西川優樹(獨協埼玉高等学校)
(発表要旨)
 埼玉県越谷市にある、東武スカイツリーライン・せんげん台駅西口の地域は、田や湿地が広がる地域から、高度経済成長期以降、首都圏のベッドタウンとして、宅地および商店の開発が進んだ。およそ40年が経過した現在、街を観察すると、駅から徒歩5分圏内の商業をするには好立地の地域で、空き店舗が複数確認できた。
 本研究では、せんげん台駅西口の空き店舗の活用について、他の駅前の商店や土地利用と比較をしながら考察する。調査方法は、現地の観察および住民へのインタビューを主に行った。現地調査およびインタビュー調査を通して、駅前には飲食店が多い傾向が分かったが、飲食店の新規参入には地価の問題があることが分かった。また、地元住民の多くが住民同士の交流の場を求めていることが分かった。これらを踏まえ、せんげん台駅西口の空き店舗の活用について考察した。

12,「加古川市の中心商店街「ベルデモール」における路上飲食の実態と改善」
   奥 由衣・小林由奈・林 ふづき・福永彩乃(兵庫県立加古川東高等学校)
(発表要旨)
 加古川市の中心駅であるJR加古川駅の南側にのびるベルデモール商店街では、路上飲食による景観への悪影響が懸念されている。そこでその実態を調査し、改善策を提案する。まず、本校生徒に路上飲食に関するアンケートを行ったところ、①路上飲食に対する印象では、否定的な意見が7割を占めたが、マナーを守れば路上飲食しても良いという意見もあった。②路上飲食をした理由については、飲食場所の不足が過半数を占めた。次にベルデモールにおいて、路上飲食者の年代、人数、場所等、立食等の飲食状況について実態調査を行った。その結果、路上飲食者の全員が高校生であり、特にコンビニ周辺で立ち食いしている人が多かった。日ごとの人数は近隣の学習塾が休みである曜日に減少していた。これらの結果から、適所に机を設置し飲食者がマナーを守ることで景観改善に繋がると考えた。また飲食者の殆どが塾生であるため、今後塾側に飲食場所の提供を促したい。

13,「持続可能な交通環境の整備へ向けて―柏市南部地区を事例として―」
   岸本楽進(専修大学松戸高等学校)
(発表要旨)
 千葉県北西部に位置する柏市は、中心部や北部ではバス及び鉄道路線が張り巡らされ、公共交通機関が充実し、人々が便利で快適に過ごせる環境にある。一方、中心部から離れた逆井、増尾などの南部地区では未だ交通環境が整備されておらず、自家用車を持たない高齢者を中心とした「交通弱者」の増加が将来危惧される。
 そこで本研究では、文献調査及び高齢者対象の聞き取り調査を通じて、柏市南部地区の交通環境の現状と課題を把握し、また同地区の持続可能なまちづくりの展望について考察を行った。
 研究の結果、南部地区は隣接する松戸市との境界線に位置し、市を越えての交通環境の整備が困難であること。また、周囲を走る複数のバス会社どうしの利害関係が絡み、バスルートの改善が容易でないことが挙げられる。解決策として、住民による市域を越えた交通環境改善向けた両市やバス会社への請願活動が挙げられ、そのための自治会が果たす役割は大きいといえる。

14,「地方都市へのLRT導入による持続可能なまちづくり」
   海野敦也(延岡青朋高等学校 通信制) 
(発表要旨)
<研究の目的>現在、宮崎県では、モータリゼーションによる社会的問題が急増しており、高齢化も相まって交通事故数の増加や慢性的渋滞などが起きている。このような事態を改善するため、宮崎県でもLRTの導入を行う必要性を研究する。
<対象>宮崎市・日向市・延岡市<データ>統計宮崎・高知県統計書など国土交通省LRTの導入支援、トラムウェイ・ド・ニース。
<調査方法>国内LRT導入都市の現地調査、LRT関連企業へ取材、海外との比較。
<調査結果・考察等>LRTの敷設費用は他の新交通システムに比べ安価である。また車に比べCO2排出量も少なく、定時性・大量輸送性に優れている。欧州では人口10万人以下の都市へのLRT導入例もある。欧州では中小都市へのLRTの導入によって公共交通網による輸送が発達しており、鉄道とバスの中間的存在として地域の土着的な輸送需要に応えている。交通環境負荷の軽減や景観整備、車に代わる地域住民や観光客の新たな交通手段として、LRTを導入する意義はある。

15,「地震に強い地域づくり-文京区茗荷谷町会を事例に」
   畠山結衣・加藤舞子・馬淵彩桜・松川瑛奈(お茶の水女子大学附属高等学校)
(発表要旨)
 文京区茗荷谷町会地区を事例に地震に強い街づくりを行うことを目的とする。東京都市整備局のデータから、お茶の水女子大学附属高等学校近くの文京区小日向三丁目が都内で最も災害活動困難度が高いランク5に位置付けられていると知った。そこで、その一部を範囲とする文京区茗荷谷町会にインタビューやアンケートを行うことを通して課題と対策を考察した。その結果、災害活動困難度が高いことを地域住民が認識していないこと、避難所不足がコロナ禍で一層深刻化していること、文京区の取り組みが住民に知られていないことなどの課題が見つかった。課題解決のためには、コロナ禍でも住民同士や文京区と住民の交流が大切であるという結論に至った。そのため、文京区の既存の防災アプリを改良し、災害時に避難所の空き具合を通知したり、質問やイベント企画を提案したりできる機能を追加し、若い世代からお年寄りまで顔の見える関係性を構築することを提案する。

16,「新型コロナウイルス流行禍において新たな修学旅行客を神戸へ呼び込むことは可能か-高校生のニーズを手がかりとした一考察-」
   尾縄はるか(神戸大学附属中等教育学校)
(発表要旨)
 本研究は、新型コロナウイルス流行禍において、「神戸に新たな修学旅行客を誘致することは可能であるか」について、修学旅行における学生のニーズをアンケート調査などから明らかにした。また、それらを踏まえ神戸に新たな修学旅行客を誘致するためのアピール方法を提案した。修学旅行の中止や行先変更により悪影響を受けた地域がある一方、新型コロナウイルス流行以前と比べて修学旅行客が増え、好影響を受けた地域があった。このような地域は、人口の少なさや感染状況の落ち着き、関東や関西など人口が多い地域からの移動が容易な環境という傾向がみられること、いずれも旅行会社への助成制度の整備が明らかとなった。神戸市も同様の傾向があり、新たな修学旅行客の誘致は可能と結論付けた。アピール方法としては神戸以外の観光地と合わせてのアピールおよび高校生からのニーズが大きい観光地のアピールを提案した。

17,「アフリカにおける緑化支援の可能性-コンゴ民主共和国を事例にして-」
   阪上由夏(洛南高等学校)
(発表要旨)
 コンゴ民主共和国では770万人が飢餓に直面しており、国内の栄養状態は深刻な状況にある。コンゴの農業をめぐる通時的比較および分析を通し、その一因として国内の農業生産が不十分であること、食糧を輸入する十分な収入がないことの2つが挙げられると分かった。この国では長年にわたる過度な土地利用から、多くの地域で土壌の荒廃・森林の減少が進んでいるため、収穫量の向上のために土壌の再生が、栄養状態と収入の向上のために食糧源としての森林の再生が必要である。しかし、現地では植林技術を伝えるガイドラインが存在しない。そこで、日本森林技術協会への聞き取り調査に基づき、同協会が現地で開発している土壌改良及び造林技術を基にした植林技術のガイドラインの作成及びこれを用いた講習の実施が効果的であるという結論に至った。それらが現地に取り入れられれば、森林を重要視する姿勢につながりコンゴにおける食糧状況の改善に結びつくはずだ。

18,「観光都市における近代化産業遺産の保存と活用-琵琶湖疎水記念館を事例として-」
   大石晴貴(洛南高等学校)
(発表要旨)
 琵琶湖疏水とは、琵琶湖の湖水を京都市へ供給するために作られた水路であり、経済産業省が2007年に認定した近代化産業遺産の1つでもある。完成100周年を記念して作られた琵琶湖疎水記念館について、観光名所化した文化財が観光地として地域でどのように認識されているかを考えた。
 琵琶湖疎水記念館の2015年から2019年度までの来館者数、2015年から2019年までの京都市の観光者数、琵琶湖疎水記念館周辺の施設や建造物、駐車場の数などを踏まえ、2021年度実際に校外学習で琵琶湖疎水記念館に訪れた附属中学生に対して満足度や再度訪れたいかどうかなどを問うたアンケート調査を行い、その結果をもとに考察した。
 そこから、課題はあるものの歴史ある琵琶湖疎水を観光地化し文化財を後世に残すという目的はある程度達成されており、教育目的で訪れる地元の学生団体も一定数いるため、これからも観光地として地域から十分受け入れられていくと考える。

19,「多摩ニュータウンの開発と乞田川の流路の変遷」
   加藤千春・土橋茜音(東京都立立川高等学校)
(発表要旨)
 多摩市には乞田川という、昭和40年代に多摩ニュータウン開発によって真っすぐに改変された川が流れている。本研究では、地図や資料を利用した文献調査、フィールドワーク、東京都建設局の方へのインタビュー調査によって、乞田川の流路の変遷と地形との関連を探った。フィールドワークによって、川が蛇行していた様子がよく分かり、過去の流路が推測できた。かつての流路は標高が低くなっており、暗渠や道としての痕跡がみられた。これらの痕跡から、以前の川の氾濫原や、開発による盛り土などの様子が推測できた。また、資料から開発前は蛇行し、洪水を繰り返していたことがわかったが、開発後から現在まで氾濫が起きていないことから、乞田川の大規模な改修は水害を防ぐ面では成功したといえる。一方で、現在の川はコンクリート護岸で深く掘られていて人が入れるような川ではないため、親しめるような川にすべきだという課題が残っている。

20,「多摩ニュータウンの丘陵地形と盛土・切土」
   櫻井 茜・藤崎結羽(東京都立立川高等学校)
(発表要旨)
 一般的に盛土の造成は基準に沿って行われるが、熱海の土砂災害のように災害をもたらす可能性がある。私達の住む多摩ニュータウンは大規模な造成によって作られた土地で、盛土された場所が多数あることを知り、現在の地形への現れ方と防災面での危険性について調査を行った。まず盛土造成地マップを基にフィールドワークを行い、勾配のある土地を平坦にする盛土の特徴的な形が各所で確認できた。また、多摩市防災安全課の方に盛土の危険性についてインタビュー調査を行い、市内で過去15年以内に崩れた場所は盛土された場所よりも自然の崖の方が多いことが分かった。フィールドワークでは高さ20mにも及ぶ、大規模な盛土が見かけられたが、急坂を緩やかにしたり、谷を埋めて平坦な地形にしたりするなど生活に利便性をもたらしていると感じた。しかし、大地震が起きたら崩れる可能性はないのか、盛土の記録を今後も忘れずにいることが大切だと感じた。

21,「日本の都市の歴史的構造と鉄道駅の立地に関する研究」
   鈴木颯太(千葉県立千葉高等学校)
(発表要旨)
 日本の都市において、鉄道駅は開業当初の中心市街地の端に立地することが多い。そこで、近代またはそれ以前における中心市街地から近代の産業革命期に開業した鉄道駅までの距離と、都市の規模との関連について調査した。まず、全国の46道府県庁所在地におけるかつての中心市街地の位置について文献を利用して推定した。次に、その中心と鉄道の中心駅との間の距離について地図を用いて測定したのち、都市の人口との関連を散布図や相関係数を用いて分析し、ここでは都市の人口を複数の年代で調査し、相関関係の違いについても分析した。また、鉄道が開業した年代ごとに都市を分類し、その立地傾向の違いについても考察を行った。これらの分析から、都市の人口と鉄道駅との間の距離には相関関係があり、細かく見ると鉄道が開通した年代やその時期の人口ごとに異なった関係があることが明らかになった。

22,「小町通り商店街における使い捨て素材の削減のための提案」
   谷地田桜子・岡村梨侑・野間口紗英(鷗友学園女子高等学校)
(発表要旨)
 神奈川県鎌倉市小町通り商店街を研究対象とし、使い捨て素材の利用に関する調査を行った。由比ヶ浜の滑川と長谷駅近辺の川の河口にて、10m区画内の海岸ゴミを収集したところ、マイクロプラスチックなどの激しく細粒化されたゴミが多くを占めていた。また、鎌倉市内のゴミ箱の場所を調査したところ、内陸・町中に行くに従ってゴミ箱の数が少なくなることが分かった。内陸・町中には小町通り商店街があることから、購買行動で発生するゴミの行方を明らかにするため、小町通り商店街で観光客や地元住民に街頭でアンケート調査を実施し、食べ歩きをする場所では多様な素材のゴミが偏りなく発生しうることがわかった。小町通りの商店街38店舗について、食べ歩き向けに販売されていると思われる商品を中心に提供状況を現地で観察し、結果使用頻度の高い容器の種類やそれらの容器で提供されている食品がわかった。最後に以上の調査に基づいた提案を行った。

23,「政教分離とイスラム教~地域圏の考察~」
   田中 栞(芝浦工業大学柏高等学校)
(発表要旨)
 今回の研究で、私は「イスラム教と政治の結びつき」について地理的な観点から考察した。2021年にアフガニスタン政権をイスラム原理主義勢力タリバンが掌握し、イスラム法に基づいた政治を執っている。こうした宗教と政治の結びつきの強い原理主義的な国家がある一方で、政教分離体制をとる国家も存在する。そこで、今回はムスリムの多い国を対象とし、この二つの体制の地域圏がどこで分かれているのか、もしくは地域ごとに関連性がなく、その政治指針にのみ違いが表れるのかのどちらであるのかを研究した。
 予想として、「ある程度の地域圏が形成されている上で、欧州寄りの国家は、西洋風習の流入を受け、政教分離体制を敷いている国家が比較的多数ではないか」と考えた。この予想の検証として、イスラム教徒の多い国家を対象にし、歴史的要因や地理的要因などを踏まえて政教分離的政治を執る地域圏とイスラム法主義的な政治を執る地域圏の分布を考察した。

24,「サブサハラ地域での安定した農業の確立に向けて~ネリカ米の事例から考える農業改革を起こすための必要条件~」
   長谷部 光(芝浦工業大学柏高等学校)
(発表要旨)
 本研究ではサブサハラ地域での農業改革を起こすための必要条件について研究した。
 現在サブサハラ・アフリカの人口の41.1%が絶対的貧困に直面している。この現状を打開するためには安定した農業を確立させることが重要だと考える。しかし現状では灌漑設備導入の難航や、アフリカ諸国の財政圧迫といった課題があるため開発がうまく進んでいない。そこで、これらの課題を解決し食糧自給率の向上が期待されるネリカ米に注目し、ネリカ米の特徴や普及課題について文献調査や支援団体へのインタビュー調査を行った。
 その結果、ネリカ米には高収量で陸稲と水稲で栽培でき、環境にも優しいという利点があるが、地元農民の新技術導入への心理的コストや研究費といった問題だけでなく、武装勢力の問題も抱えていることがわかった。安定した農業の確立のためにはこれらの問題を解決し地元農民が主体的に技術採択ができる環境作りが必要だと考える。

25,「AED設置場所の現状及びAED設置の新しい在り方」
   澤山まい・馬場亜実・青松理紗子(清風南海高校)
(発表要旨)
 現在、日本のAEDの普及率は世界一である。しかし、AEDが有効的に使われている現場はそう多くない。そこで、本研究では地方公共団体への問い合わせ、現地調査によって AEDの設置場所が適切かを 、AEDを必要とする心臓発作の発生場所と比較した地図を作成し分析した。都市部の新大阪駅、郊外に位置する三国ヶ丘駅、人口密度の低い熊取駅での分布をそれぞれ調べ、問題点と解決策を提示した。また実際にAEDを必要とする状況の発生時、駅の利用者が瞬時にAEDを利用できるかを確かめる為、各駅において聞き込み調査を実施し、その駅に設置されたAEDの認知度を調査したところ、多くの人がその設置場所を把握していないことが分かった。調査を進める中、住宅街での心臓発作の発生件数の割合が高い一方、過疎地域ではAEDが駅周辺に集中しているという問題が浮上した。この問題に対し、近くの施設でAEDを共有すること、住宅街に点在している自動販売機にAEDを設置することを提案する。

26,「神於山における自然再生の取り組み」
   佐藤絵莉(清風南海高校)
(発表要旨)
 竹林の拡大繁茂による植生の悪化によって荒廃している神於山は現在、自然再生活動が行われています。そこで今回、私は神於山の植生・状況と自然再生の取り組みについて調査しました。神於山の植生は岸和田市のホームページを用いて調べ、自然再生活動については「神於山保全くらぶ」と「魚庭の森づくり協議会」でヒアリングを行いました。実際に神於山に実地調査をすると、至る所に竹が繁茂し、かつて神於山全体に分布していたシイ・カシ類の常緑広葉樹林や今あるスギ・コナラなどの樹林はこのままだと無くなるのではないかと感じました。それを止めるために様々な団体が活動をしていますが、一部団体のコロナによる活動休止のため、その団体の担当場所は放置気味になっていることも分かりました。私はこの状況を見て、団体同士で情報を共有して神於山の自然を守るべきだと思いました。

27,「安全なまちづくりを!犯罪のない街を作るには in 大阪」
   東野心優・戸川陽菜・亀井このみ(清風南海高校)
(発表要旨)
 私達は自分達の暮らす街大阪の治安が全国のほかの地域と比べ、非常に悪いという事実を目の当たりにし、安全な暮らしを得るために大阪市の犯罪状況について調べました。人の集まる繁華街などで犯罪が多いのではないかという仮説をもとに大阪府警の犯罪発生率の統計について調べ、実際に現場へ行き、犯罪に巻き込まれやすい場所の共通点を考察しました。また、大阪府警の方に調査中に出てきた様々な疑問についてヒアリングを行いました。調査の結果、予想通り繁華街周辺で犯罪件数が多いことが分かりました。しかし、原因はそれだけではなく薬物との距離が近いことや、低所得者層が多いことも原因の一つであることが分かりました。そのため割れ窓理論にもあるように、小さな犯罪も厳しく取り締まるなどの工夫をする必要があると考えます。また、私達市民もごみ拾いなどの小さなことから、犯罪の起こりにくい街づくりに協力していくべきだと思います。

28,「世田谷区玉川地域における生産緑地の変遷と今後の課題]
   大西治輝・小田優奈・小山泰正・金野明日美・桜井唯花・渋谷菜絵・野澤直矢(駒澤大学高等学校)
(発表要旨)
 本研究では、世田谷区の玉川地区における『生産緑地』に着目する。都市開発に伴う農地の減少に対し、緑地や農地を守る観点から、1974 年に生産緑地法が制定された。その後1992年に生産緑地と宅地化農地2つに分けられる法改正が行われた。自治体に生産緑地として指定を受けた場合、様々な優遇措置を受けることができたが、指定の効力は30年までのため、1992年に指定を受けた土地は2022年以降優遇措置が受けられなくなる。このため生産緑地の多くが宅地として市場に出ることが予想されている。これを本稿では『生産緑地の2022年問題』とする。本研究では、東京23区内で生産緑地が練馬区に次いで2番目に多い世田谷区を対象に、世田谷区で生産緑地が最も多く指定されていた1993年度の生産緑地において現在までの土地利用の変化を分類する。そして、今後優遇措置を受けられなくなった生産緑地の将来の変化について考察する。

29,「連続永久凍土の融解によるシベリア・アラスカ地域の生活への影響」
   早坂和香那・安藤七香(宮城県仙台西高等学校)
(発表要旨)
 シベリア・アラスカ地域にみられる連続永久凍土の範囲で生活する人々は、夏期に地表面が融解することによって得られる恵みで生活している。しかし、地球温暖化によって連続永久凍土の範囲が縮小することによって、その生活に大きな影響が出るのではないかと仮定し、具体的にどのような影響が出ているかを、文献調査により明らかにしたい。世界の平均気温は、地球温暖化による気温上昇によって1950年から2100年の間で最大4.8℃上昇すると言われている。それにより、永久凍土は2100年には20%から50%融解により減少するとされる。永久凍土にはメタンハイドレートや水銀など多くの有害物質が含まれ、それらが永久凍土の融解によって放出される。特に水銀は、水や動物、植物を通して人の体内へ入り蓄積され、発がん性や遺伝子障害を与える。また、メタンハイドレートから排出されるメタンは温室効果ガスでもあり、地球温暖化をさらに深刻化させると考えられる。

30,「立川の段丘崖」
   村井勇介・後藤英仁(都立立川高校)
(発表要旨)
 都立立川高校の周辺の段丘崖についてフィールドワークや標高地形図から調査を行った。本校周辺の段丘地形の様子を調べ地形の変化を探ることを目的とした。立川高校は立川段丘のへりに位置していて、すぐ下に青柳面があり、その下に現在の多摩川の氾濫原がある。本研究では、地理院地図を活用し、カラーパターンをを用いて立体地図を作成して調査した。段丘崖は自然の状態で保存されている箇所もあれば開発により崩されている箇所もあり、青柳面に注目すると面の西端が立川面との境と曖昧になっていたため、実際にフィールドワークで実地調査した。また青柳面と立川面の傾斜の違いや、青柳面の立川断層による地形のずれを調べ分析した。

31,「公共交通の観点からみたコンパクトシティ政策の比較~高松市・熊本市・北九州市を対象として~」
   佐藤崇一郎(芝浦工業大学柏高等学校)
(発表要旨)
 現在、日本各地でコンパクトシティ政策が行われている。しかし、世界の先進モデル都市として知られる富山市のLRTは赤字経営で中心市街地はシャッター街となっている。また、海外で導入されているLRTも赤字で、他の公共事業で赤字を補填しており、コンパクトシティに適当な公共交通機関は何か疑問に思った。
 本研究では、国土交通省のコンパクトプラスネットワークのモデル都市に指定された高松市、熊本市、北九州市を対象として各都市の具体的な政策と効果を調査し、今後のコンパクトシティ形成において公共交通の分野で何が必要かを考察する。その結果、各都市でコミュニティバスの導入やバス専用レーンの設置など、バスを中心としたまちづくりを行っており、公共交通の利用者数が増加するなど一定の成果を上げていることがわかった。したがって、財政への負担が大きく、現実的でないLRTよりもバス路線を充実させるべきだと考えた。

32,「東葉高速線と新京成線におけるコンビニエンスストアの立地特性―路線図に表す取り組み」
   加藤愛美華・源川千華(千葉県立船橋芝山高等学校)
(発表要旨)
 私たちはカフェの立地を表した路線図を見て興味を持ち、私たちがよく利用する4社のコンビニの立地について調べ、路線図に表した。まず、本校の生徒が通学で多く利用する東葉高速線と新京成線を対象とし、各コンビニのホームページ、Web地図などを活用するとともに店舗形態を把握するために現地調査も実施し、コンビニが各駅の駅内、駅外に何店舗立地しているかを調査した。次に、調査結果をコンビニごとに色を変え、立地状況を表にまとめた。それをもとに、両線のコンビニの立地状況を路線図にすることでわかりやすく表現するとともに、地理院地図の作図・ファイル読み込み機能を使い分布図も作成した。乗車人員や駅の機能に注目して分析した結果、両線ともに乗車人員が多い駅や乗換駅にコンビニが多く立地していることが明らかになり、コンビニによる立地の特徴も出現した。このことから、乗車人員や駅の役割がコンビニの立地に影響しているといえる。

33,「風景印からわかる習志野市の魅力」
   穂積佐奈(千葉県立船橋芝山高等学校)
(発表要旨)
 地理の授業で風景印の存在を知り、風景印に描かれているものと地域との関係性について調査した。風景印はその地域をイメージして制作されるため、風景印から地域を読み解くことができる。習志野市のすべての郵便局に風景印があり、風景印を入手した。風景印に描かれた図案を分析し、その地域や対象物の現地調査を実施して、郵便局の立地と描かれた景観との関係性などについて調査した。その結果、複数の風景印に同じものが描かれている場合でも表現方法が異なることや、対象物と郵便局との立地の関係などが明らかになった。すべての風景印にラムサール条約登録地である谷津干潟をイメージする図案が描かれ、市民が市をイメージして制作した「習志野かるた」にも谷津干潟が取り上げられていることから、谷津干潟は習志野市を象徴する景観の1つであると言える。風景印の図案の分析により、市全体や市内各地域における地域のイメージを分析することができた。

34,「埼玉県西部地域における鉄道と人口の関係性」
   溝端宏司・北川雄敏(埼玉県立浦和高等学校)
(発表要旨)
 埼玉県西部にある所沢市、狭山市、入間市、飯能市の4市における鉄道駅とその周辺の人口の関係について、都市の広がりの様子を明らかにすることを目的として分析した。GISを利用し駅から徒歩10分と20分の到達圏を作成し、国勢調査の人口等基本集計、国土数値情報の鉄道時系列データを利用して、範囲内の人口を2010年と2015年で比較した。参考として西武鉄道と4市の2005年から2020年の出来事も調べた。この結果、駅から徒歩10分、徒歩10分以上20分以下の範囲内の人口はともに減少したが徒歩10分以上20分以下の範囲内の人口の減少幅のほうが小さいことが分かった。要因としては比較的土地が広い場所を求める人が多いことが考えられる。また人口が増加している駅については駅前の再開発や優等列車の停車駅であるといった要因があることが分かった。

35,「埼玉県さいたま市における医療提供体制と今後の課題」
   髙崎陽葵(埼玉県立浦和高等学校)
(発表要旨)
 埼玉県は全国でも医療提供体制が脆弱であると指摘されているが、市町村レベルで見たときに地域によって医療提供体制の課題に違いはあるのか、さいたま市の区ごとに高齢者人口割合、10万人当たり病床数等のデータを用いて現状を調査し、現在そして今後の課題を考察した。結果としてさいたま市の中でも中央区や大宮区などでは医療提供体制が比較的充実している一方、岩槻区や見沼区などでは医療提供体制が充実しているとは言えず、さいたま市の中でも地域によって課題は異なることが分かった。今回特に注目した二次医療はふつう複数の市町村を組み合わせた、二次医療圏を基に成り立っているが、患者の入院前後の通院時の負担や救急搬送にかかる時間等を考慮すると、細かい地域レベルで見た時に医療提供体制に空白地帯が生まれがちな現状の地域区分では十分に充実した医療をより身近に全員に届けづらいという課題があると考えられる。

36,「埼玉県熊谷市における中学校区の現状と展望」
   秋元湧希(埼玉県立浦和高等学校)
(発表要旨)
 埼玉県熊谷市は現在人口および児童・生徒数が減少傾向にある。国土数値情報や各種統計と埼玉県・熊谷市の公表資料からGISを用い分析したところ、事前の想定通り校区内やその付近に鉄道駅付近にある学校で人口減少・過疎化の進行が遅く、鉄道駅から遠くなるほど進行している傾向がみられた。ただし例外もあり、最寄り駅の乗降客数と相関があることもわかった。このまま生徒数の減少が進行すると学校の統廃合が行われると考えられるが、校区地図からわかる通り、過疎化が進んでいる地域ほど校区が広くなる傾向にあるため統廃合で通うのが困難になる生徒も出てくる。そのために通学利便性の高い地域への転居が進み過疎化がする恐れもあり、そうした悪循環への対策として自転車やバス通学への補助、スクールバス路線の開設などを解決策として提言したい。

37,「千葉県松戸市における梨園の減少」
   山川 燈(専修大学松戸高等学校)
(発表要旨)
 東京から20km圏に位置する松戸市は、二十世紀梨発祥の地として知られており、下総台地上の果樹園で梨の栽培が盛んに行われている。1965年に観光梨園連合組合が成立して以来、東京近郊の立地を生かして多くの観光梨園が経営されてきたが、2011年から2021年にかけて観光梨園の約1割が閉園していることが文献調査によって分かった。また、地形図から土地利用分析を行うと1990年代から果樹園の減少が起きていることが分かった。本研究では、地図を利用した土地利用分析、地域住民や農家への聞き取り調査を行い、松戸市における梨園の減少の様子を明らかにし、その背景を考察した。

38,「霞堤から学ぶ流域治水」
   赤羽康太郎(東京都市大学塩尻高校)
(発表要旨)
 治水技術やダムの建設によって、私たちの災害への意識が下がりつつあるのではないか。そこで、令和元年の台風19号による千曲川の災害を振り返り、近年着目されつつある霞堤と流域治水について研究を行った。霞堤は、戦国時代から受け継がれてきた伝統的な治水方法である。度重なる災害や近年の都市化の影響を受けて、霞堤の変遷について奈良井川や千曲川で調査を実施した。加えて、霞堤の流域治水について、国の方針や住民がどのように感じているのかを千曲川河川事務所や千曲市役所で調査した。その結果、治水に対する住民の理解不足や、無関係に感じている人もいることが分かった。このことから、現状ではあまり行われていない国と住民との話し合いの場を多く設け、かつ幅広い年代の住民に参加を呼びかけることが大切である。一人ひとりが地域の特性を理解し、治水に対して国との共通認識を持つことが今後重要になると考えた。

39,「きれいな海から豊かな海へ-玉野市産ノリから考える瀬戸内海の環境問題-」
   土肥 豊・石合祥太・岡﨑裕矢・榧 玄成・豊福翔大・藤井優希・頼経怜旺(岡山県立玉野高等学校)
(発表要旨)
 岡山県玉野市は県下最大のノリの生産地である。玉野市産のノリは業務用として流通することが多く、玉野市の特産品として広く認知されていない現状がある。そこで、玉野市の特産品であるノリの認知度を高めるためにこれまでどのような取組が行われてきたのかを玉野市産業振興部農林水産課及び胸上漁業協同組合でヒアリングを行った。「浜の活力再生プラン」やノリ共同加工施設建設など、漁業者の所得向上に向けた取組が行われる中で、ノリの色落ちによる出荷額の低下など、瀬戸内海の水質環境の変化による問題があることがわかった。

40,「私達の町の日本遺産が存続の危機!?~日本遺産「津和野今昔」の現状とこれからの未来へ~」
   阪本孝太朗・松本凛生(島根県立津和野高等学校)
(発表要旨)
 私たちの学校のある津和野町に「津和野今昔〜百景図を歩く〜」という日本遺産がある。幕末の津和野藩の風景が描かれた絵がおよそ100枚あり、津和野とその周辺地域の昔の姿を知る貴重な資料として、観光に活用されようとしている。しかし昨年「津和野今昔」が日本遺産取り消しの危機があったとの話を聞いた。具体的に日本遺産取り消しが検討された理由を調べ、これまでの津和野の対応について考える。津和野周辺の人が日本遺産を知っているか、行ったことがあるかなどの意識調査を行うとともに、コロナウイルスまん延による影響で津和野の観光客がどう変化したのか、その中で日本遺産にどれだけ影響があったか調べてデータ化する。また、全国各地の高校生による日本遺産に関する活動実績を調べて、自分たちにできる課題解決の方法を探り、今後の私たちの行動について考察する。

41,「津波による被害から見る港湾整備の展望-茨城県神栖市,鹿島港の事例より-」
   石毛修斗(清真学園高校)
(発表要旨)
 平成23年に発生した東日本大震災によって、列島は甚大な被害を受けた。茨城県の南東部に位置する神栖市も例外ではない。しかし、当時の神栖市の津波浸水マップを見たところ、浸水の分布にある傾向があることが分かった。鹿島港のある同市北部は内陸部まで津波が到達していた一方、南部は砂浜への浸水にとどまっていた。津波の被害と港湾整備には何らかの関係があると推測し、調査を行うこととした。調査の結果、鹿島港内の公共埠頭付近で広範囲の浸水が認められ、特に鹿嶋市側の北公共埠頭付近では海岸線から1.5km地点まで津波が到達していた。北公共埠頭は一部を除いて岸壁が未整備である上に、掘込港という構造上埠頭に波が集中しやすく、浸水が広がった可能性がある。地震や津波の脅威が年々高まる中、港湾、特に掘込港湾については、鹿島港も含めて通常の海岸より津波による被害のリスクが高まることを念頭に置いた対策がなされる必要がある。